ミスマッチ層・・・それでもSAPIXに通うべき理由
前回、前々回にてSAPIXの強さの理由と弱みをお伝え致しました。
そして前回の中でSAPIXの仕組みを最大限享受出来る層はSAPIX偏差値55以上とお伝え致しました。つまりそれ以外はSAPIXとはミスマッチな層と言えます。
こう聞くと、では転塾をすれば良いのか、と思われそうなところですが私は最善はSAPIXに通い続けることだと考えています。
今回はSAPIXに通い続けることが最善である理由をお伝え致します。
なぜ転塾をしない方が良いのか
前回の内容を聞くと保護者の中には、それならばもっと子供に合った塾に転塾をした方が良いのではないか、と考えられるのではないでしょうか。
前回の記事前後でも上記の相談は何度も頂いております。
その度に、私はそうは思いません、とお伝えしております。
それには2つの理由があります。
①他塾との比較
SAPIXは首都圏中学受験において群を抜いた実績を叩き出しています。この理由はSAPIXが強い以外にも、他塾が弱いということもあると思います。
通われている方はお怒りになるかもしれませんが、現実として否定できないどころか正直に言えば弱過ぎると言っても過言ではないと私は感じております。実際、家庭教師として様々な塾に通う子供を指導して本当に何度も感じてしまうことです。
そういった塾に変えたとしても、問題は解決されません。それどころか一旦期待した分、落胆も大きいのではないでしょうか。
他塾が弱い理由というのは、私が思うに結局変わらないからだと思います。
変わらないというのは、SAPIXと状況が変わらないということです。
前回SAPIXがミスマッチ層へのテコ入れをしない理由を書きましたが、それは他塾でも変わりません。特に人的リソースと社会的風潮は中学受験だけでなく教育業界、学校などの公的機関も含めた全体の大きな問題だと私は感じています。
つまりSAPIX特有の問題ではなく、業界全体の問題のためどこに行っても変わらないということです。
このように結局状況は変わらないとすると、SAPIXの強さであるテストの質の良さと通っている意識の高い子供(家庭とも言えますが)が他塾を駆逐していくのです。
何故ならこのSAPIXの強みはそのまま他塾の弱みと言えます。テストの質で劣り意識の高い子供はSAPIXに取られてしまい意識の低い子供が多く通う状況で悪循環を生んでしまう、ということです。
もちろん授業・指導でこの悪循環を断ち切ることがそもそもの教育というものの本質と言えますが、人的リソースの無さ・社会的風潮によるハラスメントへの縛りという如何ともし難い問題をそう簡単には解決できないことが現状の結果から言えることでしょう。
それでもSAPIX以外の塾にも指導力のある優秀な講師や意識の高い生徒(家庭)はいらっしゃると思います。しかしその恩恵を享受出来る層はSAPIX以上に狭まり本当にトップ層だけになってしまいます。そして、より幅広いレベル帯が悪循環に陥っていると言えます。
SAPIXで悩まれていらっしゃる家庭が他塾に転塾したことでこのトップ層に入れるのでしょうか?ほとんどの子供が無理だと思います。そうであればSAPIX時代と変わらない問題が起きるだけです、これでは解決策とは言えないでしょう。
酷い言い方になることは自覚しておりますがはっきりと言いますと、
同じダメな環境であればまだマシな部分のあるSAPIXに通われる方が可能性は残る
ということです。
こういったことから転塾はオススメ致しません。
②子供に『合った』環境という考えのズレ
上記の①の理由を実は結構多くの保護者の方は内心分かっていらっしゃるのかなと私は思っております。特に社会人として働かれている保護者の方は体感的に理解している気がします。それでも最近の相談やSAPIX時代での保護者対応の中でも転塾という話は途切れることはありませんでした。
その際の保護者のお話しの概要はおしなべて下記のような内容です。
『SAPIXのレベルは子供には難しいから、子供に合ったレベルの塾に行こうと思う』
でした。
これは中学受験から本質的にズレた考えだと思うため、私は怖いと思います。
受験というものはどうキレイゴトを並べても本質は競争です。
そこには子供や個々人を考慮してあげるという発想がそもそも存在しません。それなのに受験までは子供のことを考慮してやっていこうということが本質的に正しいことでしょうか?
