自由帳5頁目「手触り」
スマホを使うようになって
何年経ったか思い出せない。
それくらい、スマホが
我が身に浸透した。
誰が作ったか知らないけど
本当によく出来た道具だと思う。
私が触れてきた電話は
最初が黒電話。
中学生くらいまであれだったと思う。
高校生の時、自宅に
FAX付きの電話がやってきた。
離れた人と、切手もハガキも無しに
文章を瞬時にやり取りできる凄さ。
あの感動は今でも忘れない。
友人に無駄なFAX送ったもんだ。
携帯電話を初めて持ったのが
大学4年の時。
周りに比べて遅かったはず。
確か「俺は携帯は要らない」と
意地を張ってたんだと思う。
友人知人実家に親戚、
必要な電話番号を
記憶している自分を
誇らしく思っていた気がする。
今でもその名残はあり、
師匠宅の電話番号だけは
ずっと記憶している。
今のところ、
それに救われたことはない。
それからガラケーを
何度か機種変…
スマホデビューはいつからだ…?
とにかくスマホに変えた時に
とても嫌だったのが
「ボタンを押さない」
ということ。
指に伝わる感触が無い、
押したという実感が無いのに
文字が入力されてしまう。
違和感と言うか不自然と言うか。
蛇口ひねるから水が出る。
紐を引くから電気が灯る。
リモコン押すからテレビがつく。
そういうもんじゃないのかい、と。
今は当然慣れたが
使い始めは実に奇妙な感覚だった。
確か篠原ともえさんだったか、
選挙の時、投票所に行くと
投票用紙と鉛筆が用意されている。
あの鉛筆で、紙に名前を書く
手触りが良いねと言っていたとか。
凄く素敵な感性だと思った。
デジタルの隙間に咲く
アナログの花を愛でるセンス。
人伝にこの話を聞いて感心して以来、
投票所のあの仕切りに入る瞬間は
いつも心が躍る。
そして毎回、手触りの良さに
うっとりする。
このnoteというやつは
多分スマホで記事を書けると思う。
というか絶対出来る。
でも私は必ずPCを開く。
noteに限らず、
例えば自作の落語台本を書く時も
PCとにらめっこする。
キーボードを叩く感触、
この手触りが自分には
とても大事なことなんだと思う。
スマホの無感触入力で
長文を書ける気がしない。
LINEくらいならちょうどいい。
これからもっともっと
ツールは進化するだろうし、
もしかしたら頭の中で
文章を想像するだけで
目の前のビジョンに入力される
時代が来るかもしれない。
普段はそのモード切っとかないと
死ぬほどうっとうしいだろうけど。
だとしても、出来れば自分は
キーボード叩いていたい。
あのジジイ、まだPCなんか
使ってんのかよと言われても。
が、ここまで言っといてなんだが
私は死ぬほど字が汚い。
投票所で人の名前書くくらいなら
手触りうっとりで終われるが、
それが例えばお世話になった方への
お礼状を書きましょうとなると、
己の反吐の出るような悪筆のせいで
手触りを楽しむ風雅な時間は
全く訪れない。
願わくば、私からのお礼の言葉は
メールにさせてもらえまいか。
その代り、一文字一文字
心を込めてキーボードを叩くから。
いや、やはりお礼状は
手書きが良いと仰るなら
人名くらいの短文、
「ご馳走様」「ご来場御礼」
「ご祝儀感謝」「また仕事ください」
これだけハガキに手書きするから
怒らず受け取ってくれまいか。
それもお嫌ということなら
頭に想像したお礼の言葉が
お世話になった人の脳内に
直接届くツールを
誰か開発してほしい。
手触り?いいよ別に…。
電話したら良いじゃんって、
思った人、いるかしら?
私ね、人と話すの苦手なのよ…。
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