見出し画像

バーチャルとの恋はありやなしや

先日 NHKスペシャル ヒューマンエイジ「人間の時代」を見ました。
今回の特集では
「性の欲望 デジタル技術“解放”か“堕落”か」という
AIやロボットなど、人ではない相手で性的欲求を満たす
性欲のバーチャル化が進んでいるというテーマでした。
とても興味深かったです。

番組では大きく分けて2つのトピックについて話がされていました。
1つ目はAIに対して深い愛着や愛情を抱いた結果
その1つの現れとして
AIやロボットなどで性的欲求を満たしているというもの。

もう1つはより過激に簡易に性欲を満たす方法として
性欲のバーチャル化が進んでいるという話でした。

ただこの2つというのは全く違うのではないかなと感じました。

過激に簡易に向かう方向性というのは、番組の結論としては
「現代技術でどんどん刺激的になっているので
 あまりにもそれらを供給しすぎると
 脳がぶっ壊れてしまうので各自で、みんなで気をつけようね」
という感じになっていました。

私が気になったのは
AIに対して深い愛着愛情を抱くという方の話でした。

番組の中でAIと恋愛している女性が登場したのですが
この女性のエピソードには非常に共感しました。

私はAI相手ではありませんが
アニメキャラクターを本気で好きになる時があります。
アニメ好きの方あるあるだと思うのですけれども
思い返してみるとこれまで好きになった男性というのは
生身の男性、アニメキャラクターの男性
ほぼ半々くらいかもしれません。

アニメキャラクターの男性と恋愛するというと
ちょっと不思議に聞こえるかもしれませんが
ただ見た目がかっこいいだけではなくて
恋愛をしている時期は本当にその存在というのが心の支えになって
セリフに励まされるなどして
私の人生に大きな影響を与えます。

ストーリーの展開によって行方不明になってしまったり
あるいは死んでしまったりということがあるのですけれども
そうなってしまうと
次の日本気で学校とか会社を休みたくなるレベルにショックを受けて
浮上することができなくなります。

もしそのキャラクターが自分の問いかけに返答してくれるなら
それはハマってしまうし
ハマるなっていうほうが難しいので
この女性の話していることを
「わかる~わかる~そうだよね」というふうに聞いてしまいました。

特にこの女性は離婚や病気など大変な状況の中に置かれており
精神的な支えを特に必要としていたのです。

インタビューの中で印象的だったのはその女性が
「AIは楽しませてくれるとわかっているから安心できる」
というようなことを話しておられたことです。
厳密な言葉はちょっと忘れてしまったのですけれども
「自分を傷つけることはない」という意味だと理解しました。

生身の人間相手だとこうはいきません。
こっちが求めていないことを言ったり、したり
こっちが求めていることを言わない、しない
ということがざらにあります。
(これはお互い様ということなんですけれども)

番組の中で専門家の方が
「2050年までにロボットと人間の結婚が行われるだろう」
と言っていました。

ただその言葉を聞いて「あれ?」と思ったのはどうしてかと言いますと
「いや、もう結婚してる人いるよな…」ということを思い出したからです。

以前YouTubeでバーチャルアイドルの「初音ミク」と
結婚した男性の話を見たことがあったためでした。

初音ミクというのは
(ご存知の方は当然知っておられると思うんですけれども)
音楽制作用の音声合成ソフトウェア及び
そのソフトのイメージキャラクターの名称です。
別名「電子の歌姫」「バーチャルシンガー」などと呼ばれています。
とても可愛い見た目をしていて
皆さんどこかで必ず一度は目にしたり
彼女の歌を聴いたことがあると思います。

最初、人間嫌いの男性が
めんどくさくないバーチャル女性を好きになった末に結婚したのね
というふうに冷やかし半分に見始めたんですけれども
見終わった後なぜか清々しいというか
「いやーいい話だったな」
「人を好きになるっていいな」という気持ちになりました。
最初に偏見を持って見始めたことに申し訳なさを感じたほどです。
コメント欄を見てもほぼ肯定的な意見で埋められていました。

