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#210【日記】単行本未収録の手塚治虫作品を読む方法……国立国会図書館の遠隔複写サービス
今日もお読みくださってありがとうございます!
甲子園優勝!京都国際高校
甲子園では京都国際高校が国際学校として初めて優勝したそうですね!
京都国際高校は1947年に京都朝鮮中として創設、1963年に高等部開設と、長い歴史があり、日本の高等学校の認可を得たのは比較的最近の2003年とのことでした。日本の一条校であると同時に韓国でも正規学校として認可されているため、卒業すると二つの国の卒業資格を得られるのだそうです。
国際学校という仕組みを不勉強にして知りませんでしたが、そういう学校があるんですね。
京都の学校としても68年ぶりの優勝だとか。すごい。
しかし、これに関して、差別投稿や中傷が相次いでいることは、恥ずべきこととしか言いようがないとくらたは思う。
そもそも参加資格ない人が出てるはずはなく、外野から文句言われる筋合いはないわけだし、そんなことで選手や関係者を傷つけるなんて、語るに落ちますよ。
念の為参加資格のソース当たってみた。
甲子園の参加資格がこちら ↓
第2条 参加学校の資格は、本連盟所属の都道府県高等学校野球連盟に加盟した学校に限る。
京都府の高等学校野球連盟の加盟校の一覧に当然京都国際高校も掲載されていますから、この時点でこの話は終わりでいいんですけど、一応もう少し遡ります。
京都府高等学校野球連盟には加盟資格が明記されていなかったので、代わりに掲載されていた「日本学生野球憲章」はこちら ↓
イ 高等学校野球連盟に加盟できる学校は、原則として、学校教育法で定める高等学校とし、 日本高等学校野球連盟は、日本学生野球協会の承認を得て、高等学校野球連盟に加盟 する資格および基準を定める。
まあ京都国際高校は一条校(=学校教育法で定める高等学校)なんだからここで終わりでもいいんだけどもう少し遡ると、日本高等学校野球連盟の加盟資格がこちら ↓
第5条(加盟団体)
この法人は、学校教育法(昭和22年3月31日法律第26号)に規定する次の学校によって組織せられた各都道府県高等学校野球連盟をこの法人の加盟団体とする。
(1)学校教育法第6章に規定された高等学校
(2)学校教育法第7章に規定された中等教育学校
(3)学校教育法第8章に規定された特別支援学校
(4)学校教育法第10章に規定された高等専門学校
(5)学校教育法第12章第134条に定められた各種学校のうち、日本国内に居住する外国人を専ら対象とする学校
……なんだよー!
そもそも一条校でなくたって、各種学校も各都道府県野球連盟の加盟団体の対象なんじゃないか!
日本で暮らす、日本以外のルーツを持つ学生の参加は最初から想定されているわけです。
そんなん当たり前だよ。
なんの文句のつけようもない。
くどくどと遡って確認しましたが、どこからどう見ても、三千世界に隠れなき参加資格保持者が優勝したんだもの、誰からもなんにも文句言われる筋合いはないよ。
わかってたことだけど。
京都府知事の迅速な対応が素晴らしいですね。
高校野球を今後も健康的に盛り上げていくためにも、高野連もぜひがんばってほしい。
日本以外のルーツの学校が、日本の高校野球の頂点に立ったという構造で言えば、『チア⭐︎ダン』と同じじゃないか。
大会側の参加資格に制限がないならば、日本の女子高生が全米制覇するのはよくて、韓国ルーツの学校の男子校生が甲子園優勝しちゃいけないなんてダブスタはないでしょう。
幻の手塚作品『ながい窖(あな)』
さて、先日Xで、手塚治虫さんの『ながい窖(あな)』という作品のことを知りました(このツイートでは「あなぐら」とルビが降られていますが、原著にあたったところ「あな」でした)。
手塚治虫の幻の短編マンガ「ながい窖(あなぐら)」日本軍による朝鮮人の強制連行とはなにか、戦後に改姓して社会で生きるとはどんなことだったのか、その子孫に「国に帰れ」などというヘイトスピーチがいかに理不尽かがわかる作品です。『空気の底』収録、再発に収録されず。 https://t.co/5gxcGiJxyT
— 藤井セイラ (@cobta) August 10, 2024
このツイートのリンクからも読めるようですが、仮にも図書館に籍を置いたことがあり、さらに文化庁の著作権研修を修了した身としては、それを読むのはうまくない……。
※この研修の修了者は司書資格がなくても図書館のカウンタ―で複写サービスを提供できます(司書資格のある人がいない場合、図書館では資料の複写ができないと図書館法で定められています。複写サービスを提供する図書館では、必ず館内には司書資格のある人がいます。念のため!!)。
「国立国会図書館の遠隔複写サービス」を使ってみた
ということで、くらたは図書館で働いていたときから、一度利用してみたかった「国立国会図書館の遠隔複写サービス」をお願いすることにしました。
結論、これは大変利用しやすいサービスだと思います。
遠方の館に資料がある場合でも取り寄せて読むことができます。
なお、インターネットでのこのサービスの利用目的は調査研究目的に限ります。
くらたも調査研究目的で利用して、果たしてここに記事として書いておりますです、はい。
ただ、当然有料ですので、分量が多くなるとかかる費用がかさんできます。
今回27枚(うちカラー1枚)で、送料込みで1,500円弱でした。
(なお、『空気の底(下)』は古本屋では1,500円くらいで手に入る、というネット記事も見かけましたが、今見たところAmazonで6,600円でした。ご参考まで)
利用全体の流れは、利用者登録 → NDLサーチで検索 → 申し込み → 受け取り → 支払い(金融機関 or コンビニ)です。
サービス利用の方法は下記からご確認ください。
作品について
作品は、上記ツイートにあったとおり、日本軍による朝鮮人の強制連行がいかに理不尽なものであったか、戦中から戦後にかけて当事者がどのような状況に置かれていたのかを直球で描いたものです。
こういう作品を見ると、手塚治虫の作家性を改めて感じます。
この作品の初出はツイートのとおり、雑誌『サンデー毎日』1970年11月6日増刊号。
調べたところ、1972年サンミリオンコミックス『空気の底(下)』に収録されていたものの、現在収録されている単行本はないとのことでした。
手塚治虫作品はそもそも社会に対する問題提起を多く含んでいるものなのに、この作品が再録されないのはなぜだろう……と思ったら、すでに考察されている記事がありました。
手塚の短篇の中でも、純粋にマンガとしての完成度はそれほど高いものではあるまい。
但し、そのメッセージ性は現代の我々にも強いものがある。自らの出自に誇りを持てない在日朝鮮人、出自を隠すために同じ朝鮮人を差別する弱さ。その背景にある日本人からの陋劣な蔑視。さらに日本の戦争責任さえも問いかける。
反響を得てたびたび更新されブラッシュアップされたと思しき上記記事は大変読み手のあるものでした。
ご興味あればぜひご高覧ください。
なお、くらたは調子に乗ってまた別の資料(『エリノア』谷口ひとみ)も複写依頼中です。そちらはまた機会があれば書きたいと思います。