【テイルズオブベルセリア】私らしく生きること。あなたらしく生きてほしいと思うこと。そして貫くこと【感想】
「鳥はなぜ空を飛ぶのか」
作中で繰り返される命題。こんな世界で自分はどう生きていくのかという問い。
人生は選択の連続のようで、選択肢すら与えられない時もある。そんな時自分の生き様をどのようにもとめ、貫いていくことができるのだろうか。
主人公ベルベット・クラウは家族と幸せに暮らす村娘だった。しかしその平和な日常は崩れ去る。世界を救うために犠牲を厭わない義兄アーサーによりベルベットの家族や生活は悉く奪われた。アーサーは世界救世主として為政者として君臨する一方、ベルベットに残されたのは憎しみに穢れた業魔の力だけだった。
『テイルズオブベルセリア』は世界の救世主を私怨のために討ち果たすことを誓う復讐の物語とテイルズシリーズが培ってきた戦闘システムの一つの到達点とも呼べる完成度の高いアクションバトルシステムが特徴の作品です。
タイトル:テイルズオブベルセリア
ジャンル:君が君らしく生きるためのRPG
対応機種:PS4、PS3
発売日:2016/8/18
プレイ時間の目安:60時間前後
1.総評
刺激的かつ暗いシナリオと派手かつ爽快なバトルシステムが相まってダークなエネルギーに溢れた勢いのある作品
まずは本作の大きな特徴に触れるべきだろう。世界を救った救世主アーサーを討つための旅。主人公ベルベットは救世主アーサーを殺すため。脱獄し、街を滅ぼし、兵士を殺め、世界を混乱に陥れ災禍の顕主と恐れられる。(テイルズ史上もっとも正しい文脈で魔王炎撃破を使ったんじゃないか)
そんなこれまでのテイルズ作品、どころかRPGにおいてもかなり特異なシナリオ運びに加え、女性主人公という点も相まって挑戦的な作風となっている。
かなり難しい味付けだが中身は大成功で、物語序盤から確固たる意志を持って旅出て、手段を選ばずただひたすらまっすぐにアーサー殺害を目指すストーリーは刺激的かつスピーディーで、エネルギーにあふれ続けている。その一方で黒い炎を燃やして進む暗いエネルギーはどこか不安定で燃え尽きてしまわないかハラハラし続けるスリルも併せ持っている。
暗く燃え広がっていく復讐の炎が帰結した先にある清涼感のある旅路と物語終わり方も、プレイヤーの心に傷とそれと同じくらいの光を残す印象的な結びだった。
2.詳しいレビュー
1.「復讐」一貫した旅の目的
テイルズシリーズにおいて非王道的なダークヒーローものに挑戦した作品には「テイルズオブヴェスペリア」があり、正義や正論だけでは救えない人や世界の闇を払うため、暗殺など手段を選ばない行動をとっていくというストーリーだったが、今作「テイルズオブベルセリア」の旅は世界の闇そのものである。
全てを奪われ死んだも同然のベルベットには圧倒的な「力」だけが残されており、やることは一つ復讐のみだった。旅の序盤、スタート地点である牢獄を脱獄したのちは、たどり着いた街で現地のごろつきと共謀し(そのまま仲間に引き入れて)港を爆破し、船を奪い、その足で海賊と結託し海軍要塞を落として王都まで乗り込んでいく。このテンポ感とやりたいほうだいな悪行の数々にプレイヤーも思い知らされることだろう。
また、世界を守る「聖寮」もその活動の軸である「理(ことわり)」を重視するあまり世界の人々に不自由を敷いているということが分かり始めた中盤以降、調子に乗った聖寮に灸をすえるという大義をたてることもできる中、主人公はあくまでアーサー憎しで戦い続ける。
この軸のブレなさはシナリオの疾走感やプレイへの没入度を大きく高めてくれている。そして最終盤にこの貫き続けてきた「復讐」への意思が折れてしまうシーンまで含めて一貫して目的を貫いたからこその確かな物語エネルギーが存在していた。
2.仲間たち
そして、そんなダークな同道する仲間もまたダークである。仲間といっても強い絆や友情で同行するわけではなく、あくまで利害の一致で手を組むような形で道連れが増えていく。にもかかわらず、プレイアブル以外も含めた旅路の同行者の数はシリーズトップクラスであり、ダイルやベンウィック、クロガネなどの海賊団メンバーに加え中盤以降で王子やモアナを筆頭した喰魔たちまで、暗い目的とは裏腹に旅路は賑やかになっていくのもよかった。
