【車輪の国 向日葵の少女】弱さと強さと叙述トリックの話【感想】
ずっとプレイしたかった車輪の国向日葵の少女をとうとう遊んだので思ったことなど書き綴る(ネタバレあり)
忙しいし間もあいちゃったから短めで…
車輪の国向日葵の少女はあかべぇそふとつぅより2005年11月25日に発売されたアダルトゲーム。日本によく似たとある架空の国の物語である。その国では罪を犯すと懲役に代わり、その罪に応じた「特別な義務」が科せられ、その犯罪者は「特別高等人」という超法規的存在によって更生指導される。主人公・森田賢一はその特別高等人を目指す候補生である。最終試験の課題として、田舎町にいる3人の少女を更生するよう指示される。
【作品の概要】
「SF小説に登場する【日本】って国では殺人も盗みも交通事故もみんな同じ懲役刑になるんだってさ。面白い話だろ」
日本によく似たこの作品の舞台では罪人に対してそれぞれの罪に対応した義務が与えられる。交通事故には車に乗れない義務、浮気や結婚に関したもの位は子供を持てない義務。そしてそんな義務を負った人々を監督するのが特別高等人。彼らの義務の遂行を支えその更正を促すのだ。
主人公森田健一はそんな特別高等人を目指す候補生。最終試験として向日葵畑に囲まれた田舎町に赴任し、3人の義務を背負った少女と出会う、あるいは再開する。「1日が12時間しかない義務」、「大人になれない義務」、「異性に触れてはいけない義務」。主人公森田は3人の少女の更正を目指すの中で人間の弱さと強さ、そして社会へと向き合っていく。
というわけで作品のテーマは「人間」と「社会」罪を犯してしまう人間の弱さとそれを克服していく人間の強さを克明に描く一方で、目に見えぬ、あるいは目の前を覆ってしまって視認できないとも思えるような社会。人の集まりに過ぎない無形の何かが人を裁く、罪を咎める。そんなことが許されるのだろうか。とテーマに対して深く切り込んだ作品。
一応恋愛ADVであるため、3人の義務を負った少女(=ヒロイン)である。
【好きなとこ】
・人間の弱さと強さへの容赦のない描写
エログロ…とかではなく、フィクションだからの都合の良さの通用しない部分。人間の弱さ、怠惰が罪とされ1日が半分(12時間薬で強制的に意識を失うかつ、疲れは取れないため別で睡眠をとる必要がある)の義務を負う少女は労役に従事することをなおもサボり続け、義妹が奴隷として買われてしまう局面にて今度こそ金を稼ぐと啖呵を切るも口だけに終わりグッドエンドルートでも義妹は異国に買われその後登場しない。そしてそのヒロインは大切なものを失ったことでやっと自分自身の弱さを認め、怠惰を克服する。
あるいは強さの面でも、優柔不断な少女は選択肢から逃げてばかりきたが、試練の果てに何も選ばないことを選べる強さを手にする。優しさとはつまり何事をも受け入れる心の強さなのだ。そんな試練と克服のシーン(シチューのとこ)はそこまでするか…というあってはならない次元の仕打ちを相手の想いを組んで笑顔で受け止め続け最後には抱きとめる底無しの優しさにて締め括られる。
弱さと強さは相反する対局のものではなく、弱さの先に強さを持つこともある。そしてそんな弱さ(=罪)誰しもが持つものに過ぎない。では罪とは、罰とはどうあるべきなのだろうか。
・叙述トリック
ADVという、映像音楽文章三つ揃った媒体で叙述トリックを決められました。
シナリオやキャラクター描写の評価とは別軸でこの叙述トリックを食らうという体験は驚嘆に値するもの。
伏線の貼り方もさることながら設定やシナリオとのリンクも完璧。個人的に叙述トリックファンで「十角館の殺人」だ「殺戮に至る病」、「ロートレック壮殺人事件」など名作はあらかた見てるつもりだけども、映像など視覚的譲歩の伴う媒体でキメられた衝撃歯とんでもないので人生ナンバーワン叙述トリックかもしれない。
・姉がエッチ
姉が好きな人はやるといい
・とっつぁん
主人公の教官にあたる人物、法月。作中ではヒールにあたる、「大人」として現実を突きつけて来るのだが「理不尽な現実」ではなく「ただそうである真理としての現実」であるため大前提、一人の大人として尊敬できる偉大な人物として描写されている。そして彼自身も「人間」であり、例外なく弱さがある。あと、若本ボイスで説教してくる。
【人を選ぶ要素】
・思想が強い
最終的にガチ革命するので、その展開や、ここまでの容赦のない人間描写と比べるとややご都合主義っぽく感じてしまうかも。シナリオとしては燃える展開ではある。
・シーンジャンプがない
あってくれ
【終わりに】
エピソードの結びというよりもキャラクターの魅せる人間としての輝きや随所の熱い展開、とんでもねえ叙述トリックあたりが良かったなあという感じ。
後日談がまだだからそのうち遊ぼう。
プレイしてから時間があくと熱量のある文章が書けねぇ〜
また今度!
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