【超探偵事件簿レインコード】を遊んだ超高校級のサスペンスADV好き的【感想】
超探偵事件簿レインコードはダンガンロンパシリーズで知られる、小高和剛によるサスペンスADV、ダンガンロンパとの世界観のつながりなどは無いがゲームの構成やシステムは極めて類似しており、精神的続編、あるいは兄弟作とも呼べる。
【作品の概要】
作品の舞台となるのは振り止まない雨に包まれた街「カナイ区」。そこは真実の覆い隠される街。大企業アマテラス社によって実質的に支配され、街の住民はカナイ区から出ることは許されず、起こった事件やトラブルは警察などの国家権力よりも強い力を持った保安部に握り潰され、真実は雨の中に消えてしまうのだ。
そんなアマテラス社と相対するのは世界探偵機構、「未解決事件の撲滅」をモットーに掲げ、探偵特殊能力と呼ばれる超常的な能力を駆使し事件を解決する超探偵達が所属する組織。かくして、鎖国されたカナイ区に様々な方法で集まった超探偵達はカナイ区唯一の探偵、ヤコウ・フーリオの取り仕切る夜行探偵事務所へと集結するのであった。
主人公ユーマ・ココヘッドもその一人、のはずだった。が、彼は記憶喪失xなぜか死神憑かれているという属性てんこ盛りの状態でそもそも自分が探偵かどうかもわからないまま、事件に巻き込まれながらも自身の記憶の真実を探るため、「死神ちゃん」と共に夜行探偵事務所に転がり込み。
アマテラス社との真実を明らかにするための戦いへ身を投じていく。
ゲームのテーマは「真実」、保安部により未解決や冤罪として闇に葬られる事件の数々を解き明かしていく。
ゲームの構成は日常パートから事件発生、そして調査パート、最後に謎迷宮となっている。この謎迷宮がダンガンロンパの学級裁判にあたるものでいわゆる解決編。
迷宮入りしそうな事件が異空間にまんま迷宮として顕現し、ユーマと死神ちゃんはその迷宮の奥にある真実目指して突き進む。ノンストップ議論では「コトダマ」を武器に嘘を打ち抜き真実を明らかにしていた、このレインコードでは「推理デスマッチ」によって論戦を繰り広げる。
現実世界で真実を隠蔽しようとする黒幕や真犯人が迷宮の魔物、「謎怪人」として立ち塞がり、ユーマは解刀(かいとう)で嘘を切り裂く。その他の選択問題やアナグラム。推理フィナーレなども揃っており、ほぼほぼ学級裁判の機能が置き換わっている。
ちなみに今回一部ネタバレありです。途中でネタバレありゾーンになるので(ちゃんと入る前に注意だすよ!)後で遊ぶ予定がある人はそこで引き返して遊んでから来てね。
【好きだったとこ】
・プロローグとなる「アマテラス急行殺人事件」の圧倒的クオリティ
物語の0章、「アマテラス急行殺人事件」のサスペンスとして、ゲームのつかみとして、物語の立ち上がりとしてとにかくクオリティが高い、面白い!
駅の遺留物倉庫で記憶喪失状態で目が覚めた主人公ユーマは、ポケットに入っていたカナイ区へ迎えと言う世界探偵機構からの指令書と、カナイ区への特急列車の切符を記憶への唯一の手がかりとして列車に乗り込む。
列車の中にすでに集まっていた超探偵達と合流し、ユーマを含め合計6人の超探偵が揃った。そして告げられる、「自動運転で他に乗客も乗員もいないこと」、「目的地であるカナイ区までは停車もしなければドアも窓も開かないこと」、「ユーマのことは誰も知らないこと」、「そしてここに集まる予定だった超探偵の人数は5人であること」。ドアが閉まり、最新型の特急列車は静かに、だが確実に真実の葬られる街、カナイ区へと旅立つのだった…