そして、利害の一致といっても(ジアビスのように)ぎすぎすしているわけでもなく、社会から締め出されたアウトローたちが海賊船バンエルティア号でそれぞれが信じた己の力を信じて突き進み、同行者が増えていく。
特にパーティーメンバーは非常に個性的で、テイルズのパーティーはおっさんから幼女まで老若男女になりがちだが、怖いおにーさんおねーさん&ショタというエッジの利きすぎている顔ぶれもよかった。画一化された理で世界を安寧に治めようとする聖寮とは対照的に、魔王・業魔・死神・魔女・聖隷・対魔士と多様性にみちた構成となってき、徹底的な対比構造として描かれる人間模様もストーリーのエンジンとなっているように感じた。
一方で、戦力として背中を預けあえる関係であっても、苦しいときに心で寄りかかることのできないという利害関係ゆえのもろさもスパイスであり、終盤のどん底の主人公を誰も支えられない状況をとても堪えた…
加えて、シリーズ恒例のスキットも健在で、緊張感あふれる本編の裏で、コワモテおにーさん達が小学生レベルの張り合いをしたり、ベルベットとエレノアが弟を取り合ったりとほほえましい一面をのぞかせてくれるの素晴らしい緩急だった。
また、絆ではなく利害で手を組んだ仲間たちだからこそ終盤、利害を超えて感情で手を組めたのが本当に良かった。狂言回しに徹し、単なる愉快犯として同道していたマギルゥが、何度も心を壊されながらも立ち上がり続け、ベルベットと合流するまで耐えたうえでいつもの道化を嘯くシーンはめちゃくちゃ良かった。
そんなこんなで個々人としてはかなり成熟しきっているパーティメンバーがパーティ全体で成長していくのもこの作品の味だろう。
個人的に好きだったのは、結束して力を発揮するチームというより、個々の力が圧倒的に秀でており、それぞれがそれぞれの力で戦ってきたパーティのような印象だったが、ラスボス戦のムービーで連携して相手に攻撃をしかけたり、マギルゥ、アイゼンの二人が呼吸を合わせて同時詠唱で術を放ったりと連携が生れていた点にぐっときた。全組み合わせの連携秘奥義が見たかった…
3.生きること。生き抜くこと
この作品の最大のテーマ。どう生きるか。冒頭にも引用した問いかけ
「鳥はなぜ空を飛ぶのか」、ラスボスアーサーが問い続けるこの問いの答え、それは「翼があるから」だった。
世界救済のために多くの犠牲を払い、力を得てきたアーサーには空を飛ぶ、もとい世界を救う翼があった。だから飛ばねばならなかった。一方でがむしゃらに復讐を目指す主人公ベルベットも同様だった。「復讐しか残されていない、そしてその力がある」ベルベットがなぜ飛ぶ(復讐する)のか。それは翼(憎しみと力)があったからだ。
しかし、そんな強迫めいた行動を貫くには並々ならぬ精神力と意志の力が必要であり、物語終盤、死んだはずの最愛の弟が生まれ変わった聖主カノヌシとのベルベットは邂逅を経てベルベットはとうとう自分の行いが無駄であったことを痛感し、折れてしまう。
その後、ベルベットは聖隷ライフィセットに支えられ、新たなる答えを携えて立ち上がる。その答えこそ「鳥は飛びたいから飛ぶ」。
実はこの真の答えは作中序盤から仲間である海賊アイゼンにより、別の課t勝ちで繰り返し語られており、それが「自分の舵は自分で取れ」だ。
そのため、ベルベットが復讐にとらわれている間も、アイゼンはもちろん、たまたま自身の宿痾とやりたいことが合致していたロクロウや、心が壊れているものの、常にその時々で面白そうなものにベットするという生き方をしてきたマギルゥなどは、それぞれこの作品の問いかけ、「鳥はなぜ飛ぶのか」に対し、それぞれが(自分らしくある)ことという答えに別の形でたどり着いている。
それ以外のパーティメンバーは旅の中でその答えを見つけていく、理にとらわれていたエレノアはベルベットの旅に加わることで、善悪問わない多角的な面で世界を見聞きし理解し、不器用な部分もある中で、彼女自身の天性の優しさや慈愛でできる限り世界を救いたいと思い。ライフィセットはアイゼンから一人前の男になるために「自分の舵は自分で取る」ことを学んでいった。ライフィセットはその象徴として行く先を示す羅針盤を大切にしていたが。終盤カノヌシによって羅針盤を壊されてしまうが、ライフィセットは迷わずカノヌシをぶん殴った。羅針盤はすでに自分の心の中にあるのだから。
