私のアニメ大賞2022
初めに
Twitterで年間アニメ10選みたいなことをやっている人を見て、自分もやってみたくなったけど1年が終わる頃には印象が薄れてしまっていたり、相対的に序列を付けるのが難しかったりしたので、2021年からは毎クール自分が視聴したアニメをランク評価して、1年が終わったタイミングで改めて最も好きな10作品を選ぶということを始めました。
2021年は評価結果をTwitterに投稿していましたが、せっかくnoteの利用を始めたので、2022年はこちらで記事を作成したいと思います。
また、昨年(2021年)はワースト10も選出していましたが、好きな作品を好きな理由については(傾向こそ出るものの)作品の数だけ出てくるのに対し、嫌いな作品をけなす理由はかなりパターン化されてくるということが経験から分かってきたことや、そもそも生産性があまりにも低い営みであることから今回は行いません。
ネタバレについて
ネタバレについては作品によって配慮したりしなかったりしますが、自分がなぜその作品を評価しているかを表現するのにネタバレが必要だと思った場合には積極的にネタバレしていきます。ネタバレに関しては自己責任ということで、ネタバレが嫌だという方は以降の内容を読むのはお控えください。
記事の構成について
2022年1月クールから10月クールまでに放送を開始したアニメ作品から10作品を選抜し、1位から10位までの順位を付けて、10位から順番に感想・寸評を述べていきます。
…できれば自分が好きになった作品は皆さんにも見て頂いて感想について話し合いたい気持ちがあります。記事を読んで何となく見たような気分になって結局手を出さないというパターンを助長してしまわないかという点については内心少々不安を感じますが、そんなことを気にしていても仕方がないので、ここから本題に入ります。
(ネタバレ回避用に一応少しだけスペースを設けておきます)
第10位
錆喰いビスコ(1月クール)
ジャンルとしてはポストアポカリプス的な世界を舞台としたバディヒーロー物というか、そんな感じの作品です。
この作品の一番の魅力は、二人の主人公・赤星ビスコと猫柳ミロの間に生まれる友情を超えた絆にあると思います。
二人の旅路を見ているうちに、一見粗暴な荒くれ者のビスコには実は情に厚い一面があること、そして大人しい優男に見えるミロにはその実自分の大切なもの・信じることのためには自分の身の危険も顧みない過激さがあることが視聴者にも理解されてきます。
象徴的なエピソードが第7話「奪われた錆喰い」です。
ある日潜伏先の小屋(?)でミロが食事の支度をしていたところ、ビスコはミロの様子がおかしいこと、そしてその理由が彼の唯一にして最愛の肉親である姉のパウーに関わっていることをすぐに察知して、死地へと赴く覚悟を決めます。
しかし、この時点でビスコの身体は世界を蝕む奇病「サビツキ」に深く冒されており、ビスコがどれだけ取り繕おうとしても、医師として、旅のパートナーとしてビスコを近くで見てきたミロの目にそのことは明らかでした。
ミロは大切な友人をみすみす死なせる訳にはいかないと初めてビスコに弓を引きますが、ビスコが病んでいてもなお荒事において二人の間には埋めようのない差があり、あえなく返り討ちに遭います。思わず本気で蹴りを入れてしまったビスコはミロの身を案じ助け起こそうとしますが、ミロが待っていたのはビスコが警戒を解くその瞬間、隠し持っていた睡眠薬をビスコに打ち込み、ミロは単身敵地へ乗り込む、そんなシーンです。
この場面、ミロは自分がビスコに歯向かったところで勝ち目がないことを分かっていながら、それでも力づくで彼を止めようとします。自分はビスコに必ずねじ伏せられるという実力の差を正しく理解し、そうなった時にビスコはきっと自分を心配して近づいてくると、彼の優しさを理解し、信じていたからです。しかし、ミロはビスコのその優しささえも「計算」に入れ「利用」することでビスコを出し抜き、彼が危険に飛び込むのを止めようとしました。荒廃した世界を旅する中でミロがそれだけの強さ・たくましさを身に着けていたことがビスコにとっての「誤算」でした。
