【交換小説】#待ち時間 1

レジに並んで既に5分経過した。カップ麺、その一点を買おうと並んだこのレジ。私の前に並んでいる人は女性たった一人。なのに、もう5分経過している。普通ならレジでお金を払い終え、ホテルに戻り部屋で湯を沸かしている筈だ。レジの女店員と、前の女客が、知り合いであることはわかる。が、少しお喋りが過ぎませんか？私は列島から遥々、海を渡りし観光客ですよ？あなたのお店も観光客無しでは成り立たないことを知っているだろう？屈辱…。小さな私はこの巨尻サモワ女二人に見えていないというのか？真珠湾攻撃の時、戦死した日本兵の霊として扱われているのか？わたしは、この二人が日常会話をしているのを、ただただ後ろでカップ麺だけを持ち立っているこの時間を憎んだ。英語は皆無です。なんとなく付き合いでハワイまで来た者の罪なのか？二泊過ごし、コンビニで買い物くらい一人で大丈夫だと、気が大きくなったのが間違いでした。「エクスキューズミー？」すら言う勇気もタイミングも失い、より背中を丸くさせ、自ら存在を消す始末。嗚呼、私はアジア人なんだと、いま海外の地で痛烈に感じている。おおらか？南国で育った人間とは時間の感覚が違うのか？日本の時間感覚でレジに並んだ自分が悪いのか？いやいや、先に私のレジを済ませてからでもお喋りは出来る筈だ。寡黙。日本の美徳。黙って待つ。帰りたい。日本に。こんな思いをするなら熱海でいい。

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