そうやって最後に主人公であるベルベットが答えにたどり着く。
ライフィセットから答えを学び、復讐にとらわれていたベルベットが選んだ行動はなおも「復讐」なのだ。
自分の家族や幸せな時間を奪った義兄アーサーは許せないでも、同じだけ家族として過ごした時間も大切で幸せだった。だから復讐する。
1.で触れたブレない目的と、鳥はなぜ飛ぶのかという作品の命題がここで重なる。
同じゴールと同じ道のりや手段でも、それが翼に呪われて飛んだ空なのか、それとも自分で飛びたいと思った空なのかで何もかも大きく変わってくる。
そしてこの生き方は同じでも、自分の思った想いで貫くということが。飛びたいから飛ぶということであり、自分の舵は自分で取るということであり、君が君らしく生きるというテイルズオブベルセリアだった。
4.バトル&成長要素
ここまでかなーりシナリオを掘り下げてきたが、戦闘面もすっごく良い。
MPが存在せず、特定の条件で回復するゲージを維持している限り技を放ち続けることができ使用で、シリーズ屈指のバトルシステムの評価を持つグレイセスから正当進化した使用だった。
特に秘奥義のゲージがキャラごとに独立しているため、戦闘中に複数回秘奥義を発動したり、キャラ同士で秘奥義自体を連携してコンボに組み込むことのできる派手かつ奥深い使用だった。
一方でコツをつかんだ後はワンパターンがしやすいようなデメリットを感じるが、6人のプレイアブルキャラの能力も個性が強く、一週目は主人公を操作するだけで、満足してしまいがちなテイルズだが、今作では全キャラクターを満足いく形で操作しきることができた。
強化要素についても、ヴェスペリアにあった、装備を身に着けた状態で戦闘を繰り返すことで、スキルがパッシブとしてキャラクターに身について強化されていくマスタースキルという仕様も存在しており、ガシガシ戦闘を繰り返して装備品をマスターし、キャラ自身を強化して新しい装備をつけてさらに戦闘に身を投じていくことができる、中毒性のある強化システムだった。
ロクロウ・アイゼンなどのインファイターは主人公ベルベットに引けを取らない爽快感をもっており、一方でマギルゥやライフィセットなどの術キャラでさえも独自の立ち回りで圧倒的火力をだすことができたりと、敵の編成に合わせて操作キャラを変えて挑むことで戦闘に飽きが来ない良い作品だった。
隠しダンジョンまでしっかり遊んだが満足感たっぷりでした。
3.終わりに
私がRPGに求めるバトルとシナリオの両面から高い満足度が得られた作品だった。またハイクオリティのOPアニメの存在や豊富なミニゲーム、テイルズ伝統要素もありながらも、その独創的なストーリーからテイルズ初の人やアライズから入った人にもお勧めしやすい作品なんじゃないだろうか。
ベルセリア通しての好きな点はやっぱり万感のエンディングかなー。あの切なさを心にくる…
エンディングで藤島先生の絵でその後の世界が描かれることのはシリーズ恒例だったけど今作は優しい夢すぎて胸がぎゅっとなっちゃったな。
そしてこれはベルセリアではなくテイルズ全体の話になってしまうけど、個人的にほかのRPGにないテイルズの好きなところとして「物語の余白のなさ」を挙げている。
余白のなさとはなにか
例えばドラクエ5でキラーパンサーと再会した夜や、前の町で新たな仲間が加入して次の町へと歩みを進めるようなとき、プレイヤーはキラーパンサーを撫でてやっただろうなとか、新しい仲間にこれまでの旅のことを伝えたりするんだろうなと想像する(「はなす」コマンドもあるがそれ以上のことを想像する)
これが漫画やアニメにないゲームの「余白」であり、プレイヤーの想像力がゲーム体験に影響を及ぼすゲームだけの持つ魅力だと考えている。
一方でテイルズは語りつくす。大きなことからプレイヤーの想像しない些細なことまで徹底的に語りつくす。だからこそ物語の密度や、キャラに命が吹き込まれる。以前FFXを語らないRPGと言ったがテイルズは語りつくすRPGだ。
そんなテイルズが大好きなのでまだ遊べてない作品もやりたいっすね
触れてこなかったけど前作かつ地続きの物語のゼスティリアはアニメで見ようと思います。
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