雪深し、懐深し、山形への旅(初日)
20年ぶりに、知人を訪ねての米沢・山形への旅。どうしても、年内に行かねばらないため、仕事を巻きにまいて、午後一からの出発となりました。思えば、日中に乗る東北新幹線は久しぶりだし、山形新幹線は初ということで、テンション高く、当日を迎えました。
晴々と上野駅を出発
さて、いつものごとく、北に向かう旅は、上野駅からスタートということで、グランドコンコースには、浅草寺の羽子板市の暖簾。実感が湧かないですが、あっという間に2022年の年末。
地下ホームまで下りて行きますが、新幹線は雪の影響で、10分、15分遅れの案内が流れています。東京行き上りの新幹線は15分遅れで到着。あまりにも遅れると、米沢駅からのバスに乗れないので、ちょっとひやひやでしたが、10分遅れでつばさ139号に乗ります。
地下ホームから浮上して来た新幹線は、日暮里、田端と本郷台の台地の東側に沿う形で、飛鳥山の方に向かいます。久しぶりに新幹線から、この台地際を見ていたら、ずいぶんと新しいビルや住宅が、もはや台地の崖が露出しているところはほとんどありません。
東京・都心は雲一つない晴天、気温は結構上がって来て、15度くらい。荒川も気持ちよく通過していきます。遠くにはうっすらと富士山も見えます。
本日は冬型の気圧配置という衝撃!
宇都宮が近づくと、車窓左手、北西の方には、男体山と日光の山々が見えてきます。雪がうっすらとかかっています。低い雲も少しずつ、増えてきました。鬼怒川を渡り、那須塩原を通過して、那須岳の南側の山から、なだらかな那須岳の麓あたりを通ると、山の方は明らかに雪が降っています!
今日は冬型の気圧配置がだんだんと強まってるということで、天気図、衛星画像を見れば、こんな感じです。
阿武隈水系の荒川を渡ればすぐに福島駅です。少し山手になっている部分ももう雲?、雪?で覆われていてます。
福島駅を出ると、東北本線に別れを告げて、山形新幹線・奥羽本線は右に大きくカーブして、西北西に進み、いよいよ日本の背骨、奥羽山脈に突っ込んでいきます。
庭坂駅通過して、列車は山に沿う形で、大きく右に左にS字カーブを描いて、山手に進入していきます。勾配は、最大で33‰(1000m進むと33m上がる)、新幹線といえども、速度は出せません。そして、雪がちらついていたと思ったら、あっという間に、雪景色!
新幹線の静かな車内、外は銀世界が広がり、奥羽本線の難所、板谷峠を抜けていきます。
上野駅から、ここまで1時間40分。国境の長いトンネルを抜けると、そこは『雪国』…を書いた川端康成は開通間もない上越線の清水トンネルを記しましたが、改めて、日本の誇れる文明の利器、新幹線はスゴイ!在来線を活かしての山形新幹線、川端康成が生きていたら、さぞかし驚いたことでしょう。
峠駅を通過。板谷駅、峠駅とスノーシェッドで覆われているとは知りつつ、現実をみれば、「ここには絶対に必要です!」ということを痛感。
明日は、鈍行で、峠駅でも寄りながら帰ろうかなとか考えてましたが、とんでもない…、甘すぎました。そうこうしているうちに、米沢盆地、平野部を直進して、米沢駅到着です。
来ました、米沢!20年前に来た時とこの広々とした開放感ある駅前の雰囲気は変わらないです。20年前、上杉鷹山のことを考えながら、この地に来たことを思い出しました。
「長靴貸します!」 白布温泉へ
10分遅れで到着したので、急ぎ、バスのりば確認。ここから路線バスで、白布(しらぶ)温泉に向かいます。寒いので、駅舎で待機して、3分前にのりばに行くと…。
入って来たのは、中型のマイクロバス、運転手は女性。そうだよなぁ、路線バスで大型のバスと思ってましたが、そこまでニーズがないだろし、現実的な選択。実際に駅から乗ったのは3名なのでした。