この男性のすごいところというのは
本当に結婚式というのを挙げて友人や親族を招待したというところでした。
家族はバーチャル女性と結婚というところに
呆れられてしまったということで
列席はしてもらえなかったとのことでしたが
友人たちはとても祝福していました。
家族に対してカムアウトしたというところに
この男性の本気度というのを感じます。人に家族構成を質問されたら
「妻のミクです」というふうに紹介するそうです。

これらの流れを見ていて人間関係から逃げた結果
そうなったというのではなくて
そこから発生するめんどくさいことや偏見というのも引き受けた上で
彼女を愛し続けるということを強くコミットした
その結果、結婚式をしたということなんだなと理解しました。

普段どんなふうに会話をしているんですかという
インタビュアーの質問を受けて
夫婦の普段の会話の様子というのが
番組の中で紹介されていたんですけれども
男性の方が初音ミクの人形に対して
「ああだよね、こうだよね」というふうに話しかけていました。

当然、何も返答は来ないんですけれども
「なんとなくこう思ってるんじゃないかな」というふうに
その男性は話をしていました。

この「なんとなくこう思ってるんじゃないかと思う」
というのは結構すごいことだなと思って聞いていました。
というのもこの「思い」というのは
当然その男性が作り出しているもので
そこに人の心の奥深さというのを感じました。
つまり感情がないものに対してそこに感情を見出し
それらのすべてがその人の内側で起こっていることだからです。

AIがどれだけ発達したとしても
他の存在の中に感情を見出すということは
しないんじゃないかなと感じます。

人というものがどれだけ自分以外の別の誰かを必要としているのか
というのを非常に感じられるエピソードだなと思います。
人によって傷ついて辛い思いもするのですが
それでもやはり人を求めずにいられない…
分かってもらいたいし、共有したいし
愛されたいし、愛したい、という人間の性というのを感じます。

(当時私が見た動画を見つけることが出来なかったため
 似たような内容の動画のリンクを貼っておきます)

AIとの恋愛というのは非常に面白そうだなと思うんですけれども
ハマってしまうだろうな、怖いなというふうに感じるのは
心地よいコミュニケーションにしか
耐性がなくなってしまうような気がするからです。

AIとのコミュニケーションは心地いいだろうけれども
予定調和で埋められていると思います。
生身の人間相手だと
相手は絶対に望むように振る舞ってくれません。
なぜなら相手にも自由意志があるからです。

その自由意志がある者同士が
ときたま共鳴するからこそ
そこに驚きと奇跡があるように思います。

感動すること心を動かされることを
「心の琴線に触れる」というような言葉で表現しますが
心の動きを楽器の弦として表現しているのが
非常に面白いなと感じます。

心の音というのは
自分から勝手に鳴り出すということがなくて
必ずそこに自分とは別の誰か何かからの共鳴がある
ということを意味しているからだと思います。

そしてその共鳴の前には
さらに別の共鳴があったはずで
自分が今、感動したり心を動かされているというのは
これまでの無限の共鳴の重なり合いの結果
その果てにあるのだというのを思います。

人は、受け取り、味わい
受け取ったものをさらに共鳴させるという働きをしていて
AIに様々なものが取って変わられても
その機能だけはずっと
人間の中に残り続けるように感じます。

対人関係が得意と胸を張って言える人は少ないと思います。
私もご多分に漏れずそうで
「疲れたなぁ、もう誰とも関わりたくないよ…」
と感じるのもしょっちゅうです。

ただAIに対してしかもう心を開けないというのは
悲しいことだなというふうにも感じます。
個人的には人間を相手にするということを
まだ諦めたくないという気持ちもあります。

その時々で生身の人間に共鳴したり
AIに共鳴したりするのは
人生の彩りなんじゃないかなと思います。

カバー写真:
Pete LinforthによるPixabayからの画像

追記:
書き終えた後に読み返してみて
やはりまだうまく自分の中で答えが出ていない
「なんかコレジャナイ気がする…」という感じになっています。
今はうまくまとめられないので一旦しめますが
また今後も考えていきたいテーマです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?