【シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】一芸でもあれば良ゲー、ゲームにおける強みと独自性について【ネタバレ有感想】
・シークレットゲーム-KILLER QUEEN-はFLAT制作の同人ゲームの移植版。
閉鎖空間で拉致されてきた老若男女が命をかけた殺し合いを強要される王道デスゲームもの
・遊んだのはswitch版、プレイ時間は10時間ちょい
・ちなみにプロデューサーは以前プレイしたルートダブルの中澤工、プレイの目当てときっかけはこのネームバリューからだった
作品の概要と所感
・主人公、御剣総一は学校帰りに意識を失い、見覚えのない一室で目を覚ます。首には謎の首輪がはめられ、そばには見覚えのないタブレット端末が落ちている。目的はタブレット端末に表記された指令を達成し首輪を外すこと。さもなくば死。そして同じ境遇の計13人の参加者たち…対立や協力を繰り返しながら生き残りをかけてゲームあらがっていく。そんなストーリー
・また、ストーリーには4つのルートがありパラレル的に並行する4回のゲームをクリアすることで最終的に真エンドを迎えることになる。
前回ルートでのヒロインが最序盤で殺害されたり、敵対していたキャラがヒロインとしてエンドを迎えたりと変化が楽しめるストーリーとなっている。
・正直ゲーム面においては凡作というか、同系統ジャンルのゲームの中でも優先して遊ぶべき傑作というほどではない。
・が、後述する真エンドに至る演出の独自性が高く。一本取られた気持ちとこれが見られるならここまで遊んでよかったという満足感がゲーム自体の魅力の半分以上を占めているように感じた。
・とはいえダンガンロンパや極限脱出シリーズが未プレイでデスゲームものが遊びたいという人にこれから遊んでというほどではないが…
好きだったところ
秀逸かつオシャレなルール
・プレイヤーの首輪解除条件はそれぞれに配布されたタブレット端末によって異なり、13人のタブレットはそれぞれエースからキングまでのトランプカードを模しており、それによって勝利条件が定められているのだ。
・「解除済みの首輪を五つあつめろ」という協力プレイでも敵対プレイでもどちらでもいける指令や。「クイーンの持ち主を殺せ」という離反確実なルールなど、このカードによってプレイヤーの思惑は混沌とせめぎあう。
また、カードを偽証できるジョーカー端末も存在しており、この存在により、協力的司令を与えられていると詐称してプレイヤーに協力をもちかけ好意的なポーズを見せるプレイも可能になり、簡単には相手を信用できない状況を作り出している。ゲーム中盤で明かされる設定だが、このデスゲームは悪趣味な金持ちVIPに対しての興行であり、トランプごとのミッションは参加者の性格や境遇を分析したうえで、見世物として面白くなるよう振り分けられている。
・また、舞台となるのは六階建ての殺し合い専用ビル(なにそれ?)プレイヤーは制限時間である72時間以内での首輪の解除を目指すと同時に、6時間毎に下から進入禁止となるフロアを6階を目指し進んでいかなければならない。その中には武器のある部屋やグループを分断させる罠なども仕掛けてあり、殺し合い騙しあいを激化させている。
・とそんなこんなで上質なルールと設定により、手に汗握る駆け引きが演出されており、その点の満足度は高い
プレイヤーの立場とBETシステム
・このゲームは選択肢がないため、一本道のルートを展開の異なる全4パターンでプレイしていく形式となる。プレイヤーは主人公、御剣の視点でゲームに参加する。その一方で、プレイヤーはゲームを鑑賞するVIPの一人として誰が生き残るかに『賭け』ることができる(BETシステム)
・このBETシステムにて、ルートクリア時に払い戻されるコインを使ってコレクションのギャラリーやスチルをアンロックできる仕組みだ。これが選択肢のない受動的なゲーム体験ではなく、率先して先の展開を予想したくなる能動的ゲーム体験へと向上させてくれている。加えて、ゲーム内の設定とリンクしたシステムが没入感も高めている。
