白妙太呂氏(しろたえのたろし)

文章を書いたり詩を書いたり歌を詠んだりの練習をしています。最近は日本から届く写真で短歌を詠んでいます。

白妙太呂氏(しろたえのたろし)

文章を書いたり詩を書いたり歌を詠んだりの練習をしています。最近は日本から届く写真で短歌を詠んでいます。

最近の記事

氷の女

 去年の7月に姉がドイツに遊びに来た。二つ歳上の姉で僕の唯一の兄弟だ。ベルリンをスタート地点に南ドイツとザルツブルクを案内した。確か姉はその後一人でウィーンとプラハに行ったと思う。  もともと仲のいいといえる姉弟ではなかったから、旅の途中で口論になった。ミュンヘンからザルツブルクに向かう電車の中だ。あまりにも周りが見えていなく、無自覚に人の迷惑になっている姉を注意したところから諍いは始まったが、最終的に「こんな姉を持って情けない」みたいなことをいってしまった。姉はその後ずっ

    • すり減る感じ

      僕は大人になってから服を滅多に買わないので捨てることもない。 だから多分捨てる感覚に慣れてなかったのだと思う。 体系がだいぶ変わったし直すのにも限界があるから、2017年以前に作った服を数着 ・上着2着 ・パンツ2本 ・婦人服1着 をその他既製服と一緒に捨てた。 ドイツには衣類のリサイクルボックスがありそこに投函するのだけど、最近このリサイクルボックスがあるべき場所(ビンのボックスと紙のボックスの横らへん)から見なくなった。 僕は1時間くらい歩き回って探したけど見つけられ

      • 母の告白と36歳の自分

         夏期休暇で一時帰国中に両親と10日間東北に旅行をした。弘前ねぷた祭り、青森ねぶた祭り、函館いか祭り、盛岡さんさ祭り、仙台七夕まつりを見て回るお祭り旅行だ。そこに時間が許す限り石川啄木、宮沢賢治、柳田國男、松尾芭蕉などのゆかりの地を巡った。  旅行の後半の仙台で私は父の行動に心底うんざりしていた。父は昔からいらんことをする人だなあと思っていた。今回の旅行中にも例えばお祭りの太鼓や笛の音頭に合わせてメタボの腹で腹太鼓をポンポコ鳴らすような、見ていて恥ずかしくなる行動が目立った

        • 夢を思い出す作業と夢の内容と夢の意味

          唯一具体的に連続的に夢を思い出すことができるのは、夢から覚めた瞬間であり、この時に目を開けてしまうと砂が風で舞い散るように夢の世界が瞬く間に崩壊していく。とはいっても目を瞑っていても徐々に崩壊していくから思い出すのは時間との闘いである。 そして記憶に残る部分があったとしても、そのまま放っておくと忘れていくから、意識の中で登場人物の顔を焼き付け、会話内容や登場人物の容姿や空間、出来事などを繰り返し反復し、徐々に"過去”を思い出していかなければならない。 "過去”を思い出すと

          ドイツにおける日本のプレゼンスの変遷(2007〜現在)

           確かにあった。僕が日本人だというと目をキラキラさせて「いいなー!」といわれた時代が。  2007年大学2回生の夏休みにヨーロッパをぶらぶら放浪した。そしてその多くをドイツの街で滞在した。これが僕の初めてのドイツだった(19歳)。 当時iphoneがギリで登場してたかしてなかったくらいの時代で、僕は日本では最後のガラケーを使っていた。  今のように海外で使える安価なSIMカードの時代ではなく、電話は国際テレフォンカードというテレフォンカードをKIOSKなどで買って、公衆電話

          ドイツにおける日本のプレゼンスの変遷(2007〜現在)

          エジプト旅行②

          ホテルのスタッフ"May I help you Sir?" 僕「明日アレクサンドリアに行くのでドライバーを手配してもらえないだろうか」  運賃が$30になるけどいいかと聞かれた。エル・アラメインからアレクサンドリアのホテルまで108kmで車で約1時間半。少し割高だと思ったけどこれはUberではないし、電車に乗ることを諦めて他に選択肢がない僕はその金額で了承した。こうしてチェックアウトの時間に合わせて迎えが来てくれることになった。少しいいホテルはフロントのスタッフだけでなく

          エジプト旅行①

           10代の頃はよく一人旅をしていたけど、気がつけば全く一人で遠出をするということがない人生になっていた。いつからか旅行の醍醐味は大切な人と思い出を共有して、数年後や数十年後にあの時あんなことがあったとかこんなものを食べたとか、旅を振り返って笑いあったり思い出話に花を咲かせ二人の軌跡を確認し合ってより絆を深める、そんなもののように感じていた。だからどうしても一人だと物足りないというか、行く意味がないように思っていた。  頻繁に1人旅をしてSNSに楽しそうなリア充写真をあげてい

