明日がどういう日になるか 楽しみになってくる:日向坂四期生楽曲『雨が降ったって』感想
はじめに
本稿は日向坂46の11枚目シングル『君はハニーデュー』に収録されている四期生楽曲『雨が降ったって』の感想を記したものになります。四期生楽曲としては『ブルーベリー&ラズベリー』『シーラカンス』『見たことない魔物』『ロッククライミング』に続く5作目であり、センターは小西夏菜実さんが務めています。日向坂として間違いなく転換期、分水嶺、ターニングポイントである今回の11枚目シングル。選抜制の導入、ひなた坂46のスタート、WE R!!による「日向坂」の再定義といった様々な仕組みや取り組みも行われている中、四期生が日向坂にもたらすものは何なのか、この楽曲から見えてくる展望とはなにか、そういった部分を書いていければと思います。構成としては歌詞→曲→MVの順に観ていった後、後半は小西夏菜実さんへの手紙になります。それではどうぞ。
楽曲面
歌詞
「さっきまで彼女は上機嫌だったのに」から始まる今作、合いの手的に(鼻歌交じりに散歩しながら)を挟んだ後に「だけど怪しくなった突然の雲行き」と繋がることで、まさしく「女心と秋の空」な「彼女」の人物像が浮かび上がります。対する歌詞の主人公は今回一人称が「僕」と限定されているわけでもないので、単に「自分」と置きます。この「自分」から「彼女」に相対する際に、康的な(少なくとも坂道における)「僕」ならもっと湿っぽく、あるいは「彼女」を見ているだけで行動に移さない(電車の中、バスの中でいつも見かけるあの子、的な)というような人物像が頭に浮かんできそうなところですが、今作はカラッとしているというか、歌詞中にもある「開き直り」の境地にあり、むしろ「雨が降ったっていいじゃん」「たまには濡れちゃったっていいじゃん」「喧嘩をしたっていいじゃん」といったように、恋人同士の関係には波風もあるけどそれも含めて「明日がどういう日になるか楽しみになってくる」という精神性があります。わたしも人生かくありたいという感じ。このトーンが通底しており非常によい。
また「雨が降ったって」というタイトル自体も、雨というマイナスあるいはビハインドなニュアンスを纏う単語を持ってきつつ、「〇〇ったって」で逆接にすることで未来志向で明るい予感を醸し出し、かつ「いいじゃん」とはタイトル内では明記していないことからも、「これからどうなるかワクワクして来るよ」の不確定性を7文字に込めているのはさすがのワークスだなあと。言い切らない美学といいますか。
そして、詞における四期生自身の表象に注目してみたときに、これまでの四期生楽曲は下記のよう言い表せるのかなと思います。
・ブルーベリー&ラズベリー:
「似てるような全然似てない僕たち」が日向坂においてもたらす「これから」としての存在
・シーラカンス:
「生きた化石のようにハートの底にいた」気持ちを自覚することで「あの頃と変わってないときめき」「僕にとって大事なもの」と理解する→「日向坂」の特質を備えている四期生に対してファンから眼差した時の感覚
・見たことない魔物:
「そう僕を信じてくれないか」と語りかける先導者・開拓者
・ロッククライミング:
「ロッククライマー」として壁を乗り越え未来を掴み取る存在
上記に対して、『雨が降ったって』における四期生表象はおそらく「自分」であり、「彼女」≒周囲の環境など変化する外的要因に対しても、その不確実性すら楽しむ気概が見て取れます。ブルラズ・シーラカンスでは四期生・ファンともにアイデンティティ・眼差し方を模索していた所、魔物で一つの方向性を見出すとともに、新参者期間でぶち当たった高い壁をロッククライミングで乗り越えた四期生にとっては、これから待ち受けるであろう困難ですらも「ワクワクして来るよ」「ドキドキさせてくれ」と言い放ってみせるほど、そこには頼もしさがあります。成長。