真ルートに至る演出(重大なネタバレを含みます)
・そして最後に新ルートに至る演出。これがこの作品の魅力の半分以上を占めていると言っても過言ではない(個人の感想)
・デスゲームはこの非合法なゲームを追っていた「組織」の介入によって阻止され、主人公たちも助かる。そして、エピローグ。脱出後の主人公たちの後日談が描かれる前の一幕として、「組織」によってこの非合法の賭博に参加していたVIPたちは始末される。のだが…プレイヤーもそのタイミングで始末されてしまうのだ。
・そのため、プレイヤーは後日談のエピローグは見ることができずゲームオーバーとなってしまう(本作唯一のゲームオーバーシーン)
・本作の目玉機能であるBETシステムを使わないことこそが真エンドへの条件であり、そのプレイヤーへの挑戦的な姿勢と演出に脱帽と言わざるを得ない、ある種満足感のあるエンドだった。
人を選ぶ要素
繰り返す導入のストレス、ゲームが面白くなるまでの助走が長い
・4パターンのルートをプレイする関係上、デスゲームのお約束の導入を繰り返し体験しないといけないストレスがあった。
①どうせドラマや映画の撮影さと一笑に付す
➁一応出口まで歩いて行って完全に隔壁がおりており破壊も不可能なことを確認する
➂最初の殺人やルール違反による処刑が発生し、一変する空気とパニックになったヒロインを主人公がはげます。
・このお約束パターンを毎回体験する羽目になり、各ルートに一定時間「ゲームが面白くなり始めるまでの助走」が存在しているのが惜しかった。陰謀などが交錯する後半が面白いだけに、ワンパターンな展開の序盤を複数回体験しなければならないのは少ししんどかった。
雑な心情描写
・このゲーム、一応ルートごとに異なるヒロインと生還するギャルゲー的な要素もあるのだが(移植前はアダルトーゲームだし)、ヒロインが主人公に御剣に惚れる理由が総じて薄い。正直全部吊り橋効果でしかない。(とはいえ危険な罠から身を挺して守る等はあれど)さらに、メインヒロインに関しては「初めから好きかもしれない…」というすべての過程をぶっ飛ばした恋心であり、このあたりの雑さは気になった
語りすぎな地の文
・「この時○○はこう思った。だから立ち上がった。あの日のままの自分と決別するために!」
といような語りすぎのナレーションが目立つ。類型だと「ひぐらしのなくころに」的な過度な語り口調が少し気になった。
(無関係な話だが、主人公御剣総一(みつるぎそういち)の語感が前原圭一(まえばらけいいち)すぎて気になった。言いがかりかもしれないが…)
総評・感じたこと
・正直サクッと遊べる程度のプレイ時間だが前述した、導入部分の序盤を繰り返し読むのが苦痛でプレイ的には少し重い作品であると感じた。
心情描写などのご都合主義な部分はあったが、秀逸なルールによってゲームが白熱する後半は読み味があり、デスゲームものに求めていた要素はしっかりとそろっていたように感じる。
・あと語るべきはメタ的なプレイヤーに対する最後の演出だろう。ADVにおいてプレイヤーに対するメタ要素はたびたび取り入れらて来た演出であり、これをある程度きれいに決めるだけで一定の評価と満足感は得られるのではないだろうか。そういった強みを持ったゲームだからこそ現在でもそれなりに移植されてそれなりにプレイされている。ADVや述べるゲームといったジャンルはアクションやRPGとは違い、ゲーム性部分でオリジナリティを出すことは難しく、ストーリーで勝負しなければならない。その一方でストーリーは「ひと夏の恋」や「殺し合い」など人気どころは似たようなテーマに収束してしまい。さらにそこでも独自性を出すこと求められる。以前CROSS†CHANNELの感想記事で、ADVほど古典が強いジャンルはないと述べたが、まさにその通りであり、こういったストーリー上でのメタ要素の開拓などはADVが今後進化の中で獲得していく独自性の一つなのだろう。
(このシークレットゲーム自体の発売時期はかなり古典の時代よりだが)
・デスゲーム系のゲームは大好物なのでこのジャンルの今後の発展に期待したいと思うのでした。
・続編もあるらしいが遊ぶのは気が向いたらかな…