二人の友情、思い合う気持ちが交錯する名場面ですが、自分はニコニコ動画のコメントでこの辺りの解釈を補ってくれる人がいなかったらここまで言語化できるところまで至らなかったかもしれず、こういうことがあるからニコニコ動画でアニメを見るのをなかなかやめられずにいます。
残念なのはこの場面以降、終盤でこのシーンを上回る山場が自分の中ではなかった点で、各クール最優秀クラスの作品に付けているA+評価を与えるには至っておらず、Aランク評価とし、年間ランキングでも10位にとどめています。
お話だけでなく、JUNNAさんが歌うOPテーマ『風の音さえ聞こえない』がメチャクチャカッコいいので、毎回テンション高く作品に入って行ける点も放送当時とても気に入っていました。JUNNAさんは来年1月開催のリスアニ!LIVE 2023 SUNDAY STAGEに出演予定で、この曲のセットリスト入りはほぼ確実なのでライブで聞けることをとても楽しみにしています。
第9位
勇者、辞めます(4月クール)
強すぎる力を持つために人類からも恐れられ追放された主人公・勇者レオがかつての敵である魔王軍に身を寄せ、問題だらけの魔王軍に次々と改善策を授けていく、そんな感じのストーリーです。
序盤こそ「デキる男の業務改善術」みたいなアドバイスを連発する主人公に「なんでアニメ見てる時までそんな押しつけがましい仕事術みたいな話を聞かされんとアカンねん」という不満を感じることもありましたが、必ずしもレオが教えることばかりでなく、逆にレオの方が新たな学びを得ることも…みたいなエピソードが出てくるにつれ、だんだん面白い作品のような気がしてきます。
終盤、レオの口から彼が魔王軍に降ろうとした真の目的が語られる中で、「何か雰囲気の良いカッコいい感じの曲」くらいに思っていたOPテーマ、鈴木みのりさんの『BROKEN IDENTITY』が飛躍的に名曲に感じられるようになるなど、段階を踏んで味が出てくる感じが良くできているなと思わされる作品です。レオ役の小野賢章さんの程よく薄味な演技をはじめ、主要キャラを演じる声優陣の好演が印象的です。
クライマックスの展開で少々テンポが悪化し間延びした感じがあった点から、この作品についてもAランク評価止まりとしていましたが、ずば抜けた作品が少なかった4月クールにおいて最終盤まで優勝を争った秀作であり、十分に視聴をおすすめできる作品と評価しています。
第8位
ぼっち・ざ・ろっく!(10月クール)
2022年最後にアニメオタクの話題を総ざらいした作品をこの順位に選出しました。多少逆張り気味の評価のような気もしており、あまり自信がない一方で、これだけ話題になった作品なら自分がわざわざ取り上げてほめなくてもいいだろうという風にも思っているので、その辺りも加味しての順位という感じです。本作以外についても全体的に、各期で絶対的に一番面白いアニメは他クールの作品との比較で迷っても優先して選出するようにしている一方で、同じくらいの評価だったら観測範囲内でより話題になっていなかった方を入れようという意識が働いており、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』等、十分ランクインレベルの作品と思っていても優先度の観点で選外としている作品もいくつか挙げられます。
本作品の内容についてはそこまで詳細に触れる必要性を感じていませんが、まず優れていると感じた点はインターネットとの相性の良さで、毎週月曜日に「憂鬱な月曜日が始まった」gifを投稿するアニメ公式や、ミーム化しそうなコマの画像を配布するまんがタイムきらら編集部のTwitterアカウントなどにはよく分かってやっているなと思わされました。また、ライブシーンについてもキャッチーな楽曲を含めてかなり話題になっていたと思いますが、そういった分かりやすいフックがある点も非常にインターネットの時代に適しています。