総じて今作は歌詞からも四期生のレジリエンスを感じるというか、加入してからこれまでのあゆみを経て培ってきたものを発揮している感覚があります。周辺環境はまだまだ厳しいものかもしれない、それでも「私達もまた日向坂である」という自信と新参者での「一体感」を獲得して以降の四期生は、初期のそれと比べると見違えるくらいに頼もしく、あんたらが青学の柱や…!という気持ちになります。そういった意味では、四期生の第2章の嚆矢となる、そんな楽曲になっているのだと思います。
曲
これまでの四期生楽曲に関する記事のように、私自身には音楽的知識も経験もないのであくまで印象や個人的体験からなる感想が出力されていることをご承知おきください、という前置きをしておきつつ。一聴目でバン!と浮かんだ音像はパーティーチューンであり、近いところで例えるならば乃木坂4期生楽曲の『I see…』や『Out of the blue』、そしてSMAPの『SHAKE』あたりで、公開直後のFFの皆様のTLに散見されたところと近しい感想でした。思わず身体揺らしちゃうタイプの。イントロからダンサブルなビートにピコピコみのあるコミカルな音が重なることで「いまから楽しい時間が始まるよ!!」という雰囲気を一気に醸し出してくれるので、イントロの仕事として5億点をすでに叩き出しています。音像でどんな振り付けがつくんだろうか、といったところまで割とイメージできるような世界観の強度がありました。
このコミカルさについては下記のnoteを引用させていただきますが、まさにこちらの方が書かれている点が本作の楽曲面でも、後述するMV面でも発揮されていたような気がします。
また私は「声も楽器である」論者なので歌唱も楽曲の総体としてのメロディーとして捉える節が大きく、故にあまり歌詞を聞き取っていない(?)こともありますが、そうしたメロディーを構成する要素としての歌唱は、今回歌唱パート+台詞あるいは合いの手的に挟まれるパート(OKー!とかも含む) の大きく2要素で構成されており、台詞は主にモノローグ的な扱われ方をしているように思います。MVはこれを受けてミュージカル風にしたんじゃないかなと思うわけです。歌詞に載ってない「パーパーパラッパッパ!」とか最高じゃんね。
↑これを思い出した、そして乃木坂の『ポピパッパパー』はこれのオマージュだったんだろうなと今更ながら思い至った
あと間奏はギターが思ってた数倍遊びまくってて、これレコーディングのときのギタリストさんめちゃくちゃ楽しかっただろうな、とこちらまでニコニコになってくるような音が出ています。たぶんライブで聞いたらエアギターしちゃうと思う。
上記で触れた間奏以外にも、通底しているのは「遊び」の感覚で、これは基礎がないと成立しない類のものであり、守破離や型があっての型破り、のようにこれまでのあゆみで固めてきたものがあるからこそ、今回このような楽曲にチャレンジすることができたのだと思っています。
ちなみに作曲を手掛ける塩野海さんは日向坂でのワークスは初だと思いますが、彼が手掛けた作品群を見ると、雨宮天さんや鬼頭明里さんといったいわゆる声優畑のアーティストからCHEMISTRYやKEYTALK、またアイドルではCYNHN(これでスウィーニーと読ませるの初見殺しが過ぎると毎回思っている)だったり、古くは私立恵比寿中学も手掛けていたようでした。『老醜ブレイカー』の文字列に懐かしさのあまりクラクラしてくる。改めて作曲家としてこの楽曲を夜に産み落としてくださりありがとうございます。この先も日向坂のワークスに欠かせないクリエイターのひとりになってくれたらなあと思うし、塩野さんの手掛ける日向坂楽曲をどんどん聴いてみたい、そんな気持ちになりました。
