お蔵入りの台本で終わらせずに
これはある入場無料のイベントに使う予定だった台本です。ですが、諸々事情があり使えなくなってしまいました。ですが、内容がなんでも時間をかけて作った台本ということに変わりはありません。"物書きはしポてち"としてのある意味2作目でもありますから。
ですから、このままお蔵入りになってしまうのはあまりにもやるせないので、このnoteで晒すことにしました。内容は至ってシンプルですので、don't think feelな気持ちで読んでも分かりやすい作品となっております。
(ちなみに原案の方からは了承済みです。)
タイトル
「老人と幸せ~遺言状咲く想い~」
原案・山崎すずたろう
脚本・はしポてち
※諸事情により役名は変更しています。
2020年9月8日、午前8時55分。
柱は淳之助が所有している家のリビング。
若妻が誰かと電話している。
若妻「………ええ。順調に進んでいるわ。あの人は完全に私に夢中よ。もう1年経つからね。………そうよ、この辺でお開きにするつもり。……………何言ってるの?私はやると言ったらやるの。これもあなたのためだからね。…………うーん、そうねえ…、今日の昼。今日の昼で全て片付ける。そしたら”遺産”はあなたのものだから。………大丈夫、策は練ってあるから。………止めても無駄よ。私はやるから。じゃあ、待っててね。」
若妻、電話を切る。
その途端、廊下(舞台袖)から咳払いが聞こえる。若妻、慌てつつも平然を装う。
ヘルパー、若妻を一瞥しながら何事もなかったかのように入ってくる。
ヘルパー「…おはようございます。」
若妻「おはようございます。」
ヘルパー「(若妻に目もくれず)本日もよろしくお願いします。」
若妻「こちらこそ。」
ヘルパーは準備に取り掛かる。暫く無言が続く。
若妻「あ、淳之助さんは今トイレにいます。」
ヘルパー「そうですか。」
若妻「それにしても今日は珍しく快晴ですね。」
ヘルパー「ええ…。」
ヘルパーのモノローグが始まる
ヘルパーM(モノローグ)「皆さん、見ましたか?聞きましたか?”遺産”です!こいつ遺産狙ってんですよ!うわ~、マジ最低!淳之助さん、若い女性と結婚して楽しそうだったからあんまこんなこと疑いたくなかったけど、やっぱそうだったか~!つうか何事もなかったように話題振ってんじゃねえよ、も~!…あっ、申し遅れました。僕は淳之助さんのヘルパーを担当している者です。淳之助さんとはもう10年の付き合いでして、お互い言いたいこと言い合える仲なんですけど~…。淳之助さんは数々の企業の株を所有する投資家で、何でも莫大な額の財産をお持ちだそうで。それ故にお金目当てに寄ってくる女性も多く、淳之助さんは自分がモテてると勘違いしているそうです。違うんです。皆、金!金が目当てなんですよ!あ、先に断っておきますけど、僕は遺産なんて興味ないですからね。本当ですよ!」
ヘルパーのモノローグが終わる。
ヘルパー「では、私は淳之助さんの様子を見に行きますね。」
若妻「ねえ、待って。」
ヘルパー「!!」
若妻「アレ、聞こえたでしょ?」
ヘルパー「アレって何ですか?」
若妻「しらばっくれるの?電話よ、電話。」
ヘルパー「……。」
若妻「ねえ、どうなの?」
ヘルパーのモノローグが始まる。
ヘルパーM「本性キターー!え、開き直っちゃったの!?てか早くね?まだ2分も経ってないですけど~!こいつ何考えてんだ?まさか命を…。うわっ、ヤバいヤバい。とりあえず、どうする!?どうするの、俺ぇぇぇぇぇ…!」
ヘルパーのモノローグが終わる。
ヘルパー「…聞いてたらどうするんですか?」
若妻「そうねえ…、私と協力してもらおうかしら。」
ヘルパー「えっ?」
若妻「(ヘルパーに近づき)大丈夫、あなたにもいくらか取り分を分けてあげる。あのおじいさんの遺産を手に入れれば、(背後に回り)こんなヘルパーなんて仕事辞めてずぅ~っと遊んで暮らしていけるのよ。どうやるか策はちゃんとある。あなたは私の指示に従ってればいい。そんな難しいことをさせないわ。どうする?やるの?」