これは、『うちの子はおっとりしているので急いでやれない、だからうちの子の受験は3月にやって欲しい』と言っていることとあまり変わらないことです。そんなことがあるわけが無いのは分かるでしょう、全員が同じ日に受験を行うのです。そこに区別はありません。
つまり考えるべきは、子供に合ったではなく、どのように受験に合わせてついていけるようにするか、です。
こういった考えを理解していないと、転塾をしたら何とかなるという発想が出てくるのだと思います。
とはいえもちろん、学校から帰ってきたら勉強以外何もやらないなどのような極端な話しをしているわけではないことはご理解下さい。
大事なことは、
子供に合った受験を考えるのではなく
受験に合わせて子供を変えることをどのようにするかを考える
ということです。
厳しい言い方ですが、子供にあった環境を探すということは問題の本質から目を逸らす逃げの行為です。まず問題解決を最大限考え実行することが先になります。
こういった理由から私は転塾はオススメ致しません。
オマケの理由
ハッキリとした根拠などが薄いため、オマケ程度でお考え頂ければと思います。
結局①にも繋がると思いますが、合格実績の差も十分理由と言えます。
以前に広範囲で他塾を上回る合格実績を出すSAPIXとお伝え致しました。
上位校については皆さま十分お知りおきだと思いますが、それでは下限はどこだと思われますか。
時間の空いた同僚が2021年度の結果を他塾と比較すると、SAPIXと他塾で合格率がSAPIXの方が悪くなるのはSAPIX偏差35からでした。
もちろん、これは個人が手作業で比較したものですので正確なデータとは言いにくいものだと思います。しかし、体感的には偏差40台の学校ぐらいに関しては他塾にSAPIXが遅れを取ることはないだろうと感じてしまいます。それぐらいの差は実際に出てしまっています。
一つの理由として、最近の安全志向があるのではないでしょうか。
第一志望は変えないとしても、押さえ校は昔よりもより堅実に落として考えられているご家庭が増えたと思います。そういった意味で、より下限が下がっていることもあるのかもしれません。
真偽の程は置いておくとして、こういったことから転塾はオススメ致しません。
SAPIXの敵はSAPIX
SAPIXの敵はSAPIX、結局はこれがSAPIXと他塾の関係を端的に表しているのだと思います。
この言葉は私がSAPIX時代に子供たちによく言って聞かせていた内容になります。
『お前たちは今校舎のαゾーンにいることで上手くいくと思っているだろう。でもお前たちの敵は他塾じゃないんだ、本当のお前たちの敵はSAPIXの他校舎の子供たちなんだ。だから争うべきは隣の子じゃなく他校舎のαにいる同じ志望校の子供だと意識しろ。』
現状のSAPIXに通う子供のライバルは他校舎のSAPIX生である、これは否定できない現実です。そしてそれは決して上位層の学校のみに当てはまることではなく、かなり広い範囲に広がっていると思います。
首都圏の様々な学校の合格をSAPIXの校舎間で奪い合っている、この状況に変化が見えない限り他塾に移るメリットは薄いと言えるでしょう。
まとめ
SAPIXに通いながら結果が伴わない、それでもSAPIXに通うべき理由を説明致しました。
・結局他塾も変わらない
・受験に必要な考え方
・合格実績の差の下限
・SAPIXの敵は何なのか
上記のような理由から、私はSAPIXで上手くいっていなくてもSAPIXに通い続けることが最善と考えております。
しかしもちろん『そのまま』通い続けることで上手くいくことはありません。次回はどうすれば良いのかをご説明致します。
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