日本語教師として何を成したいですか?
どんな日本語教師になりたいですか?
こんな質問をされたら、いろいろ答えが出てきそうですね。
ーわかりやすく教えられる教師
ー勉強が嫌いな学習者でも楽しませられる教師
ーみんなが安心して発言できる空間を作る教師
じゃあ、この質問はどうでしょうか。
日本語教師として何を成したいですか?
質問の意図がわかりにくいかもしれませんが、ほかの聞き方ならこうです。
『あなたの日本語教師としてのキャリアプランを教えてください』
今の職場で一生、働らく予定でしょうか?もし、そうじゃないなら、いつ、どんな職場に移りますか?それまでに、今の職場で、どんなスキルを磨き、何を現在の職場に残しますか?そして将来、何を達成しますか?
日本語教師のバリエーションはさまざまです。フィールドは日本国内か海外か、海外ならどの国か…対象者は、就労者なのか生活者なのか留学生なのか…大人なのか、子どもなのか…所属先は企業なのか、日本語学校なのか、大学なのか…あるいは、家庭教師やオンラインの個別指導かもしれません。
こんなに状況が違うので、どんなフィールドで、どんな対象者に、どんな職場、どんな指導方法で教えるか、そんな条件の組み合わせで得られる経験も必要な能力や資質もぜんぜん違います。
でも、わたしたちはひとくくりに『日本語教師』と呼ばれますし、日本語教師になる方法として日本語教師養成講座を修了するか、日本語教育能力検定試験をパスする人が多いでしょうけど、その2つは目指す日本語教師のキャリアを区別しません。
なので、いざ日本語教師になる!というときから、無数の分かれ道の中のひとつを選ぶわけです。
そして、選んだ道の先にも、また多くの分かれ道が待っています。その道が自分の行きたいところに通じていると知っていたら、そもそも、自分の目的地がはっきりしていればいいですけど。
道の地図も目的地も持たない人はどんどん道に迷って、最終的に非常口から飛び出していくことになります。
わたしは6年ほどふつうの会社員をやったあと、420時間の日本語教師養成講座を修了して、日本語教師としてベトナムに来ました。それが6年前です。
養成講座で同じクラスにいた人で、10人くらいその後を知っていますが、講座修了後に日本語教師になったのは自分含めて4人でした。今まで日本語教師を続けてるのは、わたし以外に1人だけです。
以前働いていた日本語学校で、新卒として入ってきた後輩が8人いましたが、3人は1~2年で会社を辞めて日本語教師も続けないと言っていました。
わたしと同様、新任の日本語教師として中途採用でベトナムに来て、その後、日本語教師を辞めてしまった人も何人もいます。
何事もやってみないとわからないです。だから、やってみたけど合わなかったということはあると思うし、わたしも「できるかどうかわからないけどやってみよう!」という気持ちではじめました。日本語教師になったとき、ぼんやりとやりたいことの方向性はありましたが、明確に言語化して目標にできるほどじゃありませんでした。今でも、先程の問いかけに全部はっきり答えられません。
ただし、日本語教師として目の前の学習者に接したり、職場の課題を見つけるたびに、「わたしは何ができるだろう?」「わたしは何がしたいだろう?」と自分に問い続けて来ました。
そして、そのときどきで、自分のやりたいことと、やりたくないことをクリアにしていることで、分かれ道に差し掛かったときに後悔なく選べるようになりました。
選んだほうの道が「正しいか間違ってるか」は知らないし、そもそも正解があるものではないと思うので、自分さえ後悔しなければ、周りの景色を楽しみながら歩き続けられます。
そして、これまでにもうひとつ発見したことが、「あなたは何を成したいですか?」と聞いてくれる人と、「わたしはこれを成したいのです」と語ってくれる人がいるというのはとても重要だと言うことです。
だれかに話してはっきりと言葉のかたちにすることと、だれかの考えを鏡にして自分はどうだろうと考えること。これが『リフレクション(内省)』を進めてくれるのです。
これから日本語教師になろうとする人や、日本語教師としての自分のあり方に疑問を持っている人、はっきりしないもやもやを抱えている人がいれば、ぜひ自分が日本語教師として何をしたいのかとことん考えてみてください。
そして、できれば教師のコミュニティなど話す場所を探して、自分の話をしたり、ほかの人の話を聞いたりしてみてください。
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今日の見出し写真はベトナム中部の砂丘です。
さらさらの白い砂で、素足で歩くのがとても気持ちよかったです。
足跡つけて走り回ったり、寝転がって遊んだりしたあとで、服やくつや髪などあらゆるところに砂が入ってたいへんなことになりました笑