![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70368347/rectangle_large_type_2_4ce2fd0a8ca1359240a649dd28ddf4e1.jpeg?width=1200)
焦桐『味の台湾』収録全作訳者コメント
焦桐『味の台湾』(みすず書房)には全六〇篇が収録されています。原書からより抜くにあたって、そして収録作品を並べるにあたっては意図もあり、また訳すにあたっての感想もあります。「訳者あとがき」には載りきらないいろいろをつぶやきましたが、あらためてまとめておきます。
焦桐『味の台湾』収録全作訳者コメント1「担仔麵」日本でも早くから受け入れられた担仔麵は、台南発で全国化した。料理の定義から由来、取り上げるべき店の話から個人的な体験につなげる手法はオーソドックスで、巻頭を飾るにふさわしい。「古早味」というキーワードも登場する。#味の台湾
— 川味 (@chuanweikoji) November 23, 2021
焦桐『味の台湾』収録全作訳者コメント2「肉臊飯」
— 川味 (@chuanweikoji) November 23, 2021
日本でもっとも有名なはずの台湾料理の「滷肉飯/魯肉飯」が本書の目次にないことを不審に思った方も多かったのでは。その理由は、もともと「滷肉飯」だった一篇を、翻訳の底本『味道福爾摩莎』で著者焦桐が「肉臊飯」に改めてしまったから。
内容は「肉臊飯」の台湾南北の差、人々の生活への溶けこみ具合が書きこまれている。「それぞれの家の路地の入り口あたりにはしばしば夢の肉臊飯の店があり、そうした近所の小吃店も名店の味に決してひけを取らないだろう、ということだ」という一節はまさにこの食べものの本質だといえる。#味の台湾
— 川味 (@chuanweikoji) November 23, 2021
焦桐『味の台湾』収録全作訳者コメント3「白斬鶏」
— 川味 (@chuanweikoji) November 24, 2021
「白切鶏/白斬鶏」は『中国くいしんぼう辞典』と重なる数少ない項目なので、読み比べると二書の方針の違いが分かりやすい。ここで最初に福建・広東における客家と台湾との関係が取り上げられ、そこから著者自身の経験につながる。#味の台湾
焦桐の公私に渡るパートナー謝秀麗は客家の家の生まれだ。その彼女の実家を大学生のころはじめて訪れたエピソードが秀逸なうえに、最後は東南アジアの華人の食にまでつながる盛りだくさんな内容になっている。「カシラ一つで七杯飲れて、モミジ二本で甕が空く」はなかなか軽快な訳にできた。
— 川味 (@chuanweikoji) November 24, 2021
焦桐『味の台湾』収録全作訳者コメント4「肉円」
— 川味 (@chuanweikoji) January 21, 2022
「豚肉とタケノコ餡の葛まんじゅう」はこの奇妙な料理の名前の訳として要を得ていると思うのでぜひお店でも使ってください。下の娘さんの「双双」初登場、赤ん坊のころの短いエピソードだが印象に残る。#味の台湾
南北や店による違いを書き出し、具体的な店名を多く取り上げる本書における印象的な構成がよく表れている。しかしただ滞りなく進むのではなく、「ああ、人生には肉円を食べるときのように、あわただしく進まなければならない瞬間のいかに多いことか」こういう一行を不意に入れるのが著者の本領だ。
— 川味 (@chuanweikoji) January 21, 2022
焦桐『味の台湾』収録全作訳者コメント5「虱目魚」
— 川味 (@chuanweikoji) November 24, 2021
朝食にうまいサバヒーを食いたいがために家を早く出る夫と、朝の浮気を疑う妻、ともにほほえましいというよりはエネルギーに圧倒される。著者の仏頂面のままおもしろいことを言う感じ、うまく伝わっただろうか。#味の台湾
魚のワタだけを調理して客に出す料理にするのは日本でも漁港ならないことはないけれど、台北や台南という都会でそれができることのすごさがある。食のエッセイにしてはかなり長いが、二回、三回と折り返されて個人のエピソード、台湾全体における状況を重ねていくので最後まで乗せられていく。
— 川味 (@chuanweikoji) November 24, 2021