【アプリ開発日記6週目】医療が民主化する時代
1,プレゼン終了しました!が……
前回までと異なり、今回から再びNGワード連発となるので、内容も非常に抽象的になることご容赦ください。
もちろん私個人が勝手に作っているものは、少なくとも組織から援助を受けていないなどのものは公開可能です。なのでここで書きながら振り返ったり、あまりにNGワードが多くて何も話せない回はいつぞやの作品のメイキングを載せられればと思います。
なぜ前置きが長いかと言うと、肝心のプレゼンの内容がさっそく触れられないからです。いきなりですか。
リアルタイム音声会話についても発表しようかなと思っていたのですが、私がプレゼンの際に決めていることが1つあります。
3つ以上になると、聞いている人の頭にどれかは残らないんですよね。1つ1つ伝えたいことなのに、伝わらなかったのでは本末転倒です。
ましてや覚えてもらえない残りの2つの時間さえも短くなってしまうのではもったいないどころではありません。
なので、3週間丹精込めてきたリアルタイム会話は3番目ということで、残念ながら30秒のデモで終了しました。
それを差し置きお話した2つというのは、1つ目が【アプリ開発日記1週目】でお話したレケンビ管理アプリ。こちらは実際に現場の医師にも使っていただけるようになり、来週~再来週には専用のタッチスクリーンも医局に設置してくださるそうです。
もう1つが、臨床ではなく「研究」の側面で開発を進めているシステム。
こちらも実際にお話出来るかは分かりませんが、臨床サイド「レケンビ管理アプリ」の対となる、研究サイドの矛になります。
この2つの矛をもって「医療従事者」「研究者」「患者」全員が楽になる循環を作る、これが現段階での構想です。
2,医療現場へのAI導入事例
医療現場における導入事例も大きく2パターンあります。「事務系」と「臨床系」です。
臨床系とはインフルエンザ検査のnodocaや問診アプリUbie、内視鏡などが既に活躍していますね。nodocaは世界規模のビジコンで優勝、内視鏡も日本発の技術であることもあり、特に国内では話題になっています。
他にも河野健一先生の脳血管内手術、株式会社ALANによる睡眠判定、心電図解析に特化したカルディオインテリジェンス、瀧研究室の脳年齢診断CogSmart、メドメイン社による病理など、従来の解析から生成AIに至るまで、全国、世界でその輪が広がっています。
事務系は、AIを使っている方はイメージが付きやすいでしょう。勝手にカルテを書いてくれる、という類のものです。
……と言うは易し、行うは難し。
医療現場の情報というのはプライベートの塊のようなものです。セキュリティが非常に高い部類の1つでしょう。当然ながら、クラウド保存ではなく病院内のローカルサーバーで完結しています。
その情報をOpenAIなどに送るのはいかがなものか。これが最大の障壁となっていたのですが、プレゼンの前日にお会いしたある起業家の方がこう話されたのです。
「やっている大学病院がありますよ。すでに2-3万人の患者さんから同意をもらって、生成AIも活用しています。ローカルのモデル(llamaなど)ではなく、ChatGPTです」
と。
私は呆気にとられました。というのも、一時期「患者さんから同意をもらってカルテをリアルタイム記録してもらえば対話や身体診察に集中できる。のみならずそれを患者さん自身も持ち歩けるようにすれば他の病院でも医師確認済みの文書として活用できるようになるし、お互いいいのでは」という回りくどいことを考えていたためです。
もちろん、それが実現すれば新たな病院にかかった時「お薬手帳はわかったけど…その先生はなぜこの薬を出したんだ?」などという現場あるあるは解消されますし、一患者でもある私は「先生の言葉をいつでも思い出せるようにしたい」と考えていた、それが現実になるのですが、初手にしては重すぎる気もします。
3,医療が民主化する時代
もちろんそれでも情報を大切に扱わなければいけないのは変わらず、むしろ今まで以上にその意識を持つべき時代に突入しているわけですが、一方でネットで良かれ悪かれ誰でも最新の情報が手に入り、ジョー・ザイナーのように「一個人がキットを通販で購入し、自らの遺伝子を編集できる」という、臨床的にも研究的にも医療の民主化が続いている現在。
おそらくその流れは今後も変わらないでしょうし、私も民主化はぜひ進めていきたいと考えています。自分の体がどうなっているか気になる、それだけなのですが。
いずれにせよ、当初は生成AIのような不確実なものを現場に持ち込むなんでとんでもない、という風潮でしたが、実際はまだ一部ですが徐々に導入が進んでいるのも事実。
2年前は想像もしていなかった時代に、今本当になってきているんですね。
おわりに
具体的な内容に触れられないというのは思った以上に厳しいこともあります。
もっと派手な開発話でもしたいのですが、実際は8割型エラーの修正だったりしますし、そもそも平日はその時間すら取れなかったりします。
それでも、これまでで臨床現場に医師公認でアプリが導入されたことはなかった。それが実現したのは、ゆっくりと、でも微弱ながら進捗でしょうか。
今回は様々なAIの医療現場への導入事例という差し障りの内容になりましたが、いつかこの連載自体が導入事例となるように、そして他の開発者が参考になるようなものに……そうするために。
パブリック日記帳、続きます。