日本語教師|学習者に追い越されたネイティブ
日本で2年ほど留学して、上級レベルの日本語を身につけて戻ってきた元教え子のベトナム人と、ひさしぶりに会いました。
会って、話して、びっくり。
わたしよりも、口が回ってる!!
そのベトナム人はもともとおしゃべり好きで、ベトナム語でも早口だったのですが、日本語も同じようにペラペラと使っている。
しかも、大阪弁!(留学先が大阪だった)
話す内容はといえば、漫画やアニメの話から、ベトナム社会の問題まで、幅広いテーマ。
そして、こちらが簡単な言い回しを使わなくてもストレスなく話せるほどボキャブラリーも豊富。
留学前に初級レベルを教えていたことを思い出すと、「日本語、上手になったなぁ」、と感動する一方で。
おやおや、このベトナム人のほうが日本語ネイティブのわたしよりも達者に日本語話してるぞ、と。
わたしは、というと。
もともとがそんなに早口とか、おしゃべりという感じはなく。とは言え、大阪弁のテンポ感で、地元の友達とはそれなりにしゃべくりしていたはずなんですが…。
もう6年も、ベトナム人学習者を相手に、短く簡単な言葉遣いで話す毎日。職場でも、同僚のベトナム人教師とのあいだにミスコミュニケーションが起きないように、なるべくかみ砕いて話すクセがついています。
おかげで、日本語の表現のバリエーションが減りました。ときどき、「あれ?こういうとき日本語で何て言うんだっけ?」と言葉が出てこないほどです。
話すスピードも、相手が聞き取れるように、ゆっくりと、区切って話します。
なので、わたしのほうが、限られた表現を使ってゆっくりと話している感じです。
「日本語を扱うくせに!」とも思いますが、そこは日本人を対象にする国語教師と違う点で、日本語教師は日本語を学習中のノンネイティブの人が理解できるように、日本語のレベルを使いわけるプロフェッショナルなのです。
その中でも、わたしは初級~中級程度の学習者ばかりを相手にしているので、低い日本語レベルに特化しています。
これが、日本で働く日本語教師なら教える内容もレベルが高いし、日常生活でふつうの日本語を使うので、こうまでならないだろうと思います。
こちらは外国に住んでいるので、日本語から離れてしまいやすいのですね。
ふだん、学習者がつまったり考えたりしながらスローペースで話すのを根気強く待って聞くことが多いので、マシンガントークする日本人の話に自分の耳がついていかないときもあります。
ついでに言えば、大阪弁話者というアイデンティティーも失いました。
日本語教師はふつう、方言の訛りを矯正して、標準語を話すようにします。
これまた、日本国内であれば、学習者の生活も同じ地域なので、その地域の話し方でもかまわないと考えることもできますが。
海外で学ぶ学習者のためには、教科書と同じ発音をしたほうがいいのです。
また、ベトナムで知り合った日本人と話すときでも、相手が関西圏の方じゃない場合も多いので、自然と標準語で話しています。
大阪人らしく(?)家族や友達と話すときの一人称は「ウチ」だったのですが、いまでは「わたし」になってしまいました。
無意識に「~じゃん!」などと口から出ている自分に気づいて(本来なら「~やん!」というところ)、自分の話し方を完全に見失ったなぁと思ったりします。
ときどき、ベトナム人から「大阪弁で話して!」とリクエストされても「思い出すからちょっと待ってー」などと言って、がんばってスイッチを切り替えないといけません。
今月、約3年ぶりに、一時帰国することになったのですが、友達に会って日本人らしく会話できるか、ちょっと心配ですf(^^;