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月9ドラマ化で話題の漫画「ミステリと言う勿れ」。実は、漫画には広島の街が出てきます
1月10日に放送が始まったドラマ「ミステリと言う勿れ」(テレビ新広島などフジテレビ系)。俳優の菅田将暉さんが主人公役とあって早くも話題です。ただですね、原作の漫画もぜひチェックしてほしい。月刊フラワーズ(小学館)に連載中で、単行本が10巻まで出ています。漫画ならではの見どころとして、広島の街が登場するんです。ミステリーの舞台の一つとして。描かれ方がとてもリアルで、県民としてはどこか誇らしい気分になるのです。(福田彩乃)
地元民ならピンと来る!?生き生きと描かれた広島の街
主人公は、もこもこ天然パーマの大学生・久能整(くのう ととのう)。友だちも彼女もいない少し変わり者の整が、独自の価値観と膨大な知識を基にしゃべりまくり、事件の謎と人々の心を解きほぐす―。「ミステリ―」は、そんなお話です。
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©田村由美/小学館 ©フジテレビジョン
広島が描かれているのは2~4巻です。美術好きの整がお目当ての展覧会を観るため、広島県立美術館を訪れるところから物語は始まります。美術館の玄関がバーンと忠実に描かれている。美術担当である私は、それだけで興奮してしまいます。
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さらに広島の街の生き生きした描写が続きます。原爆ドームや宮島といった有名な場所はもちろん、これは元安橋そばのカフェだよね、本通り商店街のアーケードだよね、バッケンモーツアルトのお店だよね…とピンとくるスポットがたくさん。愛読者である広島県立美術館・主任学芸員の神内有理さん(46)も「広島の景色が詳しく描かれていて、だいたいどこなのか分かります」と声を弾ませます。
なぜ広島?原作者・田村由美さんの思い
原作者の漫画家・田村由美さんは和歌山県出身で東京在住。「広島は、描いてみたい土地でした」と言います。宮島のような景勝地があり、大きな都市でありながらごみごみし過ぎておらず「ロケーションとして素晴らしい」。そして、被爆地という歴史にも思いをはせます。「ここで何があったのか、どんな思いでその日を生きて、身体と心を先に繋ぎ、美しい街に戻したのか、その痛みは想像できるものではありません」。だからこそ、今の広島を丁寧に見つめようとする田村さんのまなざしが、人々や街の鮮やかな描写から伝わってくるようです。
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親しい友人に、広島出身の声優・佐々木望さんがいるという田村さん。古里への思いを度々聞き、お土産もよくもらい、どんどん身近になっていったそう。2018年に2回、ロケをしたそうです。「現地で見聞きしたもの、感じたことの一つ一つが、自然と作品に現れたんだと思います」
しっかり考え、しっかり語る主人公・整の魅力
私、大いに語っておりますが、正直に申します。ネタ元は神内さんです。「県立美術館が漫画に載っているの」と教えてもらい、この作品を読み始めた次第です。でも広島のお話が終わってもページをめくる手が止まらない。いつの間にか、物語そのものに引き込まれていました。
それは主人公の整が魅力的だから。とにかくしっかり考え、しっかり語る人です。「僕は常々思ってるんですが…」から始まって、社会への疑問や「常識」への違和感を口にしていく。そうして事件の核心に迫っていきます。
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自分の頭で考え、自分の言葉で語る。当たり前のようで、難しいことかもしれません。デジタル社会で情報があふれているから、何となく分かっている気分になっている。SNSでつながっているから、何となく伝えた気分になっている―。そんなことに、ふと気付かされるのです。原作のファンというジュンク堂書店広島駅前店の書店員三浦明子さん(45)も「整って、現代の人たちが『面倒だから』と避けがちなことを、ちゃんと実行していますよね」と話します。
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整の考えているあれこれは、原作者の田村さん自身が「10年、20年とずっと考えていることでもある」そうです。日々「おかしいなって引っかかることって、けっこうあるんですよ」。重みのある言葉です。この感度、磨いていきたいです。
ドラマでも、菅田さんがすてきに整を演じていますね。こちらも展開が楽しみです。