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足場設置の届けに必要な書類は?提出前に流れをチェック 2023/8/9

多くのニュースやメディアで「コンプライアンス」という言葉を耳にします。日本語に訳すと「法令遵守」と言う言葉になりますが、ただ法律を守ることだけでなく、社会的良識を持った企業行動を伴うことが重要です。

建築業界でも例外ではありません。建築業界では、リスクの高い作業が伴うため、災害防止の取り組みにおいては「コンプライアンス」は重要な取り組みと言えるでしょう。

災害防止に取り組むためには、法律や規則を守る必要があります。なぜなら法律や規則で災害を防止するためのルールが決められているからです。

ルールを守った状態で災害が発生した場合、新たなルールづくりに繋がりますが、ルールを守らない状態で災害が発生した場合は、重い行政処分を受ける可能性があります。

今回は、大規模な足場工事を行う場合に必要となる法的な届け出について解説します。届け出をしないで工事を行うと「コンプライアンス違反」となりますので、しっかり理解しましょう。


1.足場設置の届けとは

建築工事に関する届けについては、労働安全衛生法の第88条第1項から第3項で定められており、具体的な内容については労働安全衛生規則の第85条・第86条・第89条・第90条で定義されています。

足場設置の届け出については、第85条・第86条で定めている別表第7の12に該当するものが対象となります。

別表第7の12 

では「足場(つり足場、張出し足場以外の足場にあっては、高さが10メートル以上の構造のものに限る。)」となっており、つり足場と張出し足場以外の足場で10メートル以上になる場合は届け出が必要です。

ただし、足場の組立てから解体までの期間が60日未満のものは対象外となっているため、届け出は必要ありません。届け出先は、工事を行う場所を所轄している労働基準監督署になります。届け出は、作業を開始する日の30日前までに提出しなければなりません。


2.届け出の必要書類

届け出に必要な書類は以下の通りです。

2-1.必要書類一覧

■様式第20号(機械等設置届)
届け出の表紙となる書類です。書式が決まっており、以前は労働基準監督署に原紙が置いてありましたが、現在は厚生労働省のホームページから原紙がダウンロードできます。

■位置図
工事を行う場所がわかる地図を用意します。工事の位置を示す場合、市町村レベルの広域な地図と、敷地内のどの位置で作業をするかという詳細な地図を用意しておくとわかりやすいでしょう。

■工程表
計画した工事の工程表を用意します。工程表は、届け出の対象となる作業がいつから行うことになっているのか確認します。届け出を提出した日が、対象となる作業の30日前であるかを確認しましょう。また、足場の組立てから解体までの期間が60日以上であるかも確認します。

■平面図
平面図は、建築物と足場の関係がわかる図面を用意しましょう。平面図では主に次の内容を確認します。
・足場の幅
・床材との隙間
・床材と建地の隙間

平面図で、足場が40センチメートル以上の幅になっているか、床材の隙間が3センチメートル以下なっているか、床材と建地の隙間が12センチメートル未満になっているかを確認しましょう。

■立面図
立面図は、足場の構造についてわかる図面を用意しましょう。立面図では主に次の内容を確認します。
・足場の高さ
・手摺や中さんの位置
・幅木の高さ

立面図では、足場の高さが10メートル以上または、31メートルを超えていないか確認します。また、手摺や中さんの設置位置は適正か、幅木の高さは15センチメートル以上であるか確認しましょう。

■詳細図
計画した足場が基準を満たしているか、平面図や立面図だけではわかり難い場合は、詳細図を作成します。詳細図を含めて、計画した足場が基準通りであるということがわかるようにしましょう。

■足場部材等明細書
計画した足場を組むために使用する部材の明細書を用意します。足場部材等明細書については、各労働基準監督署のホームページで、機械等設置届様式第20号と一緒に届け出用の原紙を提供している場合がありますので、ダウンロードして使用しましょう。

