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衝撃の新事実!タンパク質摂取量に上限はなかった!/オートファジーを止めない断食法

【無料公開記事】

こんにちは。クロマッキーです。

早速ですが、今日は少し前に筋トレ界隈で盛り上がっていた
「実は、1 度に摂って良いタンパク質摂取量に上限はないでは?」ということを主張した論文について解説していきます。

知っている方も多いと思いますが、これまで、1度に体内で使えるタンパク質の量はおおよそ20~25gという風に言われたりしていて、その説もあって、「タンパク質はこまめに摂るもの」というのが常識でした。

しかし、2023年にそれを覆す論文が発表されたため、今日はその論文の内容を解説します。

またその研究結果から、長寿・老化防止のために「オートファジー」を効率的に引き起こすためのヒントも得られたので、その辺りの考察もお話しします。

16時間断食をして「オートファジー」による長寿や老化防止効果を狙う人は一定数いると思いますが、意外とやり方が間違っていたりする方もいるので、気になる方は読んでみてください。

科学的エビデンスに基づく考察(タンパク質摂取量に上限はかった/断食への応用)

■サマリ
「本文を読む時間が取れない!」という、忙しい方向けに、重要なポイントのサマリをお伝えします。

■研究結果
・これまで1度に体内で使えるタンパク質の量はおおよそ20~25g(それ以上は無駄になる)とされてきたが、今回紹介した研究では、タンパク質を1度に多く摂取しても、筋肥大を含む体内のタンパク質合成の無駄にはならないことが示唆された
・加えて、一度に大量のタンパク質をとることで、摂取後12時間の観察期間における、筋合成時間の延長、筋合成速度の向上が見られた
・今回の研究結果はランダム化比較試験のため、今後メタ分析などさらに信頼性の高い結果を待ちたい
■日々の生活にどう活かせるか?
・筋肉をなるべく落とさずに朝食抜きの16時間断食を行う場合、夕食に多くのタンパク質をまとめて摂取することが効果的である可能性がある
筋トレ後、1度に多くのタンパク質を摂取することで、筋肥大や筋損傷の回復効率を高められる可能性がある

■研究結果
2023年12月 オランダ、マーストリヒトのマーストリヒト大学医療センターのメンバーらが、筋トレ界隈を賑わす論文を公開しました。[1]

この研究はランダム化比較試験(RCT)と呼ばれる、ある程度信頼のおける研究です。

早速ですが、この論文の結論は次のとおりです。

筋トレ後に、1度に多くのタンパク質(100g)を摂ったところ、これまでの常識とされてきていたタンパク質量(20g)を摂った時よりも
①筋肉の合成がより大きく・長時間見られた
②筋肉の合成速度が上がった
③タンパク質も無駄にならなかった

と言うことです。

まず、1度に多くのタンパク質(100g)を摂ったところ①筋肉の合成がより大きく、長時間見られたと言うことは、これまで筋肉量を維持する目的でこまめにタンパク質を摂るようにしていた人は、「一回の食事でたくさんタンパク質を摂れるのであれば、それほどこまめにタンパク質を取らなくても筋肉が落ちなさそう」ということです。

続いて、②の筋肉の合成速度が上がったということは、筋トレ後の筋繊維の修復や筋肉量の増加が速くなるため、「効率よく筋肉を増やすまたは維持することができる」ことを意味します。僕のような筋トレ大好きな人には嬉しい効果です。

続いて③について、これまでは、余分に摂取したタンパク質(アミノ酸)は筋肉にはならず、エネルギーとして消費されたり、体脂肪として蓄積されたり、最終的に尿として排出されるとされていました。しかし、今回の研究結果によれば、一度にたくさんのタンパク質をとっても無駄にはなっておらず、筋肉の合成(筋肉が増える作用)に使われていたことがわかりました。

これは万人にとって朗報な研究結果ですよね。

詳しく説明します。

■研究内容
ざっくり、この研究の内容を説明しますと次のとおりです。

  • 健康的な男性に筋トレを行ってもらった後、タンパク質含有量が0g、25g、100gの物質の内どれかを摂取してもらった
    (ちなみに、タンパク質はホエイ20%・カゼイン80%の割合です。)

  • その後、血液中に含まれる成分や筋肉内の栄養状態を12 時間モニタリングし、タンパク質がどのように体の中で代謝されたかを分析

少し専門的ですが、今回の研究では、「四重核同位体トレーサー栄養注入アプローチ(A comprehensive quadruple isotope tracer feeding-infusion approach)」という、食事からの栄養素の吸収や代謝の様子を正確に測定するために役に立つ、信頼性の高い方法を採用しています。

■結果
研究結果の要点は次のとおりです。

【全身におけるタンパク質合成】

引用:Cell Rep Med. 2023 Dec 19; 4(12): 101324.