一方で、このくらいの評価に留めた理由についても触れておこうと思います。またニコニコ動画のコメント由来で恐縮なのですが、本作が最も「跳ねた」瞬間だと勝手に考えている #8「ぼっち・ざ・ろっく」のライブシーンで、ぼっちの行動原理は常に「このまま終わりたくない」という所にあるみたいなことを言われており、なるほどなと思ったのですが、そういう目で見た時に最終回のライブには8話ほどの「ロック」を感じられなかったという感じでした。自分の中では高まりきった期待に完全に応えきれてはいなかったのかなと思った部分で年間では8位くらいに落ち着くかという評価です。
第7位
パリピ孔明(4月クール)
『三国志』でその名を知られる天才軍師・諸葛孔明が現代に転生し、シンガーソングライターの卵・月見英子に様々な知略を授け、音楽の力で共に経世済民を目指します。つまり『Fate』です。
冗談はさておいて、ヒロインの英子はストーリー序盤こそ訳も分からず孔明の策に導かれるままといった様子でしたが、やがて孔明の目指す「歌を通じて人心を救済する」という理想を体感的に理解し始め、現世における孔明の主君として成長していく様子を見せ始めます。先述の『勇者、辞めます』と同時期に放送された作品であり、放送当時はこれらの両作品でメインキャストとして熱演を見せた本渡楓さんの時代の再来を感じました。
『勇者、辞めます』の項でも触れた通り、4月クールは突出した作品に乏しく、後になって振り返ると相対評価が難しいところですが、毎回安定した面白さを評価し、4月クールを代表する作品としてこの順位としています。
第6位
その着せ替え人形は恋をする(1月クール)
本作についても自分がわざわざ言及する必要がないレベルの話題作のようにも感じるものの、入れないのも流石に逆張り過ぎかということでこの順位にランクインとしました。
本作の良いところは、散々言われているようにも感じますが、タイトルにある通り、主人公とヒロインは一貫してお互いにとって特別な存在であるものの、ヒロインの方が先にその「特別な存在」への好意を「異性への好意」と自覚する点と、それが自然な成り行きであると思わせるのに十分なだけ主人公を魅力的な人物として描くことに成功している点にあると考えています。
舞台装置としての題材(コスプレのことを言ってます)は多少捻りが効いているとしても、本質的なテーマとして、青春に打ち込む姿は美しいし、青春に情熱を燃やしつつ時に迷うヒロインの背中を押す主人公はカッコいい、そういったベースがしっかり作り込まれているから見ていて楽しめる作品です。奇抜さを重視するあまりに基本をおろそかにしている作品が散見される時代だからこそ、改めてその重要さを理解させてくれたと思います。
第5位
シャドーハウス -2nd Season-(7月クール)
2021年に放送された1st Seasonに続いての放送で、2021年年間10選では3位としていました。その時の寸評ツイートは以下です。
正直なところ上記がほぼ全てという感じで、2nd Seasonは将来的にストーリーの全貌にたどり着くために、「直接的には話が進まないけど話を広げる」みたいな期間があり、そこで少し中だるみ感を感じましたが、最終的には流石だなというところに落ち着かせてきました。緊張感の維持と解放を使い分け、ここぞの場面では登場人物の成長から打開策が生まれたと思わせるテクニックが1期と変わらず素晴らしいです。アニメで続きが描かれることがあるのかは分かりませんが、その時が来ることに期待しています。
第4位
サマータイムレンダ(4月クール)
本作については放送当時に視聴することができていなかったのですが、一部で好評なようだったので、年末に本記事の最終的なまとめを行う前に見ておきたいと思い、滑り込みで一気見しました。
