〈離れろましろ!! 感想だッ!!〉【ルートダブル - Before Crime * After Days -プレイ後雑記】
ややマイナーよりのゲームかつ、プレイ環境も厳しい作品なので今回は既プレイ向け。ネタバレ多めです。
あらすじ
あらすじ
前置き
このゲーム、かなり特殊なシステムの採用や無理のある部分をクオリティの高さで解決した点が多々あり、あらゆる長所が短所になりかねない。本記事では各要素を賛否両面から触れていきます。
重厚すぎるサスペンスADV
緻密なシナリオ
・まず初めにシナリオの完成度。めーちゃくちゃ高いです。シナリオが軸となるサスペンスADVにおいて文句なしの完成度。
複数の時系列や主人公のルートがあり、クリアするたびに次がアンロックされるというシステム。前ルートまでのシナリオにおいて前提とされていた地盤を悉く鮮やかに打ち破り二転三転し続ける驚愕のシナリオは長尺のストーリーを牽引するのに充分すぎるほどのクオリティ。無論話をひっくり返す伏線は事前に巧妙に仕組まれているのでご安心を。
そして長い長いシナリオで張り巡らされた大量の伏線を全て回収しきってあらゆる問題にきちんと蹴りをつけて終わるラストも圧巻。こんな長く複雑な話が綺麗に畳み込まれるストーリーライティングの美しさだけでもプレイの価値あり。
緻密すぎ!
・そもそもの問題としてこのゲーム。なっげ〜〜〜の。長すぎ。ただそれ自体は問題ないです。シナリオが面白すぎるかつ作劇がうま過ぎるので中弛みなどは存在せず先へ先へと読み進めることができます。
・しかし、長いゆえの弊害も。伏線が出されてから回収されるまでに時間が空くのでプレイヤーはその問題に向き合う時間がたっぷりと与えられる。そのためなんとなーくこういう風なんじゃないかとあたりをつけていたオチがまさにシナリオでそのまんま出てくるということも少しだけある。綺麗な回収であるだけにもったいない。
・そして終盤、全ての謎が解けるいわゆる解決編なのだが、これがあまりに長い(またか)。もはや冗長と言って良いレベルになってしまっている。これまでの膨大な伏線を一気に回収するパートなのだが。如何せん長い。怒涛の伏線回収!になるはずなのだが長すぎて怒涛感がなく、加えてトラブル関係はほぼ全て解決しており人間関係の折り合いのような部分が中心となる終盤なので世界観的などんでん返しも起こらない。目指すは大団円だが人物の相関的にどうやっても大団円になれない。そこをどうするか?!と言った感じなので作中で提示される人間関係の問題解決の方法に驚くことができても大団円自体は予想がついているので肝心な終盤においてこれまでできていた飛躍的な展開の裏切りが存在しない。
感情で分岐するADV
Senses Sympathy System
・Senses Sympathy System(以下SSS)は今作において選択肢による分岐の代替となるシステム。ざっくり説明すると各キャラに対する好感度をシナリオ中、随所に挟まる任意のタイミングで9段階で調整するシステム。
このSSSによって設定された好感度を参照し物語の展開は分岐する。なんとなく難しい気がするが実際は二択の選択肢よりも快適で、自分がそのキャラに感じている感情をかなり直接的に反映することができるのでより没入度の高いゲームプレイを担保してくれている。(チュートリアルも充実してるよ!)
他のゲームに見られる二択の選択肢のどちらも微妙、なんてことが全くなくて快適。また、選択肢の場合は分岐の展開がある程度読めてしまうがSSSはあくまで好感度でしかないため話の転がる先も読めない。先の展開をノーガードで楽しめる。
・またネタバレになるがこのSSS、単純ながらもグランドエンドに向かう際に最後のタイミングで全員を最大にする必要があるという演出もアツくて良かった。加えて、作中に登場するセンシズシンパシー、この「ゲームとしてのシステム」であるSSSと全く同じ用語が登場する。そしてその内容は・・・。ゲームシステムと設定の見事なまでの融合はアドベンチャーならでは。ゲームじゃなきゃできないことを引き出しきっている。
わかりにくいよSSS
・一方で残念な点も。周回でエンディング回収するにあたってSSS、めっちゃわかりにくい。SSSの入力度合いによって当然何パターンかにシナリオが分岐する。一回クリアすると分岐の条件となるテンプレの交換度数値が好感度ごとに表示されそれぞれ自由に入力できるようになるのだがそれでも入力が面倒。かなり前のSSSからフラグ管理されているルートもあり選択肢で分岐するゲームには存在しない不便さもあった。
RAMシステム
・加えてもう一つの目玉RAMシステム。各キャラの記憶をオムニバス形式で読んでいくというシナリオ形態。一覧からシナリオタイトルを選択肢読み終わったら次へ。というもの。
・このシステムの魅力に触れる前に話しておくべき個人的最大の評価点がある。それはさりげない第3の壁の突破だ。EVER17、アルノサージュやドキドキ文芸部など第3の壁を飛び越えるゲームは様々だがその多くがこの第3の壁の突破をゲームのギミックの中核としていた。
しかしこのルートダブル はそれを中核とせず。作中のシナリオの真相に迫る過程で張り巡らされた伏線回収の結果の一つとしてプレイヤーの意思の存在をほんの少しだけ匂わせる。このちょうど良さ。第3の壁突破をダシにせず、小細工なしでシナリオを練り上げた上でファンサービスのような形でプレイヤーをシナリオに噛ませる。最もあるべき第3の壁ゲーム演出のように感じた。これに関しては一見の価値ありなのでぜひ遊んで欲しい。
・そんでもってこのエピソードを選択して閲覧するRAMシステム。行っているのは他人の記憶をのぞく能力を持つ主人公だが。暗示的にプレイヤー自身もそれを行っていることが示唆される。つまりニューゲームからルートを選んでシナリオを読み始めるプレイヤーの行為そのものがゲームに対するRAMシステムなのだ。
このようにSSSやRAMをはじめとしてシステムがシナリオに密接に関わるゲームならではの演出がこのゲーム最大の魅力だろう。
細部がメッッチャ綺麗
・言い換えるなら丁寧さか。AルートBルートCルートDルートそれぞれのルートの頭文字の指す単語がルートAfter(事件発生後)、ルートBfore(発生前)、ルートCurrent(現在)、ルートDouble(華麗すぎるタイトル回収)だったりすることを始め。作中に登場する設定がADだったりBCだったりとABCDを綺麗になぞったり。確証のサブタイトルの意味がわかった時のオサレさ(TIPSで解説される)だったりと細部のクオリティの高さがゲーム全体の完成度の高さを底上げしている。
総評
システムやシナリオ周りに偏ったがキャラの心情を第一としており、エニアグラムの各属性に割り振られた性格の異なる9人のキャラで紡ぎあげる人間模様の完成度も見事なもの。俺は夏彦が渡瀬についていってテロリストになるエンドがアツくて好きだぜ。EVER17を期待して始めたせいで若干肩透かしを喰らった気になってるのは俺の否でしかないしな。トータルとしてはこんなに長い話を飽きさせないようにかつ綺麗に畳まれているのを体験できるだけでも大いに価値ある作品だと思う。あとなぜかが海外版だけスイッチで遊べる。日本でも出して遊びやすくしてくれ〜。唯一無二のいいゲームでした。
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