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【SAPIX算数】5年生の重要さとそこに生まれる壁
5年生、入塾したての学年とも言い難くかといって受験学年とも言えない学年。子供によっては中だるみをしてしまったり、そして大きな問題は成績を大きく下げてしまう事例がかなり生まれることも5年生という時期にもあります。これは5年生の算数が大きく関わっています。今回は中学受験の算数に非常に重要な5年生の算数を説明することで皆様の受験勉強がスムーズに進むよう手助けさせて頂きます。
5年生の算数の位置づけ
5年生の算数の意味は夏期講習前後の前期・後期で変わってくると思います。
前期(2〜7月)
個人的にはこの時期は
4年生での知識や学習習慣を用い、受験算数の基礎を学ぶ下地作りの時期
だと考えております。
後期(9〜1月)
夏期講習を通過したこの時期は
夏期講習の内容を使い受験算数の基礎を身に付けるため、新たに今までの全ての単元を学習し直す時期
と捉えています。
本番の入試における5年生の内容の意味
皆さんは入試問題というものがどういった内容で作られていると思われますか。大体の方は、6年生の最後に習った内容などで作られていると思われるのではないでしょうか。
しかし、実際は違います。半分近くは5年生の内容から作られるのです。
最上位校の問題ですら3分の1ほどは5年生の内容です。ただし、5年生の内容を完璧に理解しているというレベルでなければ解けませんが。
何故こうなるかと言うと、5年生の中で受験算数の内容はほとんど全て学んでしまうのです。6年生で新たに学ぶということは非常に少ないです。
つまり、5年生という時期ですでに入試本番に使う基礎という名の道具・アイテムをほぼ全て手に入れているのです。それでは6年生では何をしているかというと、その5年生で手に入れた道具をより高度に使いこなしたり複数を混ぜて同時に使うことなどを学ぶことが多いのです。
そうなると、5年生の間で手に入れているはずの道具・アイテムを持っていない、もしくはどう使うかわからないという状態であれば6年生ではそれらをより上手く使いこなそうと練習している子たちとはドンドン差が生まれてしまうのです。
保護者に意識してほしい重要なこと
非常に多くの保護者の方は、6年生の最後の時期に何とかされようと動かれるのですがこれは非常に遅いです。
上記のようにすでに5年生の段階で入試本番の内容には触れていっているのです。つまり5年生時点で入試本番のスタートは切られているのです、6年生では無いのです。
6年生で行われてることはレースの途中のせめぎ合いなのです、そこで皆少しでも前に出ようと様々にもがいているのです。そこにスタートで出遅れているのであれば、その段階でとても厳しいと言えます。
常に忘れないで頂きたいことは、勝負の場面は最後の最後ではなくもう5年生の段階で来ているということです。保護者の方はその重要性を理解して頂き、少しでも早く改善されることを検討して下さい。
5年生の算数の難易度
4年生ではαゾーンにいました、けれどもその後5年生になり算数が急降下し結局ブロックもどんどん落ちてしまいました。実はこういった子は結構いるのです。これには5年生の算数から加わる新たな難題のせいとも言えます。
その難題というのは『抽象性』です。
これは国語辞典的な意味ではなく算数独自の意味になります、私自身の考えではこの『抽象性』という意味は『他人が勝手に決めた考え方』と言えると考えています。つまり抽象性というものは目に見えない概念的なものです。
この『抽象性』は5年生から大きく関わってきます。導入される時期は2回に渡りあり、それぞれにおいてドンッと算数の難易度を跳ね上げます。
①割合
まず最初に大きく抽象性を感じるものがこの『割合』です。SAPIXでは6月頃から触れていく単元になります。
この『割合』が子供にとって非常に難解なことは、小学校で算数について行けなくなる子供が生まれるのがこの『割合』を学んでからたくさん出るということで皆さんご存知だと思います。
ご多分に漏れず、中学受験においても『割合』が始まることで難易度がグンッと上がります。
②比
5年生の夏期講習の中でこの『比』というものを学びます。この時の『比』というものはただの数字の扱い方を練習するだけですので問題ではないでしょう。問題となるのは夏期講習以降、この『比』を用いて全単元を学び直していくことです。こうして前期までは具体性のある単元だったものまで、全てが抽象性にまみれていってしまいます。
ここで難易度は『割合』の時以上にガンッと難易度が上がってしまいます。
同じ問いでも、前期と後期では抽象性のせいで解き方のアプローチが全く異なっていくこともあります。一つの例として5年生で出てくるこんな問題があります。
例題
道の端から、AとBが同時にお互いの方向に向かって出発する。出会う地点が道の真ん中よりも75m離れているなら道は何mか求めなさい。Aは分速120m、Bは分速105mとする。
前期の解法
AとBでは出発してから出会うまでに進んだ距離の差は75mの2つ分の150mになると分かる。だから150mの距離の差が出来るまでの時間が出発してから出会うまでに掛かった時間と分かるので、そこから道の距離を求めれば良い。
後期の解法