市街地を抜けて、猪苗代の方へ抜ける道を路線バスは行きます。郊外に出れば、もう50cm以上の積雪があります。
天気が心配で、旅の前日、会社から直行することを宿に伝え、革靴はやめた方が良いですよね?と聞くと、「はい、できれば…、宿にいる間は、長靴貸しますよ」と。それを聞き、背広に、トレッキングシューズで出社。正解でした。
まだ4時半も回っていないのに、だいぶ暗くなって来ました。これは、明日山を降りれるのだろうか…と考えているうちに、白布温泉に到着。
女性の運転手さんに尋ねると、「今朝も、そこまで降らなかったので、大丈夫だと思いますよ」との明るい回答!この言葉を信じて、バスを見送りました。
ここまでバスで乗ってきたのは自分ひとり。バス停を降りたら、目の前が本日宿泊する「西屋」。バスに合わせて、宿の方が玄関前で迎えてくれました。食事処、お風呂の場所など事前に少し案内してもらい、部屋まで丁寧に導いてくれました。
ちょっと散歩に出かけ、られません…
さて、本館の1階、一人部屋に案内してもらいましたが、家屋は100年以上前のものということですが、手入れが行き届き、至極快適な部屋。ここでクリエイティブな仕事をしても没頭できそう。
廊下側も、外側も、二段階になっており、寒さにも十分に配慮されてます。しかし、暖房を入れなければ、室内も廊下も、5度前後です。
荷物を置いて、暗くならないうちに少し散歩しようと、「散歩に出かけます」と伝えて、ひとまずこの周辺ということで、長靴は借りずに、外に出ます。ちょうど、スキー帰りのお客さんと入れ違い。
ふと玄関の上を見上げれば、大きなつらら。ちょっと玄関には温泉を流してくれているので、雪はないですが、久しぶりの怖そうなつららを見ながら、繰り出しては見たものの、とても遠出はできません。近くの案内板まで歩いて、そそくさと退散。しかし、雪をかぶった西屋は趣有り!
濃ゆい温泉に言葉失う…
白布温泉は、開湯から700年、西屋も開湯間もない頃から存在したらしく、自噴の温泉で、流量も豊富とのこと。また、西屋は秘湯の会にも所属、楽しみにしながら、まずは空いているか、家族風呂に向かいます。蛇口には、温泉析出物がびっしり。まだ水道の蛇口付近は新しめなのに、こんな状態ということは、随分濃厚な温泉の気配。
家族風呂は、こじんまりしてます。若女将さんに「熱いですから、お気を付けて」ということでしたが、源泉かけ流しということで、確かにすぐに入れない…。かけ湯繰り返して、さすがに少しだけ水を入れさせてもらって、入浴。
身体に染み入る熱いお湯で、よく見ると、無色透明の湯なのに、白く細長い結晶状の湯の花が浮いています。しかもかなりの量。白布温泉は、カルシウム-硫酸塩泉なので、硫酸カルシウムでしょうか、こんな量が飽和したかのように湯舟を舞っているのは初めて!余りのいいお湯に、一人静かに浸ってしまいました。
米沢牛のすき鍋で、就寝Zzzzz…
夕飯は、20年ぶり!?の米沢牛。あの時は、仲間とバーベキュー、賞味期限当日の半額になった米沢牛を買い込んで、初米沢ステーキ肉を食し、柔らかく、塩コショウだけでも十分行ける肉に、顔を見合わせて、これまた絶句したのを思い出します。それ以来か…。
郷土料理の冷汁(素揚げした蕎麦の実と野菜などを煮だした汁もの)や地のおばんざいもお好みで取る形で、いたずらに豪華ではなく、素朴で充分美味しく頂きました。
ということで、夜はメインの「滝の湯」に浸かりましたが、ここは「2日のつづき」にて…。
21時を回われば、廊下は照明も落とし、外は小雪が舞い、山奥の湯宿の館は歩く音も響き、ひっそりと夜が更けていくのでありました。(つづく)