Nioi
一番覚えてるのは兄ちゃん達の部屋の匂い
男臭くて、汗臭くて、本人達がいなくてもにおいはそこにあった
姉ちゃん達の部屋はそんなことないのに、今思うと下宿先みたいで賑やかで生命力に溢れてて楽しかった
時が流れ部屋から一人ずついなくなった
最後に残ったのは俺とお母さんだけだった
当たり前の7人が2人になった
あんなに狭くてうるさかった家が、広くて静かで寒かった
時々3人になる家はモノクロで、不安定で、怒りと憎しみが渦巻いてた
だから4人はいなくなったんだ
俺は1番幼く無知で置いていかれたんだ
気付いたのは大人になってからだった
4人は本能的に気付いてたんだね、ドス黒くへばりついてくる気配を
気付いたら俺もそこを離れた、言葉にならずただ嫌だった
きっかけは一匹
幼い時にもらってきた白い天使
いつもそばにいてくれたあの娘が旅立った
帰りたくないけど、電話で知った
今でも覚えてるお腹の傷跡
家族の前で恥ずかしかったけど止まらなかったよ涙
本気で呼んだら目を覚ましてくれると思ってた
ありがとう俺に力をくれて
今も大好き、うちに来て幸せを教えてくれた
今ではたまに6人で集まるよ実家
たまに帰ると昔と違うにおいに慣れない
でも集まるよ6人、家族が増えて11人
匂いは違うけど続いてく毎年
1人は特別、許せない人間
それでも続く道、歩いて行こう
明日はどんな匂いかな?
東京の家に帰るとあの時の男の匂いがした。