胸水の鑑別のためのデータは様々ありますが、胸水中のアミラーゼ(AMY)ってあまり聞きませんよね? 胸水AMY値は膵疾患、食道破裂による胸水で著明に上昇すると言われていますが、これらの疾患は稀であり、胸水AMYが高値を示す場合、癌性胸水を疑う必要があると言われています。 私はBMC pulmonary medicineにADA高値の症例について検討した論文を掲載しましたが、その中で胸水AMYの検討も行っています。 胸水AMY≥75 U/Lは悪性胸水の診断に対し、感度49.0
先日、「呼吸器内科医」というブログで有名な倉原先生に加湿器のメンテナンスについてのコメントをYahoo!ニュースで取り上げていただきました! とんでもなく話題になっていて驚きました。さすが倉原先生です。 という事で、便乗して私もnoteに備忘録ついでに書かせていただきましたでのご堪能ください。 ------------------- コロナ渦になってから加湿器の販売台数が増えた影響で加湿器肺が増えています。(Respir Investig. 2021 Sep;59(5)
近年、気管支鏡検査後の肺炎の様相が変わったように思います。今までは閉塞性肺炎や一般的な肺葉性肺炎が多かったのですが、腫瘍内感染(肺化膿症)が多く見られました。 他の施設の先生に聞いてもやはり肺化膿症が散見するとの事でしたので調べる事にしました。 気管支鏡検査で診断された327例の肺癌症例を集めました。そのうち、20例(6.1%)で肺炎合併があって、12例(3.7%)が肺化膿症でした。 過去の報告では気管支鏡検査後の肺炎は0.2-5.6%で起こると言われており、肺化膿症は0.
喀痰グラム染色は肺感染症の診断にかかせない重要な検査です。 一般的に貪食像があると原因菌であると言われますが、実はエビデンスが一切ありません。 そう、調べたんですが、なかったんです! これは調べるしかないと当時の上司と共に調査しました。 163例の喀痰検査を行った症例を対象に、前向きに貪食像を調べました。 163例のうち、93例が呼吸器感染症と診断し、70例が慢性気道疾患などで喀痰を採取しましたが感染症を起こしていない症例でした。 貪食像は100個の白血球を観察し、貪食
胸水中のADAは結核性胸膜炎の診断に有用であり、ADA≧40U/Lがカットオフ値として広く用いられています。 そんな中、ADA≧40U/Lを示すIgG4関連疾患による胸水の症例を経験しました。 初診時は胸水ADA≧40U/Lにより結核を疑い抗結核治療を行いました。しかし改善を認めず胸膜生検を行う事でIgG4関連疾患による胸水と診断しました。 過去の報告でもIgG4関連疾患による胸水はADAが高いという症例報告が複数あり、当症例を含めた22例と、当院で診断した40例の結核性胸
呼吸器疾患の治療が終っても日常生活動作(ADL)が回復せず退院できない患者さんは少なくありません。日本の医療制度では急性期病院で長期リハビリする事は難しく、療養型病院に転院となる事が多いです。 そんな折、私が働いている病院に地域包括病棟ができました。この病棟では家に帰るために長くリハビリができるシステムになっています。(注:現在は違う病棟になっていますが) そこで治療終了後もADLが回復しない患者さん(SPPB≤9)24例を対象に2週間の追加リハビリを行い、その前後でADLが
2019年から新型コロナ感染症の影響でライフスタイルが大きく変わりました。その中で2020年末から2021年初旬にかけて加湿器肺が多くなった気がしました。 じゃあという事で例年の傾向を調べてみました。 過去の過敏性肺炎と診断された症例を収集したところ、2020年までの10年間で、加湿器肺は6例しかいませんでしたが、2021年1-3月の3か月だけで4例の診断に至りました。 しかもこれとは別に、コロナの影響で気管支鏡検査ができず、診断基準を満たしていなかった症例が3例もありま
日常生活動作(ADL)と骨格筋量は関与があり、骨格筋量はTh12レベルの脊柱起立筋の面積(ESMCSA)で評価できると言われています。 脊柱起立筋の面積はSYNAPSE VINCENTなどの3D画像解析システムを使用します。が、これが面倒くさい。 ソフトウェアが入っているPCでしか評価できませんし、測定するのに時間がかかります。(私は1例3-5分くらい) そこで筋肉の測定方法についてもっと簡単にできないかと考え、筋肉の厚みについて検討しました。 下の図のようにTh12レベ
