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ギョーシェ彫り編【時計ブログ】

クロノスイスのDNA、ギョーシェ彫り

クロノスイスは伝統的な手法による時計作りを復活させるために、スイスのルツェルンに文字盤の装飾仕上げ用エナメル焼成装置や、ギョーシェ模様を施す古い工作機械などを取り揃えたアトリエを持っています。

まずは、クロノスイスのアトリエにて手間と時間を惜しみなく注ぎ込み、手作業で製作されるギョーシェ文字盤の製作をご覧ください。

今回はレギュレーターダイヤル、七宝焼、スケルトン装飾などと並び、
クロノスイスの時計に欠かせない特長のひとつ、ギョーシェ彫についてお話しします。

◆ギョーシェ:Guilloche

文字盤に美しく高級感あふれる画期的なデザインを施す手法は、18世紀にアブラハム=ルイ・ブレゲ(1747-1823)によって発明されました。

アブラハム=ルイ・ブレゲ(1747-1823)

時計の歴史を200年早めたとも言われる、あの天才時計師のブレゲです。
スイスに生まれ、パリでその才能を開花したブレゲは、現在の時計に用いられている自動巻機構やトゥールビヨン脱進機など複雑機構の大半を発明あるいは改良した人物として知られていますが、高度な機構のみならず、デザインにも大きな関心を払い、ブレゲ針、ブレゲ数字、ギョーシェ彫といった斬新な「ブレゲ・スタイル」を創始しました。

◆ギョーシェはフランス語

金属の表面に直線や曲線を刻んでさまざまな装飾模様を施す彫金技法のひとつで、この作業には特殊なギョーシェマシンと呼ばれる手動旋盤が用いられます
一例として、金属板に平行線を一定の間隔で刻み、それから90度回転させて同じ作業を行うと、交錯した線と線の間に微小な正方形の突型模様が出来上がります。
この組み合わせを変化させることで何通りもの多彩な装飾パターンが誕生します。
またギョーシェは文字盤に繊細で美しい幾何学模様を描くだけでなく、表面に施されたその微細な凹凸が光線を拡散させ、文字盤自体の反射を抑え、視認性を高めるという効果も備えています。

◆クロノスイスのギョーシェ彫

現在では、機械を使った文字盤加工や、型押しで装飾を施した時計も多く見受けられますが、高級時計と呼ばれる時計ブランドの中には、熟練した職人が昔ながらの工作機械を使い、一つ一つ手作業でギョーシェ模様を施しています。
クロノスイスのアトリエでは、およそ100年前の古いギョーシェマシンを継承し、”アーティスト”と呼ばれる熟練の職人が、模様に合わせて曲線専用のギョーシェマシンと直線専用のギョーシェマシンを使い分けて、ギョーシェ彫を施しています。

製作には高度な技術と繊細な作業が必要なため、1日に完成する文字盤の枚数はわずか3〜4枚ほど。

100年の時を経て継承されている手動旋盤

手間と時間を惜しみなく注ぎ込み、手作業で製作されるギョーシェ文字盤の貴重さがお分かりいただけると思います。

◆ギョーシェ彫あれこれ

現代では生産効率とコスト削減のために金型を使用した型押し、オートメーションで装飾を掘り込むのが主流です。
文字盤にギョーシェ装飾を施した時計が、手頃な価格で販売されていますが、それは本来の手作業とは異なる、ギョーシェ装飾を施した時計が、手頃な価格で販売されていますが、それは本来の手作業とは異なるギョーシェ風デザインの時計です。

伝統的なギョーシェ彫りは、現存数が少ないアンティークの手動旋盤を使い、熟練した技術を習得した職人が手作業で行うため量産が難しいため、ごく一部の高級時計に作業されているにすぎません。
文字盤やムーブメントに施される、緻密で美しいギョーシェ模様の太さは、わずか0.2ミリという極細の線が集まり、約0.1ミリの深さの連続模様が掘り込まれていきます。

またギョーシェ彫りには、さまざまな種類が存在します。
代表的なものでは、鋲打ち模様のクル・ド・パリ
石畳のようなパヴェ・ド・パリ、太陽光線のようなソレイユ
麦の穂のようなバーリーコーン、波模様のヴァーグ、市松模様のダミエ
炎のようなフラメなど。

◆クロノスイスのギョーシェ模様が施された時計

●レギュレーター マニュファクチュール

CH-1241.1R

文字盤中央から外側に向かって放射線状に彫られている模様と、インダイヤルに彫られた模様と二種類のギョーシェ彫が施されています。

●フライング グランド レギュレーター

CH-6723-BLBL

ガルバニックコーディングされた立体的な3Dダイヤルに、幾何学模様のギョーシェパターンが施されています。

●オープンギア レ・セック カメレオン

CH-6923-PABK

職人によるハンドメイドのギョーシェ模様に、CVDナノコーティングを組み合わせることで、カメレオンのように多色に変化する美しいダイヤルデザイン。

●スペースタイマー ムーンウォーク

CH-9343.2-GRBL

宇宙飛行士の月面ステップをイメージした、クロノスイス独自のギョーシェ装飾が施されています。

熟練した職人によって手作業で仕上げられたギョーシェ文字盤は、時計に感動的な輝きを与えてくれます。
ギョーシェ彫りの職人は、一世紀近く前の古い手動旋盤を自在に操り、最新のガルバニック文字盤や透明感のあるエナメル文字盤に放射状の美しい連続模様や幾何学模様を施します。
こうした緻密で繊細な作業を行える職人は、現在クロノスイスの職人を含めて世界でもごくわずかです。

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ブログ著者:菅野たけし

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