ヘルパー「……そんなこと駄目だ!俺はそんな話乗りたくない!」
若妻「ふぅん、偽善者ね。つまらない男だわ。」
ヘルパー「淳之助さんは俺が守る。」
若妻「だけどあの人は私の味方よ。」
ヘルパー「俺は淳之助さんと10年の付き合いがある。」
若妻「でも1年の私に勝てないでしょうね~。何せ結婚してるから。」
ヘルパー「くぅ…。」
若妻「まあ後でどうなっちゃうか色々と後悔すればいいさ。」
ヘルパー「あの…!」
若妻「?」
ヘルパー「(手でお金のサインをしながら)…いくら…?」
若妻「うーんそうねぇ…って、アンタ乗り気じゃないの。」
ヘルパー「いや、もしもの話だ!仮定だよ、仮にだよ!」
若妻「はぁ~面倒くさ。事情を知った以上アンタはどの道…、」
淳之助(声)「おぉ~い、来てくれ~。」
舞台外から淳之助の声がする。
ヘルパー「はぁ~い。」
ヘルパー、若妻を一瞥し舞台から退場する。ヘルパーが去った後、若妻はイライラしながら考え込む。
以降、ヘルパーと淳之助は声のみの会話。
ヘルパー(声)「おはようございま~す。」
淳之助(声)「何だお前か!俺は愛しのマイハニーが来てほしかったぞ。」
ヘルパー(声)「そんなこと言わずに~。ほら、行きますよ!」
淳之助(声)「お前の手などいらん!俺一人で行く!」
ヘルパー(声)「もぅ、わがまま言わないで下さいよ。僕に掴まって下さいね!」
淳之助(声)「いらんと言ったらいらん!」
ヘルパー(声)「はいはい。さぁ、行きますよ。」
淳之助(声)「やめろぉ~、マイハニー助けてくれぇ~!」
淳之助、ヘルパーと共に掴まった形で登場する。淳之助は杖をついて歩いている。
淳之助「…もういい!もういいから、放すんだ。」
淳之助、ヘルパーを払いのけ、自力で椅子に座ろうとする。
しかし、なかなか座れずぎこちない様子が続き、ヘルパーが駆け寄ろうとすると、若妻が先駆けて淳之助を介抱し座らせる。
若妻「私に掴まってね、…はぁ~い。」
淳之助「おお~ニーナた~ん。ありがとう。……ふぅ。ほれ、ニーナたん。こっちおいでや。」
若妻「うん。」
若妻、淳之助の隣に座り、若妻は淳之助にもたれかかる。
淳之助、若妻を可愛がるように頭を撫でる。
淳之助「おお~、よしよし。」
若妻「やっぱここが一番落ち着く。ヘルパーさんに何でも任せて今日は2人でゆっくり過ごしましょ。」
淳之助「おお、そうだね。そこらの家事でもやらせて、昼には買い物に行かせよう。」
ヘルパー「本人の前でなんてことを…。」
淳之助と若妻はアドリブでイチャイチャする。ヘルパーはその様子を見ている。
ヘルパーのモノローグが始まる。その間も淳之助と若妻のイチャイチャは続く。
ヘルパーM「あの女、どう動くつもりだ?買い物なんて行かせたら、誰が淳之助さんを守るんだよ。隙だらけじゃねえか!このままじゃまずいぞお~。あっ、まずその前に体温をっ!」
ヘルパーのモノローグが終わる。
ヘルパー「(淳之助に近づきながら)あの、淳之助さん、本日の体温を…、」
淳之助「ソーシャルディスタンス!」
ヘルパー「ええっ、今更!?てかもう、ここの2人でソーシャルディスタンス関係なくなってるんじゃ…、」
淳之助「やかましい!今日は(今日の体温)℃だ。お前はもう書斎の片付けでもしてこい!」
ヘルパー「え…?」
淳之助「ほれ、早く行かんかい。」
ヘルパー「は、はい…。」
ヘルパー、一旦退場する。
淳之助「ニーナたん、今日は一緒に何しようかの?」
若妻「うーん、あのね淳ちゃん。ちょっとやってほしいことがあるの。」
淳之助「何だね?ニーナたんの頼みなら何でも聞くよ。」
若妻「(立ち上がり)実はね…」
若妻、一旦退場し書類・ペン・印鑑を持ち戻ってくる。
若妻「(持ってきた書類等をテーブルの上に置き)これにサインしてハンコ押してほしいの。」
淳之助「うーんどれどれ…、私、”寺嵜淳之助は財産の全てを妻である…、」
