美味しいは味だけじゃない
完全にやってしまった
甘いマッシュカボチャを作ろうとして、砂糖と塩を間違えた
今日日漫画でも見ないミスである
数年に1回このミスを犯すので、ラブコメキャラクターの面接があったら1発で通るだろう
無い面接に受からせることで自分をフォローしてみる
効果はイマイチだ
ひとまず味見をしてみる
苦い
もうしょっぱいをとうに通り越している
心なしか舌もピリピリしている気がする
味蕾達も「これ本当に口に入れて大丈夫ですか?」と口々に叫んでいる
完全に致死量の塩を入れてしまった
慌てて牛乳と砂糖を足し、どうにか薄まらないかと願う
味見
苦いからしょっぱすぎるに昇格したものの、まだ寝込むレベルで塩味が強い
私が小動物ならすぐさまばたんきゅーの一発KOだ
そして味としてはやや濃くなった気がする
砂糖と塩って相殺しないんだな…
そもそも『あまじょっぱ』というジャンルがこの世に存在してる時点で、
相殺しないのは明白なことに時差で気付く
早くもリカバリー方法は万策尽きてしまった
このまま食卓に出すわけにはいかない
捨てるしかないのか…
そのときひらめいた
パンに乗せてはどうだろう
おかずをいっぱい乗せる食パンのアレンジレシピ、良いな~と思いつつ面倒でしていなかった
絶好のチャンスかもしれない
ピンチはチャンスとはこのことかと思いつつ、帰ってきた彼に事の顛末を説明する
快諾して貰い、パン作戦に付き合ってもらうことになった
成功したおかずで夕飯を済ませ、早速ポップアップトースターにパンをつっこむ
ポップアップトースターは去年の春に新生活に合わせて手に入れたものだ
絶対に朝をワクワクさせるアイテムだと信じて疑わなかったが、
いざ使ってみると朝は眠すぎてワクワクどころではないことを知った
初めての夜使用で、1年越しのワクワクと共に元気にパンが飛び出した
早速カボチャを乗せてみる
良いんじゃないか?
皮の処理が雑で所々緑だけど!
いただきます
…何かが足りない感
後味だけしょっぱいし、まずくはないけど大成功って感じでもない
まずくはないが先に来ちゃうしな…
ややしょんぼりしていたら、横から
「おお、良いんじゃない?」
と聞こえた
「北欧では真冬にこういった食事をしていますよ~って言われたら納得する味よ、洒落てるじゃん」
北欧では真冬にこういった食事をしていますよ~
それを聞いた途端に、異国のお洒落な朝御飯の味に思えてきた
してそう、こういうややしょっぱいカボチャペースト乗っけてそう!
文化の知識は何も無いけれど!
急に美味しく感じ出し、テンションもあがる
言葉ってめちゃくちゃ大事だな
言語使いの味覚改変魔神に感謝をしながら、日本の夜に北欧の朝を想像しながら平らげた
物事を柔らかに捉えられる人間と暮らしていると失敗も悪くないから助かる
気持ちもお腹も良い感じに満たされた夜だった