明細書として必要な項目が記載されているので、該当する足場部材の項目について記入します。足場部材等明細書では、どのような種類の足場を組むのか、部材の主要寸法、最大積載荷重について記入します。

最後に足場の組立て等作業主任者の記入欄もあるので、届け出を提出する前に、足場の組立て等作業主任者を選任しましょう。

■構造計算書
計画した足場の構造計算書を用意します。構造計算書は、足場設置の届け出の中でも重要な書類です。構造計算書によって、支柱等の応力計算を行い最大使用荷重が足場の許容範囲内であることはもちろん、構造計算に使用した部材の寸法や取り付けピッチの寸法等が、図面と一致しているか確認します。

計算式を間違えたり、計算に使用した数字が図面と違っていたりしている場合、届け出を受理してもらえない可能性があるので注意しましょう。構造計算書については、強度計算ができる専門知識を持った人に依頼する以外に、専用の構造計算ソフトやExcelを利用したものがあるので活用してみてはいかがでしょうか。

2-2.ダウンロードの仕方

書類のダウンロードの仕方としては、
厚生労働省労働安全衛生規則関係様式のホームページ 

から行えます。足場設置届け出に必要な「機械等設置・移転・変更届 様式第20号」のファイルをクリックすると様式第20号が表示されますので、ダウンロードをクリックします。

ダウンロードするファイルはMicrosoft Word形式です。行政が提供する書類の多くが、Microsoft Word形式ですが、各都道府県の労働基準監督署では、Microsoft Excel形式のファイルを提供している場合があります。

Microsoft Wordによる書類作成が苦手な人は、Microsoft Excel形式のファイルを利用すると良いでしょう。

3.届け出の流れ

必要な書類が揃ったら、届け出を行います。提出先は、労働安全衛生法第88条で労働基準監督署長とあり、労働安全衛生規則第86条では所轄労働基準監督署長となっています。

しかし直接所轄の労働基準監督署長に提出するのではなく、各労働基準監督署に届け出窓口がありますので、そちらに提出しましょう。

届け出を提出する時は、書類を2部用意してください。1部は労働基準監督署に提出し、1部は届け出の控えとして保管します。届け出の際に、書類の内容を労働基準監督署の担当者が確認し、提出書類や内容に大きな不備が無ければ受領してもらえるでしょう。

内容について不明な点があった場合、その場で質問されることがありますので、労働基準監督署に届け出に行く時は、足場作業主任者などの資格を持っている人が行くと良いでしょう。質問された内容について、回答できなかったり、説明できなかったりした場合は、届け出を受理してもらえない可能性があります。

また、足場の届け出を確認できる担当者が不在の時もあるので、事前連絡をして届け出日時のアポイントメントを取っておきましょう。

届け出は、単に書類を提出するだけではありません。書類を受理した担当者は、届け出の内容について審査を行います。計画や内容に不備が見つかった場合は、必要な勧告または要請が行われます。

場合によっては、工事が計画通り開始できないこともありますので、届け出前に内容に不備が無いか確認しておきましょう。

4.電子申請の方法

近年、行政業務のデジタル化が進み、足場設置届等の各種届け出を電子申請できるようになりました。電子申請を利用する準備として、アカウントの取得やアプリケーションのインストールなどが必要です。

電子申請であっても、用意する届け出書類に変わりはありません。足場設置届を提出する場合には不要ですが、各種電子申請サービスを利用する場合は、法人で電子証明書を取得しておくと便利です。

5.まとめ

今回は足場設置の届け出について解説しました。届け出は書類を提出して終わりではないことを理解してください。

届け出の期日が作業を開始する30日前となっているのは、届け出を受理してから、労働基準監督署の担当者が内容を審査して、不備があれば30日の間で是正するための期間であることを覚えておいてください。

電子申請によって業務の効率化は図れますが、届け出の経験が少ないうちは直接所轄の労働基準監督署へ提出に行って、労働基準監督署の担当者がどのような確認を行うのか、知っておくと良いでしょう。


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