上記は、全身におけるタンパク質合成の結果です。

●:タンパク質100g摂取したグループ
○ (グレー):タンパク質20g摂取したグループ
○:タンパク質0g摂取したグループ

この結果からもわかるように、タンパク質を100g摂取した人は、12時間を通して、最も長時間(筋肉を含む)体内のタンパク質合成が行われ、全身のタンパク質合成速度も最も高っかったと言うことです。

また、筋原線維のタンパク質合成速度は、25gと100gを比較した場合、100gでは初期の0〜4 時間では約20%高く、その後の4〜12 時間では約40%高くなり、食後の長期段階(4〜12 時間)の方が顕著に筋合成の影響が見られています。

このように、これまで筋トレ界隈で常識だった、「1度に20-25g以上タンパク質をとっても筋肥大にあまり意味はない」と言う説を覆す結果が見られたと言うことです。

【全身におけるアミノ酸酸化】

引用:Cell Rep Med. 2023 Dec 19; 4(12): 101324.

上記は全身のアミノ酸酸化に関する結果です。
アミノ酸の酸化とは、摂取したタンパク質が胃や小腸で分解されてアミノ酸として吸収された後、体を動かすエネルギー源になったり、尿として排出されたり、他の物質に変換されたりすることを指しています。
超ざっくり言ってしまうと、要は筋肉の合成に使われずにエネルギーとして消費されてしまったアミノ酸がどれくらいあったかと言うことです。

結果としては、タンパク質100g摂取したグループ(●)で最も高くなっていますが、全身のタンパク質合成反応と比較すると無視できるほど小さくなっています。つまり、一度にたくさんタンパク質をとっても筋肥大には無駄にはならなかったと言うことです。

具体的には、100gの場合、摂取されたタンパク質の大部分(85%以上)が筋肉、骨、皮膚、内臓など体を形成する各組織のタンパク質合成に利用されたと説明されています。
このように、1度に20-25g以上タンパク質をまとめてとっても無駄になるということはないということです。衝撃ですね!

【mTORの反応】

引用:Cell Rep Med. 2023 Dec 19; 4(12): 101324.

続いて、上記はmTORの活性度合いです。
少しマニアックな内容に踏み込んで行きますが、この後のクロマッキーの所感に通ずる話ですので、少しお付き合いください。

そもそもmTORとは何か?と言いますと、細胞の成長と代謝を調節する酵素のことです。どんな時に出てくるワード?と思われると思いますが、1つの身近な例としては、筋トレを行うと、僕たちの体ではこのmTORが活性化し、それが筋合成のシグナルになり、筋合成が促されたりしています。
意外と身近な酵素ですよね。
また、このmTORは必須アミノ酸の1つ、特にロイシンを摂取した際に活性化したりもします。

で、今回の結果では、
大量のタンパク質を摂ることで、血液中のアミノ酸の利用可能性(どれだけ使える状態にあるか)が増加し、その時間が長くなったことが観察され、その結果、特に筋肉内のBCAA(ロイシン、イソロイシン、バリン)の濃度の上昇し、これがmTORを活性化し、筋タンパク質の合成を初期段階で強く刺激したことが観察されています。これがタンパク質100gの方が、筋合成が度合いが大きい結果となった理由の1つです。

しかしながら、長い時間軸で見ると、BCAAの利用可能性は延びたものの、mTORの活性化の延長をもたらさなかったと報告されています。
(だから何?と言う話はこの後に説明します。)

■クロマッキーの所感
これまでこれ筋トレ界隈では、「1度にまとめてタンパク質をとっても無駄になるからこまめにタンパク質を摂取しよう」と言われていましたが、今回の研究では、「一度に大量のタンパク質をとっても十分に意味があるぞ(①筋合成時間の延長、②筋合成速度の向上、③無駄にならない)」と言うことが示されました。

とはいえ、タンパク質を1日に複数回取れる場合、こまめにタンパク質をとった方が筋合成率は高いと言うことが2013年 オーストラリアのランダム化比較試験でも示されていたりしますので、「筋肉をもっと増やしたい!」と考えているトレーニーの場合、筋肥大のためには、タンパク質をこまめに摂れるならこまめにとった方が良いことには変わりありません。
しかし、今回の結果を踏まえると、筋トレ後の食事の後に、次の食事まで時間が空くことが事前にわかったならば、一度にたくさんタンパク質をとっておいた方が筋肥大や筋肉維持には良い
と言うことが言えます。[2]

続いて、今回の結果では、トレーニーではなく健康志向の方向けにも新しい洞察が得られました。それは、なるべく筋肉を落とさずにオートファジーによる長寿・アンチエイジング効果を得られる可能性があるということです。