いわゆる「ループもの」の作品で、ジャンルとして食傷気味になっている方もいるのではないかと思いますので、そういった方には不向きかもしれません。私はサスペンス・ミステリー的な要素を含む作品が元々好きだったので、見始めたらどんどんのめり込み、次々に先のエピソードを視聴してしまいました。10選に選出した他の作品は基本的に全て毎週最新話を視聴するという形だったのに対して、本作品だけは全話を一気に視聴したので、どう評価するかについては少々迷いました。しかし、毎期アニメを評価するに当たっては、「続きが見たい作品かどうか、続きを見るのが億劫になるような作品ではないか」といった点をかなり重視していることから、その観点で見た時に非常に評価が高くなりやすい作品だろうということと、地上波放送時の同期の作品で上位に選出している『パリピ孔明』等と比較して、こちらを上位に置くことに抵抗がなかったことからこの順位としています。
本作においては、主人公・網代慎平が持つ「ループ」能力の仕様・制限と、物語上の主な敵勢力となる「影」の持つ能力の仕様・特徴という2大ギミックが存在し、これらを適宜解明・開示していくことで視聴者を飽きさせないよう工夫されている点が好印象です。
本作を視聴して改めて思ったのですが、この手の作品を見る中で、自分にとっては、どうしてこんな惨劇が起こってしまうのか、一体どうすればそれを回避できるのか、人知の及ばぬ能力を持つ敵勢力に対して主人公側が打てる手は何なのか、といったことが見えない中で徐々に情報が増えていく過程が一番面白く、終盤に入って徐々に「勝利条件」が見えてくるとだんだん「このお話ももうすぐ終わってしまうのか」という寂しさの方を感じてしまう傾向が自分にはあるようです。一方でアニメ評価に関しては、連続した2クールで放送される作品について、他作品との相対的な評価を行う場合、1クール目を見た所で一旦他の同時期放送作品と一緒に評価を付けているので、そういった面でも本作は1クール目からかなり情報量を詰めてきているのでA+相当くらいの評価をしていそうと思うことにしました。
微妙に気に入らなかった点として、主人公が口癖のように言う「俯瞰しろ」という言葉が何か意識高いヤツみたいでちょっと気に食わないとかいうのがあったりもしたのですが、方言女子がかわいいという長所とチャラという感じで自分の中では大きな減点要素もない作品でした。
第3位
神クズ☆アイドル(7月クール)
「楽して稼げそうだから」という不純な動機からアイドルになった主人公・「クズアイドル」の仁淀ユウヤが、不慮の事故で若くしてこの世を去るもアイドルへの未練から幽霊となってこの世をさまよっていた「神アイドル」最上アサヒと出会って始まる物語です。
1話で二人が出会った瞬間から「これはユウヤがアサヒと出会って変わっていくお話なんだな」ということが視聴者にもはっきりと分かると思いますが、問題はどのくらい、どのように変わるかという点で、アニメ化されている範囲においてはこの塩梅が絶妙だったように思います。
また、アサヒも若くして亡くなったが故に精神的に未熟な部分があり、決して完璧なアイドル、完璧な人間として描かれているわけではありません。言い換えれば、アサヒは故人でありながら成長の余地を残した人物として設計されているということでもあり、そうしたキャラクター造形にも好感が持てます。
最終回のライブの途中の場面でユウヤがアサヒに掛ける一言には、アサヒと共にアイドル活動に取り組む中でユウヤが受けた影響と、そこから生じた二人の関係性の変化が象徴的に詰められており、1クールのストーリーを総括するシーンとして巧みな作りの名場面だと感じました。
一般的なワンクールのアニメよりも更に短い10話で終わってしまったことが寂しく、ぜひ続きを見てみたい作品です。
第2位
メガトン級ムサシX(10月クール)
2021年10月クールに放送され、2021年の個人的アニメ10選において4位としたアニメ『メガトン級ムサシ』のセカンドシーズンに当たる作品です。ちなみにファーストシーズンに対する評価のツイートはこんな感じでした。
非常に高い期待を持って視聴を開始した本作ですが、せっかくの機会なので改めてファーストシーズンを含めた本作の魅力についてコメントしていきたいと思います。
『メガトン級ムサシ』の魅力①:主人公・一大寺大和の「天才性」の説得力