まず、注目するべきするのはAとBは出発してから出会うまでに移動時間が同じだと言えるという事。
移動時間が同じ⇒速さの比と移動距離の比が同じ比になる
という、入試問題の速さの問いにおいて非常に良く使う特徴を用いて考えると、AとBの速さの比が120:105=8:7から移動距離の比も8:7になると分かる。この比の合計の15が道の距離の比と分かり、半分の距離だと7.5ということを考え75mが距離の比でいくつになるかを考えれば良い。
本来は線分図などを使い説明し、より図示化し具体的に見せますが今回は割愛致します。
上記を見て頂ければ、如何にアプローチの仕方が変わっていっているのかがお分かり頂けたと思います。このように同じ内容も具体的な距離の差ではなく、『同じ』という数字的には何も出てこない、その言葉の意味から言える特徴を考えそこから導き出せる内容を使って考えることが入試問題レベルの『抽象的な内容』を解く練習になるのです。このように具体的な数字ではなく、内容の意味や特徴から導き出せることを考えることが『抽象的』の意味の一つと言えます。こういった内容を夏期講習で比の計算方法を学んだあとの後期から本格的に学習していくことになります。
私感なのですが、算数が出来ない子ほど『この問題をどう考える?』と尋ねた時に『比を考える・比を使う』と答えることが多いいのですよね。個人的にこの返事がとても嫌で、本当にちゃんと夏期講習で導入をして欲しいと思います。
何故なら、比とは整数・小数・分数などの数字の種類の1種と言えます。つまり先程の返答は『整数を考える・小数を使う』というような意味と変わらないと言えます。如何にニュアンスが分かっていなくやっているかがお分かりになると思います。理解できている子はこういった返答を返してくることはありません。
どうすれば良いのか
この重要な5年生の算数、これをどうすれば良いのかと言えば
一番大事なことは、出来るだけ早く改善することを検討する
ということになります。
一番シンプルかつ効果的な方法は、
毎回必要な理解を出来ているか確認しつつ練習する
ということになります。それぞれの単元で何が必要な内容なのか、どのように理解することが今後に繋がるのかを全て先に、もしくは文章で説明することは不可能です、実際に可能なことがその単元を学ぶ際に説明し練習してもらうことだとしか思えません。
しかし、そもそも授業の中でそのレベルで説明がされているのか、ご家庭ではそこまで深く内容を理解し子供の行っている内容を精査することはそもそも難しい、などの状況を考えると本当に何とかしたいと思われるならば出来るだけ早くにそれが可能になるフォローを付けることが最善と言えます。
保護者に判断するための一つの基準をお伝えするならば、数字に影響が出てきた時にはもうすでに根が深くなっていることが多い、ということです。
数字が出る前までに、本人の意識・習慣・勉強量や質・取り巻く環境など様々な積み重ねがあるのです。その上での結果だということです。
それをどうにかするために行って欲しいことは子供を観察することです。
日々の中での子供の様子を見ていればどのような結果になるのかは推測が出来ると思います。そうすれば結果の出る前から動くことは出来るようになると思います。
可能性を残すには、出来るだけ早いタイミングの方が良いことは確実に言えることです。
こういったことを私のポジショントークと思われるか本当にそうだと思われるかはご家庭・保護者の自由ではあります。しかし、自由の裏側には責任が生じていることをご理解し、出来るだけ子供の中学受験を良い方向になることをお考え頂ければと思います。
算数の家庭教師を行っております。無料相談も行っておりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
武田の個人的な思い
ここから先は武田の非常に個人的な思いで書かせて頂いた内容になります。
かなりネガティブかつ個人的な内容になりますので、そういった方向性を好まれない方にはオススメ致しません。
基本的に保護者の動きは遅いように思えます。決断が遅れに遅れギリギリになった6年生の9月から指導をしてもどうしても限界があるのです。理想を言えば4年生の段階から正しい理解を積み重ねることが一番可能性が残ります。
幸いにも上手くいったケースはあるとしても、それはたまたまです。決していつもそうやって上手くいくとは私には言えません。
結果が出た際に『いつか上手くいくだろう』という保留の選択をなさることが遅れていく原因なのではないでしょうか。その選択が子供の貴重な時間をどんどん失うことになり、可能性を奪ってしまうという現実に向き合って頂きたいものです。
あとは、やはり授業の質なのだと思います。私は様々な学校の入試問題を解き、子供を合格に導くのと同じぐらいダメだった経験も重ね何をどうするのかが重要なのかを積み重ね続けました。それを大学生の人が同レベルで行えるのであれば、もっと中学受験の結果は皆が幸せになっていると思います。また手前味噌にはなりますが、大学生でなくとも同じようなレベルまで積み上げた講師がどれだけいるかは怪しいかは以前にもお伝えした次第です。
このような家庭と塾の両方の環境が子供の中学受験に向けて最善とは言えない可能性が高い現状を何とか打破出来ないものかと思案しております。