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【人的資本経営ストーリー作成塾】第10-回 人的資本経営モデルキャンバス(その3)

CHROFYは、「人的資本」や「人的資本経営」に関する専門家たちのご協力のもと、人事・経営に役立つ情報を定期的にお届けしています。

【人的資本経営ストーリー作成塾】では、事業創造大学院大学 一守靖教授から、人的資本経営や人的資本経営のストーリーを作成する上でのポイントなどを解説していただきます。
今回から2回にわけては、「人的資本経営キャンバス」の作成方法についてご説明します。

(1) 「企業の存在意義」欄

まずは企業の存在意義から記入します。最近では企業の存在意義を表す言葉として「パーパス」を使用する企業が増えてきました。その場合従来使われていた「ビジョン・ミッション」という組み合わせではなく「パーパス・ビジョン・ミッション」でも構いません。また、日本企業では昔から、企業経営を通して社会に対してどのような役割を果たすかを示した「経営理念」を設定している会社も多く、それでも良いでしょう。

(2) 「企業文化」欄

ここには企業文化を記載します。とはいえ、企業文化を言葉で示すのはなかなか難しいと思います。企業によっては、漠然と世間一般にそのような企業文化があると思われていることがあります。個人的な主観ではなく、企業内である程度定まった企業文化があれば、それを記載する方が望ましいです。
また、複数の社員に企業文化についてインタビューし、社員がほぼ共通して認識している文化を記載する方法もあります。
すでに言語化されている情報としては、企業の存在意義(パーパスあるいはミッション・ビジョン)に続く「バリュー(行動指針)」を記載しても良いでしょう。これは現実というよりも目標に近いものですが、それが会社の目指す文化であれば、各種の戦略や施策にその会社らしさ、すなわち企業文化が反映されているかを確認する際に、その「目指す姿」を参照するのには意味があると思います。

(3)「企業を取り巻く環境」欄

企業を取り巻く環境を分析するにあたって、一般的には内部環境の分析と外部環境の分析を行います。内部環境分析のための有名なフレームワークとしてはポーター(Porter, 1980)の「バリューチェーン」や米マッキンゼーの「7S」といったものがあります。また、外部環境分析用としては「PEST分析」をはじめ、広く使われているフレームワークがいくつかありますので、それらをベースに検討すると良いでしょう。
企業を取り巻く環境の中には、自社の経営に直接的に影響を及ぼす環境と、そうとは言えないが社会の一員として考慮すべき環境があります。
前者の例では、自社ビジネスに直接関係する政治、経済、社会、技術の動向があります。また、競合企業や顧客といった市場の動向も重要です。
後者の例としては、SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・ガバナンス)があります。もちろんSDGsやESGが自社のビジネスに直接関係する企業があるのは言うまでもありません。

(4)「経営戦略」欄

経営戦略とは、「企業を取り巻く環境の下、企業や事業の目的や目標を達成するための作戦」のことです。経営戦略立案の際に参考となる理論はたくさんあります。例えば、古くはチャンドラー(Chandler)やアンゾフ(Ansoff)の戦略論、現在もよく使われている米ボストン・コンサルティング・グループのPPM(Product Portfolio Management:プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)、ポーター(Porter)の競争戦略論、他にもハメル(Hamel)とプラハラード(Prahalad)のコア・コンピタンス、バーニー(Barney)の資源ベースの戦略論などです。
おそらく経営戦略を筋だって構築することや、人的資本経営において経営戦略と人事戦略を連動させるべきことは、ほとんどの方々が理解していることだと思います。しかし、頭では理解していてもなかなかできないのが実態です。そのために筆者は、少しでも多くの方々が筋の通った人的資本経営ストーリーを構築するお手伝いをする必要があると考えています。

次回は、後半の、人事戦略から人的資本指標までの書き方についてご説明します。


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