主人公・一大寺大和は喧嘩最強の不良少年であり、その天才的な戦闘のセンスを買われて人類の最終兵器・ムサシのパイロットに選ばれます。この喧嘩最強不良パターンか、スポーツエリート(主に武道)のどちらかというのが昭和のロボットアニメの主人公あるあるですが、一大寺大和に関しては「喧嘩が強い」ことと「ローグ(本作中のロボットのこと)戦闘のセンスに優れている」ことの結び付け方が非常に上手です。時に兵器を開発した側の想定を上回る利用法を実戦の中で閃き、それを実行することにためらいがない様子を描くことで、体格・筋力で上回る相手にも機転を利かせ、型にはまらない戦い方で相手をねじ伏せてきた背景に圧倒的な説得力が生まれています。さらに、大和が生身で喧嘩をするシーンも何度か描かれており、生身の喧嘩とローグ戦闘の描写が相互に彼の「天才性」を補強しています。そして、それはやがて「大和なら何か打開の策を捻り出してくれる」という視聴者の安心感・信頼感に繋がっていきます。「安心感」の種類にもよりますが、安心して見られるというのは作品にとって非常に重要なことだと思っています。
また、直接関係ありませんが、登場人物のネーミングセンスが良ければ名作とは限らないものの、名作は例外なくそこのセンスに優れている、ということがかつて『バクマン』でも言われていたように記憶しています。その点「一大寺大和」のネーミングは(「いちだいじ」だけに)只事ではないレベルと評価しています。
『メガトン級ムサシ』の魅力②:多彩なキャラクターによる群像劇
本作には「侵略異星人と地球人類の生存を賭けた星間戦争」というメインの舞台装置の中で、主人公とヒロインの『ロミオとジュリエット』的(ちょっとたとえとしては不適当かもしれません)なストーリーが展開されていくという大枠があり、この辺りも昭和の時代から度々見られた構造です。しかし本作に関しては周辺の登場人物にもそれぞれ様々な事情があり、それぞれに同情したくなる気持ちが物語への没入感を高めてくれます。最近のアニメは尺の都合もあってか主人公を中心とした人間関係に終始しがちですが、主人公が直接関与しない範囲においてもそれぞれの「人生」が展開されており、この戦争が次に彼らにどういった変化をもたらすのかという物語の厚みを加えています。
『メガトン級ムサシ』の魅力③:見慣れたテーマと戦う「調理法」
既にそこそこネタバレしていますが、本作は「侵略異星人と人類の生存競争」としてスタートし、「侵略異星人」は人ならざる外敵で、やるかやられるかの相手として位置付けられています。この点は昭和のロボットアニメ創成期にありがちな人外の怪物との戦いに近いです。実際のところこの期間は必ずしも長くはないようにも感じられますが、ストーリーが進むにつれて、「侵略異星人」にも抱えている事情があることが明らかになり、ヒロイン・アーシェムが掲げるドラクター(「侵略異星人」の作中の呼称)と地球人類の共存という理想を目指す戦いへと移行していきます。この辺りからは特に『ガンダム』以降に見られる人間対人間の戦争を通じたドラマの要素を多分に含んできますが、こうなってくると先述の多軸的な人間関係が活きてくるので、その辺りはよく計算されていそうです。
本作では各回のラストにその回の印象的なセリフが「KEY WORD」として振り返られるという特徴があり、この辺りのセンスについても高く評価しているのですが、第2話のKEY WORDで、1期のOPテーマの歌詞でも同様のことが印象的に歌われている「やられたらやり返す ジョーシキだぜ」というフレーズがあります。この「やられたらやり返す」という「ジョーシキ」を打ち破り、乗り越える結末を迎えられるのかをとても楽しみにしています。
以上のようなところが本作の主な魅力だと考えています。途中制作の遅れから放送スケジュールに遅延が発生したこともあり、それを踏まえて本作をどのように評価するかは少々考えました。実際、2021年放送の『86』ではアニメ2期放送当時はAランク相当の評価をしていましたが、ラスト2話のデリバリーが大幅に遅れて関心が削がれてしまったことから最終的に自分の中ではBランク相当に位置付けたということがありました。しかしながら、今のところ作品への関心を損ねるほどの大幅な遅延には至っていないと考えており、その他の入選作品それぞれと比べて「上か下か」ということを考えていった結果この順位としています。Youtubeで全話無期限で無料視聴できますので、未見で興味のある方にはぜひご視聴頂きたい作品です。