MV
たぶんMVは上記の『雨に唄えば』が下敷きになっていると思っています。勝手にですけれども。
ミュージカル形式なのもこのあたりからなのかなとか。違いとしては『雨が降ったって』においては実際には一切雨が降っていないところですけれども、これもあくまで「雨が降ったとしても」いいじゃんという方向性という部分の表現なのかなと思ったりはしています。
MV全体の大まかな設定については下記の小西夏菜実さんブログに記載されているのでこちらを基底にしつつ、以下はMVのキャプチャと共に相席食堂方式で進めていきます。
好きポイント
小西夏菜実さんへ
・はじめに
おはようこんにちはこんばんは。ぎんちゃんです。通算でいうと8通目のお手紙でしょうか。前回が去年の8月とかなのでめちゃめちゃ間空いてしまったけれど、この期間に日向坂にとっても、そして夏菜実ちゃんにとっても色んな転換点があり、その瞬間を全てではないにせよ幸運にも追えている身からしても、伝えたいこと、ここが良かった、ここに感動した、とか伝えたいことがたくさんあるので、すでに始まっている11thミーグリで伝えている部分と重複するところもあるかもしれないけれど、こうして伝えさせてください。例によってトピックごとに書いていくのでどこから読んでいただいても大丈夫です。それではどうぞ。
・『雨が降ったって』の話
まずは改めてセンターおめでとう!!!!発表された瞬間は公式アプリの通知で「フォーメーション発表!」と出てきたのですぐさま特設ページに飛んだんだけど、ページがロードされて表示される瞬間になんだか確信めいたものを感じたりしていました。確認した瞬間はめっちゃガッツポーズしました。嬉しかった。後にも書くけれど、新参者公演を経てのツアー追加公演だとかを見てきたり雑誌でのインタビュー(BLTグラフとか)の中でも、四期生として乗り越えてきたもの、結束、その中での自身のパフォーマンスへの内省と向上心だったりが語られていて、だからこそ僕は夏菜実ちゃんのパフォーマンスに心揺さぶられるんだな、とその真摯な姿勢に胸打たれていました。
そんな夏菜実ちゃんセンターの楽曲どんな感じなんだろう、とワクワクしながら音源解禁されて聴いた瞬間の私、日本で一番笑顔だった可能性あります。ハピネスなパーティーチューンでありながら、「雨が降ったって」という困難でさえも楽しんでやるという実は力強いこの姿勢を軽やかに歌い上げているのがめちゃめちゃ好きです。ミーグリで注目してほしいところは?って聞いたら「私の高いところ(高音域)の歌い方!」と言っていた理由もわかりました。かわいい。あとめちゃめちゃ歌声が好きです。夏菜実ちゃんは様々な楽曲に対してその世界観を掴んだうえで自身の解釈に落とし込んでいる、ように僕は受け取っているので、こうしたコンセプトもまた引き出しの一つになったというか。ただ、小西推しからするとお茶目で人を楽しませるところ、また自身が楽しんでいる時の目の輝きだったりもこの楽曲MVからにじみ出ていた気もしていて、それは四期生という愉快な仲間たちがいることもめちゃ大きくて、キラキラしているがゆえに泣きそうになる瞬間もあります。オタクはよく泣く生き物なんです。夏菜実ちゃん初センター楽曲が『雨が降ったって』であることがたまらなく嬉しいし、だからこそライブで早く体感したい!!となっています。素敵な楽曲を届けてくれてありがとう。最高です。
・ひな誕祭月星の話
これもミーグリで伝えたら「ぎんちゃんのお手紙生で読まれてるみたいや」と言われたやつですね笑 なのでちゃんと手紙にしました(?)
