令和のシティーハンターとホワイト化社会
4月末からNetflixで『シティ・ハンター』の実写版が公開されています。
俳優の鈴木亮平さんが冴羽獠を演じておられます。
日本の週間トップ10の映画部門で1位を獲得したほか
非英語映画の週間グローバルトップ10でも
初登場1位を記録したとのことです。
『シティ・ハンター』は
ジャッキー・チェン主演で香港で実写化されたほか
フランスでも実写化されていますが、日本では初とのことでした。
Youtubeで予告編がたくさん出ていて
鈴木亮平さんが冴羽獠にしか見えないくらいに
原作から抜け出してきたみたいだなと思ったので
ぜひとも見てみなければと思ってチェックしてみました。
意外だったのは時代設定を現代に合わせているという点でした。
てっきり連載やアニメ当時の年代のままかなと思っていたためです。
なので、スマホ、GPS、instagram
インターネットカフェなどが出てきます。
けれども依頼のやり方は新宿駅の掲示板に
「XYZ」と書くやり方のままになっていまして
スマホが出てきたので QRコードを読み込んで
LINEでやり取りするとかだったら嫌だなと思っていたので
その描写が残っていたのは良かったなと思いました。
冴羽獠といえば、綺麗でグラマラスな女性にデレデレ
下ネタギャグを連発したかと思うと
次の瞬間ずっと冷静かつハードボイルドな
スナイパーの側面を見せるところが魅力かなと思います。
この切り替えというのが
漫画のテンポだからできることと思っていたんですけれども
そのノリがしっかりと再現されていまして
鈴木亮平さんの表情や佇まいの切り替えがすごいなぁと感じました。
ご存知の方わかると思うんですけれども
オリジナルでは結構下ネタ要素が強めです。
アニメが放送されていた頃
私が住む地域では夕方の時間帯に放送されていました。
ちょっと大人っぽい作品だと思うので
今となってみればその時間帯の地上波に放送されるというのは
ちょっと考えにくいかなと思います。
私の母は当時フルタイムで勤めていたんですけれども
ある日たまたま休みの日に
一緒に『シティ・ハンター』を見たということがありました。
母がふと「あんた、これ意味わかるの?」と聞いてきたので
なんと返答したのか ちょっと忘れてしまったんですけれども
当時の私は「私、わかってるわ」と思って見ていたので
「わかってるわよ、当然でしょう?」というような反応をしたと思います。
今思い返すと全くわかっていなかったわけですから
当時の私めちゃくちゃ可愛いなと思うんですけれども
それに対して母は「そう」と言い苦笑いしただけで
それ以上何も言い ませんでした。
今思い返せばその反応はありがたかったなと思っています。
「わかってるわけないじゃん」と頭ごなしに否定されても
「こんなアニメ見ちゃダメ」と禁止されても
変に歪んでしまっていただろうなと思います。
今みたいにコンプライアンスやポリコレが
叫ばれていなかった時代の話です。
今回実写化するにあたって
下ネタとかギャグの分量というのを
現代に合わせて調整した とのことです。
というのもオリジナルと同じくらいやってしまうと
今の時代では過剰になるとの判断があったからとのことです。
私は観ていて
「これくらい下ネタ要素がないと『シティー・ハンター』じゃないよね」
と思っていたし
今回の実写で十分にそこは楽しんだと思ったのですが
実は調整が入っていたんだというのを後で知り
自分の感覚がいつの間にか変化していたということに気づかされました。
以前、岡田俊夫さんのYouTubeで
ホワイト化社会について話されていた回を思い出しました。
ホワイト化社会とは
働き方や倫理観、価値観すべてが浄化し
綺麗な状態になっていく社会 とのことです。
芸能人の不倫や不祥事などが
今どんどん表に出てきているかと思いますが
一昔前は「仕方ない、そういうものだからっ」と蓋をされてきたものが
どんどん隠しきれなくなって
表に出てきている流れもその一環だとのことです。
一見いいことのように聞こえるんですけれども
岡田さん曰く「清潔が正義の見た目至上主義社会」であるとのことでした。
つまり、綺麗であれば正しく、汚ければ正しくないということです。
そのため「汚いけれど良いもの」というのは
ホワイト社会では成立しないとのことです。
例えば、汚いけれど美味しい定食屋さんとか
口が悪いけれど中身はいい人というものが
ホワイト社会では認められないということです。
岡田さんの視聴者からの投稿で
10数年来ルパンの次元のファンという女性から
ホワイト化社会についての体験のお便りがありそれがとても印象的でした。その方が『カリオストロの城』を見ていた時に
次元がタバコをポイ捨てするシーンがありその時に
「あ、ポイ捨てした」と思って
そう思った自分に驚いたというような内容でした。
その方は次元の長年のファンで
かつタバコを捨てるというのは
いよいよ仕事に取り掛かるという合図だと分かっているのに
「あ、ポイ捨て」と思ってしまったということです。
タバコのポイ捨てがいいとか
明らかな不正を「慣習だから仕方ないよね」というふうに
なあなあに済ませてきた時代が良いとは思いません 。
社会のあり方に苦しんできた人たちが
少しずつ勇気を出して声を上げてきたことで
徐々に変わってきたという面があるからです 。
全体として住みよい社会へと向かっていると思われます。
ただカオスなものに対する耐性が減ってきている
というとも言える気がしますし
より見た目とかパッケージングに引っ張られやすい
世の中になっているということだと思います。
ただそのパッケージングというのを
上手に逆手に取るということもできるのだと思います。
Youtube で鈴木亮平さん自らが振り付けをしたという
冴羽獠のもっこりダンスのシーンがあります
リンクを貼っておきますので疲れた時にぜひ見てみてください
元気になると思います。
Youtube のコメント欄に「変態のオスカー賞」と書いている方がおられて
ちょっと笑ってしまったんですけれども
一方で「上品」とか「美しい」というコメントを書いておられる方も
ちらほらおられたのが印象的でした。
確かに鈴木亮平さんの体のラインが本当に綺麗なので
安心してみれるという面があるなと思いました。
「美しい」というパッケージングをすることの効果を感じる例が
他にもありまして
一昔前だと性とかセクシュアルのことを
おおっぴらに人前で話すということは
控える傾向があったかなと思うんですですけれども
あえてそのタブーを破って
思いきって性についての発信をしておられる女性が
今、何名も出てきておられるかなと思います。
まだまだ非常に勇気や
あるいはその方の志がないとできないことだと思いますが
そういう方がおられてすごいなと感じます。
その方たちが写真など見せ方に
非常に気を使うというふうに聞いたことがあります。
美しく、特に何よりも気品を漂わせるということを
かなり意識しておられるとのことです。
美しく気品があるということによって
多くの人に自分の話に耳を傾けてもらうことが
できるようになるからとのことです。
また、心ないことを言ってくる人のエネルギーを跳ね返す
という効果もあるそうです。
令和時代は見た目の美しさというのが
鎧にもなり得るのだと思います。
などなどいろいろなことを考えながら
実写版の『シティ・ハンター』を楽しませてもらいました。
漫画、アニメのファンの方はすでにチェック済みかもしれませんが
もあまり知らないという方も
興味のある方はぜひ観てみてください。
エンディングに「Get Wild」が流れてきた時は
非常に感慨深い気持ちになりました。
私はとっくに冴羽獠の年齢を超えてしまったのですけれども
彼は永遠にかっこいい兄貴だなと感じました。
カバー写真:Prithpal BhatiaによるPixabayからの画像