苦手な運動がある、ということ
長年、ゆるトレーニングをやっていて気になっていることの一つに、人によって苦手な動きがあるなあ、というものがあります。
わかりやすい例でいうと、クネクネ、モゾモゾ、クルクル、プラプラ、といった擬態語のある運動がそうでしょうか。
苦手な運動があるなんてそんなの当たり前じゃないか、と言われればそうなんですが、今回はちょっとそのへんを考えてみましょう。
例えば回転系の動きです。
ざっくり言ってゆる体操には、踵クルクルや手首から前腕、肩関節などの軸周りの回転運動、または、肩ユッタリ回しやベストのローター、サイクルなど筒状の大きい回転の運動があります。
それら片方が苦手という場合もありますし、両方苦手という場合もあります。
本人としては一生懸命取り組んでいて、人からアドバイスを受けてなお、そういった回転運動がうまくできない人を見ていると、ああ、この人は「回転させる」という運動が苦手なんだなあ、思うことがあります。
たぶん、小さいころから何かを回転させる運動をあまりやらなかったとか、苦手でやりたがらなかったとかで、十分身につかなかったのではないかと思います。
例えばコーヒーミルのハンドル(水平についてるものでも垂直についているものでもどちらでも構いません)みたいなものを回すときに、きれいに突っかかることなく回せて、どんどん豆が挽ける人と、無駄な力が入ってスムーズに回せず、豆を挽くのに時間がかかって、本人もストレスや疲れがたまるような人がいます。
コーヒーミルのハンドルをスムーズに回すためには、ある程度脱力しながら、ハンドルの回転に合わせて適宜加力をして回していくわけですが、そのとき無意識で描く円軌道の滑らかさというのは、人によって全然レベルが違うわけです。
ハンドルの機構通りのきれいな円を描く人もいれば、歪な円を描く人もいるし、場合によっては楕円に近くて引っかかりを感じながら回す人もいます。
回す、という能力に非常に差があるわけです。
このような回転運動は、たとえば自転車のペダル、自動車のハンドル、ドアノブ、水道の蛇口、ペットボトルのキャップなどなど、人間の文明社会にはたくさんあるわけですが、達人になろうとする人はこれらの回転動作を無常になめらかに行いたいものです。
また、腰モゾモゾ体操などを見ていると、モゾモゾというよりも、カクカク、ガシガシ、というような運動をしている人がいます。
それについて、他の人から指摘されて改善される場合もあれば、全く変化がない人もいます。もちろん本人は(その時は)変えようと努力しているにも関わらず、です。
腰モゾモゾ体操自体で改善するのではなく、他のゆる体操や達人調整によって、拘束が解消された結果、モゾモゾがうまくなるということもありますが、身体がゆるんでも以前と同じ動きのパターンを繰り返して変わらない人もいます。
身体がゆるんだ、という結果が運動に反映されず、今まで持っていた動きのプログラムそのままに動く傾向の強い人がそうなるのではないかと思います。
で、こういうものは、うまくできる人は、最初からある程度の水準でできてしまうことが多いんですよね。
そして、掴めない人は10年やっても掴めない。ずっと取り組んでいてできないというよりも、その現象がうまく上達の対象として捉えられていない場合が多い、という印象です。
この問題について、自分はどうしているのかというと、一つは、外部でシミュレーションできるものがあればそれを使って、観察し、感じ、味わい、自分の身体の運動に取り込んでいく、という方法をとっています。
たとえば「プラプラ」だったら、皆さんおなじみのゆるゆる棒を袋に入れた状態でプラプラさせて観察したり、どうやったら効率よくプラプラさせられるのか、とか、逆にプラプラしない状態ってどういうことだろう?とかやりながら、面白がってシミュレーションします。
「クネクネ」だと、重いヒモとか濡れタオルを垂らして、波みたいな動きをさせながらシミュレーションするとか。
この外部の物体でシミュレーションする方法の面白いところは、ある運動が苦手な人は、外部のものを使って同様の運動のシミュレーションすること自体もうまくない、ということです。
クネクネが苦手な人は、たいていヒモやタオルをクネクネさせることが難しい。
(それでも自分の体を運動・制御するよりは、外部の物体のほうが容易いと思います)
そして、それゆえにその運動をつまらなく感じ、飽きやすい。意味のない、価値のないことと考えてしまう。ゆえに身につけづらいと考えられます。
苦手な運動を後天的に身につけることは大変なことですが、最初からある程度できる人にくらべ、深く研究・理解し上達するために、むしろ人よりも得意になる可能性があります。
自分の例でいうと、私はもともと体幹部が太くもっさりしていて、あまり動かず、背骨クネクネ系の動きは苦手でした。
しかし、ある時期に寝ゆるでモゾモゾとクネクネ系のゆるをやりこんだ結果、今ではかなり動くようになって、むしろ得意な動きになりました。
自分の苦手なことを克服する、できないことをできるようにする、ということ自体、私も決して得意ではありません。
しかしながら、ゆる体操で開発した能力というのは、単に身体運動にとどまらず、そこに該当する脳が開発され、鍛えられているということでもあります。
それまで、動かなかった、使えなかったパーツが使えるようになるということは、動きの多様性を作り出し、またそれは、認識の多様性を作り出すことにもつながります。
そんなわけで、今日も擬態語をつぶやきながら、よりモゾモゾ、クネクネ、プラプラできるようにトレーニングしていきたいと思います。
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