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絵本レビュー「こんとあき」
Instagramの中でお知り合いになったあめちゃんからおススメしていただいた「こんとあき」を紹介します。
ぬいぐるみのこんと女の子あきの物語。
こんはあきが生まれるのをずっと待っていて。
生まれてからは成長とともに一緒に過ごしていくうちに、ぼろぼろになってなおしてもらいに出かけていきます。
ぬいぐるみには命が宿る
田辺聖子も荒井素子も、そんなことを書いていたっけ。
うちの弟にもぬいぐるみがいる。
もうすっかり大人のおじさんなのだけど、実家に帰るといまだに彼の部屋にはぬいぐるみのウサギが座っている。
ウサギなので、名前はウーくん。
ウーくんは弟が幼稚園の時にやってきた。
やってきたというか、弟が入院しているときにいただいたもの。
授業中に先生が「いますぐお家に帰りなさい。お母さんが迎えにきています。」と言って帰ったのは覚えている。
「晩御飯の用意はしてあるから食べてね。1人で寝れるよね。」
とお父さんとお母さんはバタバタと用意をして、どこかへ行ってしまった。
カレーが置いてあったので、自分の分といつものように弟の分をよそって
「あ。いない。」
とつぶやいて、1人で食べた。
1人でお風呂に入って、パジャマに着替えた頃におばあちゃんが家に来てくれて、「みんな病院に行ったのよ」と聞かされた。
「だいじょうぶ?」と聞かれたけれど「だいじょうぶ。1人で寝れるから。」と二段ベッドの二階に上がって電気を消した。
「おばあちゃんはお家にいるからね、何かあったら呼ぶのよ。」と言われたんだけど「だいじょうぶ」と言って、まっくらな部屋で目をつぶった。
いつもなら下のベッドから「お姉ちゃん、もう寝た?」って声がするのに、その日はしなくて。ちょっとだけ、さみしくなった。
絵本の中でこんも「だいじょぶ。だいじょぶ。」っていうところがあるんだけど、その時のことを思い出した。
そのページだけ何回か読み返してみた。
「だいじょうぶ」じゃない時に、「だいじょうぶ?」って聞かれると「だいじょうぶ」って答えちゃうよね。
小さかった時の私も「だいじょうぶ」ではなかったな。と気づかされた。
弟はクリスマスが過ぎても帰ってこなかった。
すっかり良くなって帰ってきた時に抱えていたのが、真っ白なウサギのぬいぐるみ。
病院でクリスマスを迎えた子ども達に、贈られたぬいぐるみ。
男の子はヒツジのぬいぐるみ。女の子はウサギのぬいぐるみをもらってたらしいんだけど、弟は「ウサギがいい!」と駄々をこねたそう。
それがウーくん。
病院のベッドでずっとウーくんと一緒だったらしい。
弟も「だいじょうぶ」じゃなかったんだろうな。
ウーくんは幼稚園の時はママゴトの相手になり。小学校の頃は机の上に座っていて、中学、高校、大学生と今に至るまでベッドの上に座っている。
汚れてきたら、洗濯ネットに入れて洗ってもらっているので、今でも白いままだ。私にはしゃべってくれないけど、弟にはどうだろう?
こないだ実家に帰った時に「ウーくんは?」って聞いたら「いるよ。ずっと一緒なのでね。」と照れるでもなく、笑うでもなく、当たり前の顔で答えていた。
ぬいぐるみと過ごしていた人に読んで欲しい。