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力をぬくこと
今週、藤井風さんが出演しているCMが公開されました。
ミネラルウォーターのい・ろ・は・すのCMです。
風さんが、芝生の上で前転したり、走ったり、服のまま水に飛び込んだりと
動きはやんちゃ坊主な感じなんですけれども、一方で
歌っている横顔は凛々しいというか包容力があるというか
可愛いんだか、かっこいいんだかという感じで
とても素敵なCMになっていました。
私は寝起きがすごく悪くて機嫌が悪くなってしまうんですけれども
朝イチにこのCMを見てから一日を始めるようになりました。
なんだかちょっといい感じ、になります。
風さんが湖に走っていて飛び込んで
その後、水の上に大の字で浮かんでいるシーンというのがあります。
この時に綺麗に水に浮かんでいるので
さすがでいらっしゃると思いました。
水に浮かぶというのは、特に服を着たまま浮かぶというのは
かなり難しいとされているからです。
自然の水(湖や海)でそれをやるというのも
さらに難しいことになります。
水での事故を少しでも減らそうと
最近では小学生のお子さん向けに
服のまま水に落ちてしまった時のための対処法についての
レクチャーが開催されていたりするくらい
コツと慣れがいるためです。
そのコツとは
体の力をぬき切ること、完全に脱力することと言われています。
私は海でレクチャーを受けたことがあります。
その時は水着だったんですけれども
それでもすごく難しくて全然浮かぶことができませんでした。
服を着ていたらもっと厄介と言いますのは
服が水を含んでどんどん重くなっていってしまうことです。
また、体に布がはりついて動きが奪われてしまうというところにあります。
水に浮かぼうとすると
まず体の中の力みがあるところから沈もうとするという特徴があります。
力みがあるということは
つまり恐怖を感じているということになります。
恐怖を感じると体が
逃げるか戦うかというモードになるからです 。
私がレクチャーを受けたのは
旅先でホエールウォッチングをした時で
合間の時間に教えてもらいました。
教えてくれた方というのは
鯨が人間になったらこんな感じかなという雰囲気の
大柄で優しい目の方だったんですけれども
「こんな感じね」と言って
本当に浮きのようにぷかぷか浮いていらっしゃって
3、4人が腕につかまっても全然平気という感じでした。
そのとき言われたのは
「水を信頼するんだよ」「海を信頼するんだよ」ということでした。
(なんだか武術の極意のように聞こえるんですけれども)
頭ではわかっていてもそう簡単に体から恐怖というのは抜けません。
背後に支えるものがないという状況に
反射的に恐怖を感じるためですし
あとは、やはり水は怖いという感覚が
細胞レベルに染み込んでいるからというのもあると思います。
そのため浮かぼうとしても
オタオタとしてしまって
どんどん沈んでいくというふうになってしまいました。
水に浮くということは
自分ではないものに委ねる感覚に繋がっているのではないかなと感じます。なので自力で頑張りすぎてしまうタイプの方というのは
おそらく水に浮くのも苦手なのではないでしょうか。
「私は甘え上手だから他力なタイプだ」
と思っている方がいらっしゃったとしても
もしその甘えというのが
相手を裏からコントロールしようとしているという意図がある場合
結局それは自力と変わりないということになると思います。
完全に信頼して任せてしまえるか
自分のコントロールを手放せるかというところが
「委ねる」ということだと思います。
湖に心地よさそうに浮かんでいる風さんから
水や、ひいては自分を取り巻く世界を信頼している
という感じが伝わってきて
本当にリラックスしているのだなという感じがして
映像を見る人の心も解いてくれるのかなと思います。
風さんは水に浮かんでいるのですけれども
私はこの方の魅力に沈もうと思います。
カバー写真:UnsplashのHaley Phelpsが撮影した写真