映画「あやしい彼女」鑑賞記録
73歳の毒舌おばあちゃんが「あやしい」写真館に吸い寄せられ、20歳の姿に若返る。主人公・瀬山カツは、若返りの経験によって初めて自分らしい人生を「選択」することになります。
あらすじ
カツは、若くして夫を失ってから、一度は余命宣告を受けた愛娘を一人で育ててきました。家庭のために、そして娘のために必死に働きました。そんなカツは自分を犠牲にして生きることを当たり前に思っていました。自分を犠牲にして娘の成長を支えてきたことは誇りでしたが、自分らしい人生を「選択」することができなかったことに対し、思うところがあったようです。
娘にとって、カツは「苦労自慢」ばかりする母親でした。「あんたがいたから〜できなかった」という口癖に辟易した娘にカツは「もはや、お母さんがいなくても家庭は回る」と告げられてしまいます。
よりによって、手塩にかけて育てた自慢の娘からそんなことを言われるなんて…。カツは衝動的に家を飛び出します。そこで、たまたま見つけた怪しげな写真館に入ります(憧れのオードリー・ヘップバーンの写真に誘われて)。店を出ると、なんと若返った肉体を手に入れていたのです。「ローマの休日」のアン王女のごとく、名前も改めました(大鳥節子)。自分の思うがままに人生を謳歌することを「選択」したのです。
二度目の青春を謳歌してやる! と歌って踊って恋をして、オードリー・ヘップバーンのような衣裳に身を包んでヒロインを演じる、多部未華子のキュートなコメディエンヌぶりが尋常ではありません!
他人中心から自分中心へ
当たり前のことですが、私たちが働くのは、誰かの役に立つことをするためです。カツも娘を大事に思っていたからこそ一生懸命に働きました。でも、働くことだけが生きることではないということに、カツは気づいたでしょう。「自分らしく」生きるということを知ったはずです。他人中心の仕事を時には忘れ、何か楽しいことや面白いことに自らのめり込んでいくこと。突然の若返りによって、カツは他人中心の人生を手離して「自分らしく生きる」自分中心の「選択」を初めてできたのではないでしょうか。そして、アン王女のごとく、人生の主人公としてデビューすることができたのではないでしょうか。
多部未華子さんの美声に注目!
少し視点は変わりますが、劇中において、20歳のカツ(大鳥節子)を演じた多部未華子さんの澄んだ歌声には大拍手を送りたいです。大鳥節子は訳あって歌手としてバンドにスカウトされるのですが、十八番はなんと昭和歌謡(中身はカツさんなので自然ですが)。「真っ赤な太陽」「見上げてごらん夜の星を」「悲しくてやりきれない」といったいった名曲をバンド演奏にのせて明るく歌います。アレンジが素晴らしいということでもありますが、やはり歌声は見事に透き通っています。多部未華子さんの出演する作品には、今後も注目していきたいと思います。