おそらく、オートファジーによる長寿・アンチエイジング効果を得るために16時間断食(1日24時間のうち16時間何も食べない食事法)をされている方もいますよね。

おさらいとして、オートファジーとは、mTORの働きが制御されることで、損傷したタンパク質や正常に機能しなくなったタンパク質を再利用する仕組みで、オートファジーが起こることで、細胞内の老廃物が溜まるのを防いだり、エネルギー効率がよくなったりと細胞の健康が保たれるようになります。また、オートファジーを起こすためには16時間断食をするのが有効な手段です。

で、おそらく多くの方は「16時間断食をしたら空腹時間が長すぎで筋肉が落ちるのでは?」と疑問に思われると思いますが、実は16時間断食では、筋トレをしていれば筋肉は落ちなさそうというのは、複数の研究結果でも示されています。今回の研究結果では、さらにその理由を補足する形になり、「タンパク質を多くとっておけば、16時間断食中も筋合成が行われるため筋肉は落ちなさそう」ということが示されました。[3]

ちなみに、16時間断食をされている方の中には、「筋肉が落ちるのが不安」だからと言って、断食中にプロテインを飲む人もいるみたいですが、プロテインを飲むと前述の通り、含まれているロイシンによりmTORが活性化してオートファジーは止まってしまうんです。(これ、意外と知らない人も多い)

ですが、今回の研究結果を見ると、1度に多くのタンパク質を摂取することでその後も筋肉合成を促進する反応が継続する結果が見られたので、朝食抜きの16時間断食をする人は、夕食で1度にたくさんのタンパク質を摂取しておけば筋分解は防げる可能性が高いと言うことです。

ここで「1度に多くのタンパク質とったら、プロテインを飲んだ時みたいにオートファジーは止まらないの?」と思われると思いますが、前述の通り、今回の結果ではロイシンを含むBCAA(必須アミノ酸9種類の中のバリン、ロイシン、イソロイシンのこと)の利用可能性は延長されたものの、mTORの活性は延長されなかったという結果が見られているため、夕食で多くのタンパク質をとっても、オートファジーはちゃんと起こる可能性が高いというわけです。

なので、朝食抜きの16時間断食をされる際には、断食中にプロテインを飲むのはやめて、夕食で多くタンパク質を摂ることが良さそうです。

とはいえ、腎臓に問題がある人が過剰にタンパク質を摂ると、腎臓へ悪影響があるとされていたり、一方、健康な人でもタンパク質の過剰摂取による腎臓への悪影響は依然として議論が分かれていたりするので、摂り過ぎには注意が必要です。[4]

■16時間断食のポイント
ここまでの話を踏まえて僕がオススメする16時間断食の方法は次のとおりです。

  • 1日24時間のうち、16時間の空腹時間をもうける

  • 断食中はカロリー0の飲み物を十分に摂取する

    • 利尿作用のない水や炭酸水がベスト

  • 食べて良い8時間の間は

    • 断食明けの食事は、血糖値を上げすぎないことを意識する

      • 低〜中糖質、高食物繊維

    • 最後の食事では高タンパク質食にする

      • 1日のタンパク質の目安は体重1kgあたり1.83g以上

  • 筋肉が落ちないように、しっかりと筋トレを行う

■サマリ(Key Takeaways)

■研究結果
・これまで1度に体内で使えるタンパク質の量はおおよそ20~25g(それ以上は無駄になる)とされてきたが、今回紹介した研究では、タンパク質を1度に多く摂取しても、筋肥大を含む体内のタンパク質合成の無駄にはならないことが示唆された
・加えて、一度に大量のタンパク質をとることで、摂取後12時間における、筋合成時間の延長、筋合成速度の向上が見られた
・今回の研究結果はランダム化比較試験のため、今後メタ分析などより信頼性の高い結果を待ちたい
■日々の生活にどう活かせるか?
・筋肉をなるべく落とさずに朝食抜きの16時間断食を行う場合、夕食に多くのタンパク質をまとめて摂取することが効果的である可能性がある
筋トレ後、1度に多くのタンパク質を摂取することで、筋肥大や筋損傷の回復効率を高められる可能性がある

■参考文献
[1] The anabolic response to protein ingestion during recovery from exercise has no upper limit in magnitude and duration in vivo in humans
[2] Timing and distribution of protein ingestion during prolonged recovery from resistance exercise alters myofibrillar protein synthesis
[3] The effect of ramadan fasting and physical activity on body composition, serum osmolarity levels and some parameters of electrolytes in females
[4] Comparison of high vs. normal/low protein diets on renal function in subjects without chronic kidney disease: a systematic review and meta-analysis

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