第1位
時光代理人 -LINK CLICK-(1月クール)
ほぼ全てが中国産のアニメ作品の日本向けローカライズ版です。
冒頭でも述べた通り、2021年アニメ大賞においては、ベスト10だけでなくワースト10もランキングしていたのですが、ワースト10位に『闘神機ジーズフレーム』という作品を挙げていました。こちらの作品自体は下記の寸評ツイートにもある通り、救いようのない駄作という訳ではなく、これといった長所がなく普通に面白くない凡作という印象でした。しかし、こちらもかなりの部分が中国産の作品であり、ある程度無難なクオリティの作品を出せる状態には既にあると確認できたことから、「近い将来中国産アニメに驚かされる日が来るかもしれない」ということを言いたかったために無理矢理ワースト10位にねじ込んだのですが、その時は思っていたよりもずっと早くやって来ました。
話を『時光代理人』に戻します。
写真の中に「ダイブ」するという形でタイムスリップできる超能力の持ち主・トキ(程小時=チョン・シャオシー)と、写真から過去の出来事を読み取れる能力を持つヒカル(陸光=ルー・グァン)の二人がその能力を使って依頼人の問題解決に当たる、バディ物+探偵物のような雰囲気の作品です。
「ダイブ」能力に関連する仕様や制限等については、彼らもその全てを把握できている訳ではなく、写真だけではなく映像にもダイブが可能である点等、ストーリーが進む中で明らかになっていく部分もあり、こういった情報の出し方・絞り方の手腕が巧みです。
依頼を解決していく中で、こうした能力への理解を深めてより高度に活用するという意味で「能力者」としての成長が結実するのが第11話です。このエピソードのラストシーンを初めて見た時の興奮は「このアニメ、もしかしたら面白いんじゃね?」と思っていた気持ちが、今期ナンバーワンのアニメであるという確信に変わるのに十分なものでした。強烈なエンディングの引きから次の回が配信されるのが楽しみで仕方なくなり、アニメ放送における「ライブ感」の大切さを思い知ったシーンです。また、それぞれのエピソードの中で依頼人や関係する人々との関わり合いを通じて、特にトキの精神的な成長が一つの形となるのが最終12話なのですが、こちらもここまで視聴を続けてきたことへの感慨が感じられる場面になっています。
本作は予め2期の制作が決定されているということで、1期はあくまで全体のストーリーのうち途中のここまで見せる、という作りになっており、1期だけではお話としては全然終わっていません。自分はAmazon Primeビデオ以外に有料配信サイトには課金していないのですが、もし仮に(あくまで仮定の話です)本作の2期が有料配信でしか見られないと言われたらきっと課金をすると思います。
今年『時光代理人』を見なかった方、皆さんが『時光代理人』を見なかったという「過去」は変えられません。しかし、「現在」において『時光代理人』を見る選択肢は開かれています。そして、それを自ら選ぶことによってのみ『時光代理人』1期を見た状態で2期を迎える「未来」を手にすることができます。全てはそういうことです(どういうことだ)。
おわりに
以上が2022年の個人的アニメ10選とその寸評です。次点の作品としては『do it yourself どぅーいっとゆあせるふ -』『SPY FAMILY』『シャインポスト』『機動戦士ガンダム 水星の魔女』辺りで、特に『DIY』については一回書いたのに途中で入れ忘れていた作品の存在に気付いて泣く泣く選外としました。今後も同じような数のアニメを継続して視聴できるかは分かりませんが、楽しいのでできる範囲ではアニメ評価を続けていきたいと思います。