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【交換小説】#待ち時間 3

トランクの中から、エンジンがかかる音が聞こえ、車は走りだした。エンジン音に混ざりながらラジオからうっすらと聴こえるハワイアン。本来ホテルでカップラーメンを出汁を啜っている筈なのに。体が震えている。まさか常夏に来て寒い思いをするとは思いしなかった。日本を経つ夜、CSで放送してたレザボアドッグス。荷造りしながら観てたけど、トランクに閉じ込められた警官のシーンとほぼ同じ状況だ。真っ暗なトランクの中、胎児の様に丸まり、私は死を感じた。眉毛の繋がった男は一体私をどこへ連れて行くつもりなのか?ここは既に棺桶の中かもしれない。死にたくない。嫌だ。

「help me!!!」「help me!!」

闇雲に何度も叫んだ。先程まで「エクスキューズミー」すら言えなかったしゃべり足らんティーノが…なりふり構わず叫んだ。火事場の糞力、、いや、火事場の糞英語だ。。

車はどんどんと加速していく。アメ車のボディは分厚くまるで鉄板で、トランクの中は熱くなり、魂の叫びがどこまで外に漏れるのか?暴れてもビクともしない。わたしが何をしたというのか??こんな理不尽なことなどあるのか?海外で事件に巻き込まれてきたこれまでの日本人も大抵こういうものなんだろうか?運?ただ運が悪い?そんなものなのか?突然、両親の顔が思い浮かんだ。小学生の時の思い出。高校で初めて付き合った彼女。金木犀の香り。矢継ぎ早になんだ?鮮明な幻?所謂走馬灯というやつ?暗闇だから?少し出てくるの早くない走馬灯?

その時、車が停車した。走馬灯は消え、意識がはっきりとした。私はこの時ほど「生」を感じたことはない。トランクがゆっくりと開き、暗闇に西日が突き刺してきた。目を細め、眉毛の繋がった男を再び確認した私は、間もなく殺されることを悟った。

眉毛は私を軽々と掴み上げ、スペアタイヤの様に外に放り出された。足に力が入らず、私は人形の様に倒れた。倒れた先を見るとまた違う男が立っていた。西日を背負うこの男に殺されるのか?ん?

伊藤?伊藤か?

眉毛の隣りに立つもう一人のその男は、私と旅行を共にしている…伊藤ではないか。

#交換小説 #短編小説

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