          仕立て屋という職業と洋服について思うこと

          ビスポークスーツ(日本ではフルオーダースーツと呼ばれている)のいいところの一つは、資産価値がないところだと思う。 車や時計や貴金属などその他多くのものは、手放す時に価値が同じか上がっていることがある。なので投資目的で購入する人がいる。 それに対してビスポークスーツは一着€3000以上するが、顧客の体型や身体のクセに合わせて一着ずつ作るという性質上、当然他の人には合わないので転売のしようがないし、古着屋で売っても€3くらいにしかならない。 よって資産になるからではなく、純粋にそ

          仕立て屋という職業と洋服について思うこと

          ネコとイヌと僕

          年末年始家族旅行に出掛けている知人のネコ2匹の面倒を見ている。 ネコトイレを掃除して、ご飯と水をあげて、遊んであげるのだ。たまにおやつもあげる。 僕は自作のおもちゃを持参してそれでネコチーたちと遊ぶ訳だけど、それが気に入ってネコチーたちは嬉しそうだ。 遊びながらふと昔飼っていたイヌのことを思い出した。 僕の飼っていたイヌにもお気に入りのおもちゃがあって肌身離さずそれを持っていた。寝る時も犬小屋にそれを持ち込んで一緒に寝ていた。 ネコチーもイヌも、大して高価な訳では無い遊べば遊

          人参コーヒー

          カップに入った人参コーヒーは先日のイースター休暇でバリ島のコーヒープランテーションにいった際に購入したコーヒーの一つだ。 ドライバーのワヤンはこの人参コーヒーが疲労回復に効果があり元気の源で毎日飲んでいるとをいっていた。 そういえば世界有数の海洋国家で17000を超える島々から構成されるインドネシアだが、クラシックなバリ島出身の名前は4つでそのうちの一つがワヤンだといっていた。名前でバリ島出身かそうでないかが分かるのだ。 90%近くがイスラム教徒のインドネシアでバリ島は敬虔な

          ohne Titel

          恋愛は一人ではできない、一人の努力ではなし得ないところがおもしろいところであり、難しいところである。 人生がゲームに例えられ楽しんだ者勝ちだというのなら、恋愛はプレーヤーが二人になって初めて開かれるイベントのようなものだろうか。 当然二人でプレーするのだからミッションはより難解で敵は強くなる。それをチームプレーで乗り越えるのだ。 今日彼女と電話をして彼女の発言から我々の関係がいい状態でないことに私は気がついた。なぜ私はそんなに大事なことをそれまで気が付かなかったのだろうか。

          11月の君へ

           もうすっかり寒くなってしまった。窓を開けると冷たい雨がしとしとと降る夜は月も星も見えないで家の前を走るトラムの音が建物の壁に響いて聞こえる。  味噌汁を温めて晩ご飯の支度をしていると、君のいない世界がふと頭をよぎるんだ。もし君がいてくれなかったら、僕の世界は随分ともの寂しいだろう。今までは一人で生きてきたのにそれが想像できない。僕は今までどうやって生きてきたというのだろう。当たり前のように君がいてくれてたから余計に怖いんだ、君なしの世界が。  僕は特別ではないから何者でもな

          そっとしておいてほしいんだな、多分

           付き合い始めた頃に楽しい時や嬉しい時だけじゃなく、悲しい時や辛い時こそ側にいて寄り添える関係でいたいと君にいった。その考え方はずっと続くだろう。  今君は自己嫌悪に陥って自分にうんざりしている時かもしれない。僕はそんな時に何て声をかけたらいいのだろうか。 「何も知らないくせに」  君にそういわれ僕は何にも知らないと自覚する。僕は二人で会っている時の君、電話で話している時の君、夜机に灯りを点けて勉強する君を知っている。勉強も仕事も頑張ってるんだ。でも確かに学校で学生生活を送

          そっとしておいてほしいんだな、多分

          週末の 若草萌ゆる 散歩道

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          春立つは 自律神経乱れれど 恋しい君に甘えるチャンス 普段なら 決してあーんはしてくれぬ このツンデレに 落ちぬ者なし

          春立つは 自律神経乱れれど 恋しい君に甘えるチャンス 普段なら 決してあーんはしてくれぬ このツンデレに 落ちぬ者なし

          洋服と未来と仕事

           おそらく少し先の近未来というのは、例えばアニメ『PSYCHO-PASS』のように、洋服の着替えをホログラムで簡単に行えるのだと思う。視覚情報としての洋服というデータがあるだけで実際の洋服を装う必要がない。  当然服を着ているように見えても実際素っ裸で外に出られないので、ホログラムが反映されるベースとなるものを身に着けることになる。これはおそらくウェットスーツのような材質や形状で、それを着ていればその上にホログラムを映し出されるのだ。  という現実世界がデジタル化すること