僕が現地に行ったのは1日目(土曜日の方)なので京子さんの卒コン翌日という流れの中、このちゃんの曲振りから月星衣装でセンターに夏菜実ちゃんが映った瞬間から微動だにできないくらい魅入ってました。後日ブログに書いていたけれど、京子さんに月星で表現していることを聞いて、その上で「小西夏菜実センターの月星」にちゃんとなっていたのが素晴らしかったなと思っています。あなたのパフォーマンスは確実に多くの人の琴線に触れているんだよというのは伝えたいです何よりも。僕たちファンからすると見えていない部分もたくさんあるわけだけれども、ここに至るまでに色んなものを積み重ね、悩み、拓いていったんだなというのがときに言葉よりも格段に雄弁なのがパフォーマンスで、夏菜実ちゃんをはじめ四期生みんなからそれをビシバシ感じたのがあの月星だったんですよね。頼もしいんですよ四期生って。ほんとうに。
・のびラジの話
レギュラーおめでとう〜〜〜、すでに3回やったのかな、ロッチさんの温かく受け止めてくれる感じと、タッグを組むメンバーとの掛け合いで見えてくる関係性とか含めて楽しくて、1時間は体感5秒です。いつかの手紙で聞いているラジオについて質問したら「ANN!誰のかは秘密!」と返してくれたのを覚えていますが、そんなラジオファンでもある夏菜実ちゃんがパーソナリティーになることが僕はたまらなく嬉しいです。日向坂にはラジオ経験豊富な先輩も数多く居るからこそ頼もしいし、あとNHKラジオってほんとに全国で聞けるんだよねたしか。のびラジを大事にしていくこともそうだし、いずれは神戸でのラジオ仕事なんかもあったら夢拡がるな、なんて思ったりしています。応援しているよ!
・新参者の話
時系列がどんどん戻っていますが、新参者お疲れ様でした!11thではこれが特典映像になっているので書いた後観て当時の感情を思い出したり、ビハインドを楽しみにしています。あの10公演の中でもメキメキと四期生が成長していくところは、生で観た4公演目と配信で観た千秋楽を観ても感じたところだったし、実際あそこで文字通り一体感を手にしたんだと思います。千秋楽ダブルアンコールで「日向坂!四期生!」ってなってたのはぐっと来たな…。あと、夏菜実ちゃんが同期大好きだ!というのがにじみ出ている感じもして良かったです。これはみっちゃんがブログに書いていたように、夏菜実ちゃんは一歩俯瞰で観られるところがあるけど、それはチームを、四期生を、日向坂を、ストレートに言えば愛しているからこそ、行動できる人なんだなと思っているので、かとしが未来虹ちゃんにひなたひで伝えていた風に言うならば「アンタ熱い女だよ!」だし、「三年目のデビュー」で2019年レコード大賞裏のインタビューで竹中監督から小坂さんに聞いていた「めちゃめちゃ日向坂のこと好きですよね」になります。
新参者を乗り越えた四期生たち、めちゃめちゃ存在としてこれまでよりもさらにデカいですマジに。そんな四期生たちを、夏菜実ちゃんを推せて幸せものだなと思っています私は。
・おわりに
今回のお手紙はここまでです。お手紙スパンでいうと半年と少しの期間ではあるけれど、その間にも目まぐるしく変わる状況の中で、日々色んなものを吸収してものにしていく姿には感服するばかりだし、自分も頑張ろうって思えるんですよね。そして今回の11枚目シングルの作品だったりミーグリでお話できること、それらは僕含めいろんな人たちを幸せにしているんだよ、というのは伝えたいですね。日向坂ってすごいし、その中でも僕は夏菜実ちゃんが大好きです。これからも応援させていただきます、という気持ちです。また書きますね。それでは!
おわりに
宮崎のクルスの海ティザーから始まった四期生たちのあゆみが、こうして一回りも二回りも頼もしく成長したという今の姿をひとつの楽曲として、MVとして形になるのってやっぱり嬉しくて、今回推しメンである小西夏菜実さんがセンターであったことも、ここで歌われたハピネス自体が日向坂精神を体現しているところも素晴らしいなと思っているわけです。
発売日が延期になったときには一瞬ザワッとはしたけれども、それでも9月には宮崎でひなたフェスの開催が決定していたり、新たな試みとしての「ひなた坂46ライブ」だとか、決してあゆみを緩めない日向坂は、これからも日向坂でしか為しえない道を切り拓いていってほしいなと思っています。
「明日がどういう日になるか楽しみになってくる」
What a glorious feeling!!