見出し画像

【イハナシの魔女】を遊んで離島の神秘と小さな恋の物語を受け取った沖縄在住ADV玄人的【感想】

お久しぶりです。ブラック企業をやっと辞めれたのでリハビリも兼ねて掌編の気になっていたADVを数本ダラダラ遊んでおりましたのでまとめていきます。

一本目は沖縄の離島が舞台の「イハナシの魔女」をプレイ。筆者が沖縄在住なこともありずっと気になっていた作品だ。


【作品の概要】

幼い頃に両親を亡くした「西銘光」は、高校一年生の春、育ての親である叔母から祖父の家で暮らすよう言い渡される。
1人フェリーに乗って向かったのは人口1000人にも満たない沖縄の離島「渡夜時島」。
不安を胸に祖父の家を訪ねるも、祖父は海外へ移住してしまっていた。
事情を尋ねるべく叔母に連絡を取るが音信不通。
転校先の高校にも西銘光という生徒は在籍していないと告げられる。
光は叔母一家に捨てられたのだ。
途方に暮れた彼は夜のサトウキビ畑をさまよう。
そこで不思議な衣装に身を包んだ少女「リルゥ」に出会った。
自活力皆無の元高校一年生の光。
日本の常識をまるで介さないリルゥ。
2人は協力し合って小さな島で暮らしていく。
しかし、リルゥには渡夜時島へとやって来た目的があり……。

公式HP(https://www.kemco.jp/game/ihanashi/ja/)より引用

あらすじは引用させていただいたが、都会から南洋の離島にほっぽり出された主人公の光と常人離れしたバイタリティと「魔法」を操る異国の少女リルゥ、いずれも傷ついた過去を持つ二人が出会い、物語は動き出す。


離島で暮らすヒロインたち

詳しくは後述するがこの作品を通して感じたテーマ性は「居場所」だった。
そんな主人公とヒロインの二人が自分の生まれた環境や育った環境とも違う沖縄の離島で自らの生き方や将来を考えて人生を模索し、居場所を探す。

【好きなとこ】

・あったかいキャラクター
主人公やヒロインはもちろん、サブキャラも含めみな一応にキャラクターがいい。最近多いコンパクトなADVではメインキャラクターの数もグッと絞られがちだが、その分役割がここのキャラに明確に与えられ、物語を支えている。シリアスなシーンも多く運命、に振り回されながらも汗や涙を流しながら人生の理不尽さに立ち向かい続けるキャラたちは間違いなく生きていた。


浮世離れしているメインヒロイン・リルゥ


特筆すべきは主人公の光。黒髪短髪でTシャツ一枚、やや無気力で暗い過去を持つが、器用なところもあり小さな問題は卒なくこなす。そんな彼のことを序盤はプレイヤーが感情移入できるようにあえて希薄な主人公として造形したように感じていた。ところが一変、自分の人生に諦観を覚えていた彼は物語終盤、ヒロインのために立ち上がり、自分の人生を最後一滴まで絞り出して感情の塊のような姿で非常な現実にあらがい続ける。序盤の希薄なパートで主人公に乗り移っていたプレイヤーも万感の思いで話を読み進めることができた。
他にも悪友枠の不良は実はアニオタだったりとなんかこう絶妙に沖縄に生息してそう感がすごかった(兼城丈って名前も)


悪友枠が魅力的なギャルゲーは神ゲー

他にも、アフリカで育った野性味溢れる少女だったリルゥが、次第にスマホに慣れていく過程やアニメにハマる様なども、実際現実でも人はそうなるんだろうなと言う妙なリアリティ、ヒロインが心に秘めて誰にも言い出せずにいた苦悩や葛藤がツイッターの裏垢経由でバレて仲間が救い出すなんて展開もあり、逆に説得力があって良い点だった。


