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「育休取るだけ夫」にもやる 広島発、妻の嘆き

 子育てにやる気のある男性が増えています。育休を取るのもその一つ。ただ、一方で聞こえ始めているのが「育休中に家で戦力になっていない」という妻の嘆きです。広島県内の女性たちも「指示待ち」の夫にもどかしさを募らせているよう。2022年10月からは新たな「男性版産休」が取れるようになります。男性の産休や育休を生かすには、いったいどうしたらいいのでしょう。(栾暁雨、柳岡美緒)

文句ばかり 生活費も不足

「大きな子どもが1人増えただけでした」

  夫は育休を「自分の休み」「長期の有休」と勘違いしている節があった。広島県内の30代女性は2年前を振り返る。会社員の夫は長女が生まれてすぐに1年の育休を取得したが、全く戦力にならなかった。まさに「取るだけ育休」。「大きな子どもが1人増えただけでした」

 これまで家事をしてこなかったので嫌な予感がしたが、案の定、すぐに家でごろごろし始めた。娘をあやすのは気が向いた時だけ。おむつ替えや着替えを頼んでも文句ばかり。授乳中なのに、風呂上がりの自分のタオルや下着を持ってこさせようとする。断ると不機嫌になった。

 家事はごみ出しと風呂掃除しかしないくせに「感謝しろよー」と恩着せがましい。夫の分の食事準備も負担で、女性が疲れて作れなかったときは「主婦なのに家のこともできないのか」と嫌みを言われた。

 その上、生活費にも困った。夫は低収入で育休中の給付金は10万円ほどしか出ない。不足分は女性の会社員時代の預金を崩してやりくりした。

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ザ・指示待ち 復職後はイクメン

「もっと子どもに向き合ってほしかった」

  広島県内の別の女性(35)も、夫が昨年取った1カ月の育休は「期待外れだった」という。言わないと長男のおむつも替えないし、ぐずっても見ているだけの「指示待ち」。肌着が結ぶタイプからかぶせるタイプに変わっただけで「着せられない」とあたふたする。

 お尻ふきシートも事前に用意しないと、何度も置き場所を聞かれる。女性に頼りっきりで「手伝いだと思っているのか、自分で考えたり調べたりしない。私も第1子で分からないことだらけなのに」。この人、会社でもこんな感じなのでは…。仕事ぶりも心配になった。

 揚げ句にスマホゲームをしたり動画を見たり。たった1カ月で育児した気になって、復職後にイクメン面していたのも腹が立った。「もっと長男と向き合ってほしかった。制度に利用者の心構えが追い付いていません」。国が進めようとしている男性育休の義務化には懐疑的だ。

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育休中の父親 3分の1が家事2時間以下

 育休を取った父親の3人に1人は、1日の家事・育児時間が「2時間以下」―。育児情報サイトの運営会社が2019年に母親を対象にした意識調査では、育休中の夫への不満が明らかになった。

 不満に思う理由としては「家でだらだら」「家事のスキルが足りない」「育休を遊びに使った」「主体的に動かない」などの厳しい声が寄せられた。

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「取るだけ夫」にしないため 夫婦でできること

 NPO法人ファザーリング・ジャパン中国代表理事 片元彰さんに聞いた。

 女性が1年近くかけて「ママ」になるのに対し、男性は突然「パパ」になります。父親という自覚が芽生えにくい分、育休前の準備が欠かせません。

 まずは休業中の過ごし方や役割分担を夫婦で話し合いましょう。「マニュアルがある方がやりやすい」という男性も多い。分担をシートに書き出して「見える化」するのもお勧めです。

 うちは夫婦で「いちいち言葉にする」ことを心掛けました。「察して動いて」と思う女性は多いですが、何を期待されているか分からない夫は「指示待ち」になる。職場では同僚と確認作業や情報共有をしますよね。家でも「いちいち」確認し合うのが大切です。

 本当は、もっと前から準備できるといい。普段から身の回りのことを妻に任せきりの男性が育休を取っても、何をすればいいか戸惑い「取るだけ育休」になる。結婚前から家事スキルを磨くのが理想です。

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(2021年1月19日付中国新聞掲載 連載「この働き方大丈夫? 男性育休の壁(下)」から)


男性版産休 2022年10月から始まる予定

 2021年6月に法律が変わり、新たに「男性版産休」ができることになりました。22年4月から、この産休を取るよう従業員に働き掛けることが企業に義務付けられます。そして、22年10月から実際に「男性版産休」を取れるようになる予定です。

 さて、どんなものなのでしょう。子どもが生まれてから8週間以内に計4週間の休みを取れます。

 実はこれまでも、生後8週間の間に休みが取れる「パパ休暇」というのがありましたが、今回の産休は2回に分けて取れるのが特長。妻の出産や退院時、里帰り出産から自宅に戻るタイミングなど、それぞれのタイミングで期間を選べます。「長く職場を空けるのが心もとない」という心理的ハードルが少し下がるかもしれません。

 会社への申請も、通常の育休は1カ月前ですが、産休は2週間前でOK。想定外のことが起こりやすい出産によりフレキシブルに対応できるようになっています。