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依頼が絶えないウエディングプランナー34歳@広島【後編】ピンチは私を成長させてくれる

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さまざまな業種の人と協力して働く中で心掛けていることはありますか。

 仕事に関わる全員が気持ちよく、笑顔になる状況です。例えば、お客さんから「こんなことをこの予算でやりたい」と言われた時、お花屋さんに、単純に希望内容と限られた予算だけを伝えると「むちゃぶり」になります。
 そんな時、私は「とてもすてきな新郎新婦さんがこんな楽しそうな結婚式をしたいと望まれていて。あなたにしか形にできないと思うのだけど、どうかな」とお願いします。
 依頼された人がうれしくなる、やる気が出るような言葉を大切にしています。すると良い仕事が生まれ、依頼したお客さまも喜ばれる。
 あと、周りの人には小さなことでも「ありがとう」を惜しみなく伝えます。ありがとうって、言われたらうれしいですよね。あと、自分に起こるしんどい出来事にも「ありがとう」の気持ちで向き合うようにしています。

どういうことですか。

 何か壁にぶつかったら「これは自分を成長させてくれるぞ」って言い聞かせるんです。2020年春、新型コロナウイルスの感染が拡大して、結婚式を開きづらい空気が社会で一気に広がって、丸々1カ月間、仕事をストップせざるを得なくなりました。
 力を注いで準備してきた結婚式を延期しなければならず、涙するお客さまの姿を見ると胸が痛みました。
 でも、ちょうどコロナ禍の前に、20人未満の少人数の結婚式プランの構想を温めていたんですね。
 大規模で、いろいろなプログラムを組み込んだ結婚式も楽しいけれど、1つのテーブルを全員で囲む素朴な結婚式もとてもいいんです。何げない会話から、新郎新婦の思い出話が始まって、ご両親も盛り上がったりする予定調和じゃない展開がある。コロナ禍で私だからこそ提案できる結婚式がある、という自信を持っています。

 卓上のパーティションも殺風景にはしたくない。装花のプロと相談して、パーティションも立派な装飾に仕立てます。そういう景色が、新郎新婦や参列者の記憶にきっと残りますよね。
 また、延期を決めたお客さまとはその分、お付き合いする時間が長くなるので、不安や悩みに寄り添って、より深く信頼関係を築けます。延期した分、結婚式当日に「ようやくできた」という大きな感動も生まれます。延期したことさえも前向きに捉えたいんです。

そのエネルギッシュなパワーはどこから来ているんですか。

 三姉妹の次女なんですが、幼い頃から自分に注目してもらうためには自己主張しないといけなくて。家族の中でも場を盛り上げることが大好きでした。しゃんしゃんと大きな声で話し、学生時代も学祭があれば実行委員をしました。同窓会があれば幹事をしたし、根っからの祭り女です。
 でも実は「穏やかで静かな時間」を求める自分もいるんです。いつも聴く音楽は、もっぱら静かでスローなものです。週1回通っているヨガ教室も体を鍛えるというより、ゆっくり過ごす時間をつくるため始めました。ヨガの後、市内の川沿いを夜風を感じながら歩く瞬間も最高に幸せです。
 Knotの事務所(広島市中区)はもともと、建築事務所サポーズデザインオフィス(広島市中区)の谷尻誠さん(48)=三次市出身=のご自宅だったんです。

 谷尻さんが東京に転居するということで、2021年1月に物件を引き継がせてもらいました。谷尻さん愛用のレコードプレーヤーも譲ってもらったので、それを機にレコードデビューもしました。
 谷尻さんが著書で「自分はいつも何かを考えている。でも考えること自体が安らぎであり、楽しい」というようなことを書いていたのですが、同感です。
 静かな音楽を聴きながら、結婚式のアイデアを練ります。ヨガをしながら「朝ヨガのイベントをしたら楽しいだろうな。ヨガの後にモーニングを食べる企画もいいなぁ」とか考えてしまいます。穏やかで静かな時間から生まれるアイデアやエネルギーがあります。

これから事業をどう進めていきたいですか。

 起業して約3年間は1人で運営していたのですが、より多くの依頼に応えられるよう社員を少しずつ増やしました。コロナ禍にも採用を進め、ことし3月から私を含め5人体制になりました。1人で頑張るよりもみんなで協力して取り組む方が、大変なことを「楽しい」に変えられる、と感じています。
 広島だからこそ出会える人や環境を大切に、「自分らしい形の式をしたい」という新郎新婦さんの思いに応えていきたいです。