気胸は多くは胸腔ドレーンだけで軽快を認め、ドレーン留置で改善しなければ外科的治療が必要になります。 しかし元々の呼吸機能低下や肺疾患により外科的治療が困難である症例には胸膜癒着術を行いますがなかなか一発で上手く行かず、難渋する事も経験します。 そこで癒着が必要な気胸ってどんな特徴があるのか検討しました。 気胸で入院された症例のうち、癒着を行った89例(癒着群)とドレーンのみで改善した206例(非癒着群)、手術を要した106例(オペ群)を比較しました。 癒着群では高齢(癒着
今回の論文はスプレー肺(waterproofing spray-associated pneumonitis)、通称、WAP(と勝手に略したw)についてです。 防水スプレーの吸入による肺障害(WAP)は両側びまん性すりガラス影を示す急性肺障害です。しかしまとまった報告はほとんどありません。 そこで当院で診断された2例とPubMed、医中誌で報告されたWAP31例を合わせて検討しました。またその特徴を同様に急性の経過で類似した画像所見を示す急性好酸球性肺炎(AEP)11例、夏型
肺結核は慢性発症する疾患ですが、適切な治療を行っても改善は緩徐になる事がよくあります。そのような症例では長期に発熱や炎症反応が高い状態が続き、主治医はやきもきするものです。 他の感染症を合併していないか?治療が聞いていないのか?パラドキシカルリアクションか?薬剤熱か?などなど、、、 そこで肺結核の長期に渡る炎症について予測因子を調査しました。 CRP5mg/dL以上を示した症例を収集し、4週間以上に渡ってCRPの高値が持続した症例を比較しました。 炎症維持群→CRPが4週
気管支肺胞洗浄(BAL)はびまん性肺疾患や感染症の診断のために気管支鏡下に行われる検査です。一般的にBAL回収率が30%未満であると検体不良と見なされ、検査結果は参考値となります。 回収率不良の因子は高齢、男性、中葉舌区以外の気管支を選択、COPDがリスクになると報告されていますが、検査する標的気管支についての評価はされていません。 そこでBAL検査を行った症例を収集し、標的気管支についての評価を行いました。 BAL検査を行った338例を対象に気管支壁の面積とBAL回収率が
肺結核は肺に結核菌が感染して発症する呼吸器疾患であり、空気感染を起こすため感染管理が必要な疾患です。 周りの人にうつしてしまう可能性があるため早期診断が必要ですなんですが、初期の患者さんでは痰が出ないなどで菌が検出できない事があります。 そこで胃液検査です。痰が出なくても菌を嚥下している可能性があり、胃管を入れて胃液を採取して抗酸菌検査を行うと診断に至る事があります。 でもそれどのくらい意味があるのでしょうか? という事で症例を集めて検討してみました。 初回の喀痰で診断
胸水中の高いADA値は結核性胸膜炎の診断に有用であり、40IU/L以上をカットオフ値にする事が多いです。 過去の文献ではADA≥40は結核性胸膜炎の診断に対し、感度92%、特異度90%と言われています。 これだけ見ればまぁADA≥40だったらほぼ結核でしょとなりますが、実際にはADAが高くても結核じゃなかったという経験をしますよね? じゃあ実際に結核の割合はどのくらいで、その他の疾患は何があって、鑑別に有用なデータはあるのかを調べてみました。 胸水検査を行った症例のうち、
加湿器肺とは加湿器の水に発生したカビや細菌、エンドトキシンなどを吸い込む事により発症する過敏性肺炎(アレルギー性肺炎)の1つです。一般的に過敏性肺炎はKL-6が上昇すると言われています。 しかし時は2017年、先輩から加湿器肺の症例を報告してと言われて、学会発表をしました。 典型的な症例であったため考察に困ったため、過去の症例を片っ端から集めてみたんです。そしたら、ほとんどの症例でKL-6が正常~軽度高値だったのです。 これは大発見だと論文化を、、、なかなか進めず、、、や
胸水穿刺は気胸などの合併症を起こしますが、もし針の位置が想像通りに刺せたなら合併症のリスクは限りなく低くなります。 しかしまぁそんな完璧な手技というのは現実的ではありません。 そこで安全マージンをどのくらい確保すれば良いのかを知るために、穿刺した際の針の位置が目的の場所からどのくらいズレるのかを研究しました! 計測には穿刺くん2号を使います。 あ、すいません、穿刺くん2号です。 論文中にも穿刺くん2号(Senshi kun 2 gou)と記載しましたの