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ゴスペルって何だ?

 映画「天使にラブソングを」や、結婚式、クリスマスソングなど、人生に1度はゴスペルを耳にした方がいらっしゃるのではないかと思います。でも、そもそもゴスペルとは何かと聞かれると、回答が難しいのではないでしょうか。
 音楽のジャンル分けは三者三様、ゴスペルに限らず様々な分け方があります。それを承知したうえで、今回は私が思う「ゴスペル」を書かせていただきます。
 その前に冒頭として、ゴスペルを聴いたことがない方向けに、映画「天使にラブソングを」から、代表的なゴスペルソング「Oh Happy Day」の動画を載せておきます。大方、ゴスペルのイメージはこのような楽曲だと思います。

 それでは、以下ゴスペルについて書き連ねていきますので、よろしくお願いします。


ゴスペルは音楽のジャンルであり、歌詞のジャンル

 結論から言うと、広義のゴスペルは歌詞のジャンルだと考えている。「音楽的にこうだからゴスペル」というよりも「こういう内容を表現しているからゴスペル」だというジャンル分け。
 その広義のゴスペルの中に、冒頭動画のOh Happy Dayのような、黒人ノリ(歴史の直視とリスペクトの意味を込めて、以下含め黒人と表現します)の音楽性を指す狭義のゴスペルがあると考えている。詳しく説明していきます。

ゴスペルは神様への心の叫び

 Gospelの語源は古英語の「god spel」、現在の英語だと「good news(良い知らせ)」。何がgood newsかというと、キリスト教の教えのこと。ざっくり言うと、キリストは私たちを愛しているということ。それに対して「神様ありがとう!」という心の叫びがゴスペル。このメッセージこそがゴスペルの中核のため、広義でのゴスペルを歌詞のジャンルと捉えた。
 また、ゴスペルの起源が黒人音楽と教会音楽(白人音楽)の融合というところに、音楽性としての狭義のゴスペルの原点がある。
 それでは、歌詞・音楽性両方の観点から、ゴスペルの歴史を見ていきましょう。

ゴスペルの歴史

ゴスペルの起源「黒人霊歌」~虐げられてきた黒人の心の叫び~

 ゴスペルの起源は黒人霊歌。17世紀から18世紀、奴隷として売られ夢も希望もない中で、特に聖書の下記2点に共感した黒人が、神様に心の叫びをぶつける。
①神様が、エジプトの奴隷となったイスラエルの民を解放する
②キリストが、社会的弱者や軽蔑されるような人々にも愛を注ぐ
 奴隷船に詰め込まれ、奴隷となってからは1日20時間労働、物として扱われるなど悲惨な状態だった分、神様へ抱く希望や感謝は大きかった。その思い、心の叫びが歌詞になり、黒人の元々の音楽性に白人の教会音楽が合わさった歌となったのが、黒人霊歌である。
(下の動画は「Go Down Moses」。モーセと共にイスラエルの民が、エジプトから自由を得る聖書の話を歌っている。)

黒人霊歌からゴスペルへ~聖と俗の融合~

 1863年に奴隷解放宣言がなされ、黒人は法律上の自由を得た。しかし人種差別や貧困との戦いは続いていた。
 そんな中、Fisk Jubilee Singersという黒人グループが白人から評価を受け、ホワイトハウスやヴィクトリア女王の前でも公演を行うに至った。黒人霊歌が白人社会にも広まったのである。
 そして1930年代、世界恐慌で世の中が失業や貧困に苦しむ中。ゴスペルの父と呼ばれるトーマス・A・ドーシーが、宗教音楽である黒人霊歌と、当時俗的な音楽と言われていたブルースを融合し、「神が示した良い知らせ」を歌う新しい音楽を展開した。これがゴスペルの誕生である。

ゴスペルの変遷~さまざまなジャンルを取り込むゴスペル~

 その後ゴスペルは、ソウル、R&B、ポップスなど、その時代に人気のある音楽スタイルを取り入れ、様々な楽曲が誕生した。また、歌う形態も少人数から大人数にブームが変わったりと様々だった。
 我々がよくイメージするゴスペルは、黒人霊歌をベースに、黒人音楽を中心とした他の音楽要素を融合したものだと思う。具体的には、縦ノリやシンコペーションなど黒人音楽要素をベースにしつつ他ジャンルの要素も加わった楽曲を、複数人(往々にして大勢)で魂を込めて力強く歌う音楽。私はそれを、特に音楽性にフォーカスした狭義のゴスペルだと考えている。
 その中で「神が示した良い知らせ」を歌うという「god spel = good news」の精神は、時代や音楽性が変わってもゴスペルの中核を担っている。この精神を表現している楽曲であれば、どんな音楽スタイルでも、広義でのゴスペルだと私は思う。

 参考に、これってゴスペル?と思うような2グループをご紹介。どちらも狭義の意味ではゴスペルではないかもしれないが、広義の意味ではゴスペルであり、グループ名にゴスペルを入れたり、ゴスペルのコンサートで歌われている。

1.Gospel Gangstaz
 ヒップホップ色が強く、ラップでゴスペルを表現。

2.演歌フレンズ
 ゴスペルを演歌で表現している。実はこの動画のライブは私も別のクワイアとして参加していた。11:40から始まる「みたまの実音頭」は非常に盛り上がり、私自身も別途敬老の日のイベントで行ったところ、大盛況だった。

ゴスペルの核はGood News、音楽スタイルはその手段

 以上、ゴスペルの歴史を見ながら「ゴスペルって何だ?」ということを考えてみた。改めて私の考えは下記のとおり。
1.ゴスペルの核はキリスト教の「Good News」
2.それを表現する手段がゴスペルという音楽
3.音楽性は時代や地域、民族などによって変化する
4.黒人霊歌をベースに、黒人音楽を中心とした他の音楽要素を融合したものを、音楽の観点でのゴスペルと分類している

 冒頭でも言ったように、音楽のジャンル分けは三者三様なので、異論は認めます。何が正解というのは特にないと思います。今回の記事で、こういうゴスペルの捉え方もあるんだなと思っていただければ幸いです。
 最後までお読みくださり、ありがとうございました。

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