段々と俗っぽくなっていく


一本道で絆を紡ぐシナリオ
本作には分岐がなく、ヒロインごとに「編」が分かれているがそれは一本の時系列に積み重なっていくものである。そのためどっちのヒロインか選ぶのではなく、各ヒロインの人生や苦しみに主人公光とリルゥの二人で寄り添い(ときに魔法を使い)、各ヒロインの困難を破り居場所を見つけ出す。そしてヒロインたちと同時にそばでともに奔走するリルゥとの絆も深まっていく。
また、前半はかなりポップな演出やギャグシーンが多く、なんと言うか日常ものみたいな緩い作品かと思っていたが後半のド級のシリアス、ドシリアスの前振りでその落差もまたプレイヤーの心を揺さぶるアクセントになっていただろう。また、シリアスな中でもギャグシーンもこなせるようなキャラたちが心の支えにもなってくれていた。

沖縄文化に根付いた要素




クリティカルなスチル
スチルの枚数が少ない分そのクオリティの高さとシーンがたまらなく良い。
ラストのクライマックスシーンとエンディング後のスチルはもう胸がいっぱいになった。
また、淡い色合いと柔らかい線で描かれた立ち絵のクオリティも高いためスチルがなくても深く物語に没入できる


・沖縄要素
沖縄要素として食事や文化の描写もあったが、何より活かされていたのは島の神秘だろう。実際に移住して実感するがこの地域には独特の儀礼や習俗が多く、都会と比べるとずっとずっと神の世界や先祖の霊がしまう冥界を近く感じる。自然に囲まれていることもそうだが多くの人がそれをあるものとして受け入れて受け継いできている。だからこそゲームに登場する魔術などの神秘的な設定が説得力を増す形で物語へと反映されていた。


やたら解像度の高いおばぁ
儀式
ここまでではないが排他的なネガティヴな部分も主人公に立ちはだかる社会として描かれる


【人を選ぶ要素】

ギャグパート
後半のシリアスとのギャップを作るためという理由もあるのだろうがちょっと寒すぎる部分もある…ので気になる人は気になるかも

沖縄らしさ
前提としてよく調査されていて沖縄県外の人が遊ぶ分には十分な描写量だった。ここまで突っ込むと重箱のすみを突くようになってはしまうが明確に舞台を指定した以上はもっと沖縄の文化や言葉遣いを地の文や食事の描写から感じたかったなーというのは思ってしまった。
ただ移住して最初の梅雨に家中のものをかびさせるなどのあるあるや台風時の街の様子などは実際に経験したことがあったり見覚えのあるシーンでしっかり描写できていた部分も多い。あとがき曰く、コロナのせいで舞台にする予定の島に来れなかったとのことなので残念。渡名喜島にはいずれ聖地巡礼しに行こうと思う。
設定資料段階ではいたらしいけど日に焼けた沖縄らしい美人のヒロインがいなかったのはちょっと残念かも?

・機能面
ログから前のシーンに戻る機能が欲しかったくらい

【感じたこと】

メインキャラたちはどこか居場所を求めて生きているように感じた。人口千人でフェリー意外で島の外に行けない小さな世界は尚更窮屈そうだった。安心して暮らせる場所、ここでいいと思える場所、そんな居場所を持っている人は現実においても意外と少ないのかもしれない。そんなマイナスからをゼロを目指し、自分の居場所を探す物語は多くの人が共感を覚えるかもしれない。私自身も学生生活を終えて都会に戻るか葛藤した末に人に恵まれて沖縄で生活することを決めた人間なのでのめり込んでプレイしてしまった。
またサスペンス要素やファンタジー要素にも深い設定がありながらも人と人の関係性をメインに物語を推し進めたシナリオのおかげもあるだろう。
短いながらも満足感の高い、これからも時々思い出すような作品だった。
特に、一番最後のスチルは何度も見返してしまう。

グッズも出ているようなので再入荷したら買ってみようかな
それでは今日はここまでで


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?