舞台設定から面白そうすぎるな。もう、この事件が一番面白かったまである。圧倒的トリックや怒涛の展開の連続、セオリーの否定、そして推理とサスペンスとして文句のない謎・謎・謎。そしてこれからユーマが身を投じていくアマテラス社との真実を賭けた戦いの幕開けにもふさわしい。ここだけ体験版とか出てるのかな?買って詰んでる人も0章までとりあえず遊んでほしい。一気に引き込まれる。
・キャラがいいのと(仲間に無能がいない)
仲間に態度悪い奴いたり、身勝手な奴がいたりで展開が悪い方向に進むとこう…プレイヤーはストレスを感じるわけで、後からそいつの活躍シーンを作るための前振りだったり場合もあるけどそう言う仲間内の揉め事とか足の引っ張り合いが個人的にかなり好きくないのだ。
この作品はなんと言っても仲間のキャラは皆世界トップクラスの超探偵。一癖二癖もあるメンバーだがみんな頼りになるし好感のもてるキャラ作りになっている。記憶喪失の主人公は探偵としてはまだ半人前。「すぐ人に頼る癖がある」と言われる主人公だが、主人公自身も無能ではない。各章の事件ごとに順番に探偵事務所の超探偵とバディで事件を捜査していくのだが皆一様に好感が持てるし個性を活かした活躍シーンもあって大満足。
・謎迷宮のタイマン感
これはダンガンロンパと比較して良かった部分。
学級裁判のように真犯人も仲間も容疑者も全員で裁判に臨むカオスな良さとはまた違い。謎迷宮の主人である黒幕と主人公タッグのユーマと死神ちゃんの基本タイマン(一応その章バディだった超探偵がアドバイザー的な感じで同行するが)。乱闘では味わえなかった一対一の推理バトルが熱かった。
・バディものとして
主人公ユーマと彼に憑く死神ちゃんのタッグがいい!この二人の信頼関係の構築から二人のラストシーンまで、お約束の流れの変遷などがとってもいい。死神ちゃんは別にワトソン役ではないのだが、賑やかし、相談役として愉快なキャラでとっても良かった。
・小ネタが楽しい
・カナイ区の雰囲気
好きな部分はこの辺かな。後は全体的な評価としても遊んで損のない良ゲーです。
サスペンスADVが好きな人、特にダンガンロンパシリーズファンは絶対に楽しめる。おすすめです。
以下ネタバレ注意
【人を選ぶ要素】
・ミステリーとして杜撰な事件
ダンガンロンパは完全に身内の誰かが犯人という緊迫感があったが、レインコードは0章を除き各章のゲストキャラが事件を巻き起こしそれを解決するという仕組み上、容疑者はその中にしぼられる(逆転裁判みたいな感じやね)。が、しかし「水没した街の逃げ場のない屋上の殺人事件」で容疑者に水泳の達人がいて真実もそいつが泳いで逃げた(えぇ?)だし、作中でそこそこ重要そうな組織のトップがその部下に暗殺される事件なのにもかかわらず動機が金(えぇ?)。
これはおそらく章ごとでハウダニット(どうやって殺したか)、ワイダニット(なぜ殺したか)、フーダニット(誰が殺したか)と方法、動機、犯人などのいずれか一点をメインとしているからだと思われる。
が、しかし、ハウダニット(方法)がメインの事件では動機と犯人がガバガバだったりとなんというか中核以外の部分が杜撰なことが多い。
もちろん中核となる部分は深い謎に覆われていて解き明かしていく快感はあるのだが解き明かして方法、動機、犯人と一連で見たときの釈然としなさはあるなと。全項目で述べた0章のみが全てを謎として提供してくれてクソおもろかったです。後は4章もそのけがあったけどあんな重要なことした割に事件全体の流れがあっさりしすぎじゃない…?
・オチのトリックから逆算して作ってそうなご都合主義
血の色とか、これ思いついたからレインコード作ったんちゃうの?
