ชอบขนม
腸に疾患があっても食べられるお菓子を求めて彷徨っていた時に、出会った。
私の救世主は黒棒だった。
黒砂糖味の、小麦粉でできたみちっとした噛み応えの、おばあちゃんが仏壇から出してくるお菓子。
見た目はかなり地味で、買う時にときめきはしない。
でも、スーパーの棚に置いてあるお菓子の原材料表記をしらみつぶしに見て、一番意味のわかるもので作られていたのが黒棒だった。
体調がいい時は多少悪いものを食べても大丈夫だけれど、黒棒じゃなきゃダメな日が、私にはある。
私は黒棒を信頼している。
恩がある。
味気ない療養生活を支えてくれた。
「まじめだけが取り柄です」と言っているような素朴な見てくれを、十代や二十代の頃はちょっと小馬鹿にしていたところがある。
「親が友達になるよう勧めてくるような奴とは友達にならないぜ」みたいな、反抗的な子どもだった頃ならきっと、一生黒棒と共に生きなさいなんて言われたらぶーたれていただろうけれど。
今は、何はなくとも黒棒だ。
黒棒と玄米茶があれば、その日一日を穏やかに過ごせる。
そんな穏やかなティータイムを脅かすような変な誘惑があったとしても、やくざな道には進まない。
平穏な毎日を過ごすための、私のラッキーアイテム。