確かに出てきた時は「そんなのアリかよ!」てビビったけどさ。そういうゲーム内でそもそもの土台や設定となっていた部分がトリックになっているとシナリオが根底から覆されるような、いわゆるどんでん返しな刺激的な驚きが得られるわけだけど、これは設定でもゲームの土台でもなく仕様じゃん…と不満が湧いてくる。まあ設定のどんでん返しとかはやり尽くされたから仕様でもやってもいいかもしれない。間違いなくすごいことだしビビったけど賛否両論ではとも思う。俺も面白かったなって気持ちとアリかぁ?って気持ちが半々だ。後ダンガンロンパ遊んでないやつどうすんねん。
・謎迷宮のタイマン感と仲間の出番
いいとこもあれば悪いところもある、良くも悪くもタイマンな謎迷宮。ダンガンロンパのような黒幕を特定した後生き残った仲間と一緒に真実目指す共闘感良かったよな。それがなかった。ただそれがなかったのは不満じゃない。
最終章、探偵事務所で仲間の超探偵達と一緒に気を失ったユーマ、目が覚めるとユーマの他には死神ちゃんとヒロインしかおらず、他の超探偵は行方不明、みんなを探そうと探索を始めるも次第に事件の中核となる謎に迫り…黒幕と直接対決へ、そして見事解決。これまでバディを組んできた仲間達はみんな別室に軟禁されてて出た頃には主人公が全部解決してました。いやいやいや、何それ。えぇ?めっちゃ愛着が湧くしいい性格してる魅力的な仲間達だったのに、みんなの探偵特殊能力を活かして段階的に窮地に駆けつけ救って最後は主人公の手で真実を掴むとかでええやん。まさかの最終章で出番なしの仲間達…
・クライマックスがない
最終章は確かに驚愕の真実が待っていた刺激的な結末ではあったのだが、謎が段階的に解きほぐされていくが故に、物語の最高潮がない。ジェットコースターを期待しているのになんだか平坦だった。ダンガンロンパ2とか絶対絶望少女とか特別なカットインでとどめのロンパしてたじゃん。まじでぬるっと謎が解けて終わった。もったいない。
・QTE
いらん。受動的になりがちなテキストアドベンチャーにおいてプレイヤーに能動的なゲーム体験を与えようとする涙ぐましい努力。普通にいらない。テンポ感も損なうしそこそこむずいのもあるし。つけるならこれもトリックに使ってくれや。一応ラスボスので切り合いのシーンは熱い感じで楽しめて良かった。QTEのコマンドを剣で切り裂く演出があったから演出的な意味はあったか。ただそれだけじゃあなぁ…
・ロードが長い
tipsが多くて面白かったから俺は許した。
・真犯人を殺しまくってたことに納得がいかない
序盤から主人公が謎迷宮で解決した真実の真犯人は代償と死ぬというわけわからん設定があった。しかも、謎迷宮の事件の解決は異世界で行っているため現実では意味がない。そのため現実世界に戻った主人公ユーマが解き明かした謎の推理を華麗に披露し、事件をもみ消しにきたアマテラス社保安部をギャフンとさせ、見事解決!ではなく。謎迷宮内で魂を奪い殺した真犯人の死体に死神ちゃんが取り憑いて私が殺しましたと自白。そして真犯人はいつも突然死。保安部はどんな手を使ったのか知らんが覚えておけよ!と退散。それを見たヒロインや探偵仲間は「よくわからないけどユーマが解決してくれたんだよな?すげーじゃねぇか」と褒めてくる。いや納得いかないだろ、すっきりしないし。そしてこの真犯人を殺す設定もここまで不自然なことするんだから何かでかい最終的なトリックに関わるんだろうなと思ったらなんもなかった。嘘だろ。ダンガンロンパのオシオキみたいなバイオレンスかつファニーな世界観を出したかったの知らんけどアンマッチすぎる。これが何よりひどいと思う。
・DLC高すぎ
内容は死ぬほどいい。特に本編でヴィヴィアがヤコウへに格別の信頼を寄せていた理由の伺えるエピソードやヤコウの過去編など、探偵モノに欠かせないハードボイルドな灰色の人情味が溢れているいいエピソードだった。
が高すぎ、全部遊んで90分くらいなのに2500円くらいした。セールで買ったからもっと安かったけどもボリュームがクリア後のおまけレベル。数千円とるならもっとボリューム出してくれよ。
【感じたこと】
否定的なことばかり書いていたようだけどトータル良作です。ただ個人的にはダンガンロンパ の方が楽しめたかな。ロンパ未プレイならレインコードより論破やったほうがいいかも。ただ物語の終わり良ければ全てよしなエピローグとヤコウ・フーリオとかいう子安武人演じるスーパーいい男を生み出し功績は大きい。全然面白いゲームなのでダンガンロンパ遊んでプレイしたことないなら絶対やったほうがいいと思う。
あとヴィヴィア・トワイライト、好きすぎる。やる気がない奴が本気出すシーンっていいよね。エピローグの鞄に詰まってるとこいいよね。デスヒコの悪友感とかハララの頼れる先輩感、夜行の理想の上司感、フブキはおっぱいがデカいしキャラの魅力はめちゃくちゃある。死神ちゃんとの別れとか、一緒に迷宮入りするところとか。お約束のパターンの変化が二人の信頼関係の変化の描写になっててとっても良かった。
【終わりに】
小高さんと打越さん共同開発の新作が近いうちに発表されるそうな。
正直ワールズエンドクラブで肩透かしくらいまくってるから期待しすぎは禁物かなと。二人とも独自の個性を持った最高のクリエイターだけど方向性がかなり違うから船頭多くしてなんとやらにならないか心配です。
ではいえ死ぬほど楽しみでもある。とんでもないサスペンスが生まれたらどうしようね。
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