ヘルパーが話を割って戻ってくる。
ヘルパー「(少々息切れをしながら)淳之助さん、あまり散らかってませんでしたよ~。」
淳之助「…を承諾します。”なるほど…。ニーナたんのためなら私の財産全部喜んで~!」
淳之助、高々とペンを上げ書こうとする。
ヘルパー「えっ!?」
ヘルパー、あわててテーブルに置かれた書類の方へ行く。
ヘルパー「わわわわわ~!ダメえええええ!」
ヘルパー、書類を破りくしゃくしゃに丸め捨てる。
淳之助「何だお前は!」
ヘルパー「そんなの簡単に受け入れちゃ駄目ですよ!」
淳之助「お前は俺を馬鹿にしてるのか!?俺はニーナたんに愛があるから了承するのだ!」
ヘルパー「いや、でもこれは…!」
若妻「(嘘泣きをしながら)ひどい…。ヘルパーさんが私のこと信じてくれないなんて…。」
淳之助「おお~、ニーナたん泣かないでおくれ~。(頭を撫でながら)よしよし。(ヘルパーに)おい、ニーナたんに謝りなさい。」
ヘルパー「ええ~、だって…、」
淳之助「謝りなさい。」
ヘルパー「…ごめんなさい。」
淳之助「ニーナたん、いいのかい?」
若妻「うん、謝ってくれるなら…いいかな。」
淳之助「ニーナたんは優しいな~。俺は優しい娘が大好きだぞ。(なでなでする)」
若妻、ヘルパーに指をさし無言で嘲笑う。
ヘルパー「くうぅぅぅぅぅぅ~!!」
淳之助「(ヘルパーに)おい、腹減ったぞ。出前を注文してくれ。」
ヘルパー「はあ…、えーと、リクエストはどうします?」
淳之助「今日も任せる。体に良さそうなのを頼んでくれ。」
ヘルパー「じゃあ頼んできますよ。」
ヘルパーのモノローグが始まる。
ヘルパーM「まずい、こりゃ俺完全に劣勢だ…。このままじゃあの女の思うがままだ。どうにかしないと…。あっ、でも皆さん。今はこんな状態ですが、淳之助さん何だかんだ僕のこと嫌ってないんですよ。去年なんてさ、サプライズとして僕の誕生日祝ってくれたんですよ。意外といい人なんです、あの人。さて、とりあえず僕はウーバーイーツの注文でもしてきます!」
ヘルパーのモノローグが終わる。その後、ヘルパーは舞台端へ移動し、スマホでウーバーイーツの注文をする。
若妻「淳ちゃん、アレの続きしましょ。」
淳之助「う~ん、アレって何だね?」
若妻「(紙のジェスチャーをして)アレよ、アーレ。」
淳之助「ああ~、アレやっとこう。しかし(紙のジェスチャーをして)アレがないぞ。」
若妻「ううん、アレならまだあるわよ。」
ヘルパー「(スマホに夢中になりながら)アレアレうるさいな~。」
若妻、一旦退場し、書類を持って戻ってくる。
以降、ヘルパーに気づかれないようひそひそと書類に着手する。
若妻「(急いでペンとハンコを用意し)お願いね。」
淳之助「ああ、任せなさい。」
若妻、ヘルパーに見えないように淳之助が書いている書類をかくまう。
若妻「(ヘルパーを気にしながら)淳ちゃん、私は嬉しいよ。今までより家族らしい気分だわ。」
淳之助「(書きながら)そうかそうか。俺も嬉しいよ。ニーナたんが喜んでくれて。…はい、これでどうだい?」
若妻「(紙を一瞥して)うん、あとハンコもお願いね。」
ヘルパー「ええ?」
淳之助「おお、そうだった。危うく忘れるとこだった。」
淳之助、紙に印鑑を押そうとする。
ヘルパー「いやいやいやいや、何やってんだぁー!」
ヘルパー、あわてて書類のところへ急ぐ。
若妻「あーまたか、もう!」
若妻、言いながらテーブルの上の紙を取り守ろうとする。
ヘルパー、若妻から紙を奪おうとする。それを若妻は避ける。
ヘルパー「何でまた持ってんだよ!さっき捨てたはずだろ!」
若妻「来ないで!ソーシャルディスタンス!」
淳之助「ソーシャルディスタンス!」
ヘルパー「淳之助さんまで便乗しないで下さい!てかあとこれ何枚持ってんだよ!」
若妻「何枚持ってたっていいじゃない。私の勝手でしょ。」
若妻、家具の裏や自分のポケットから次々と紙を取り出して机に置く。
ヘルパー「(拍子抜けし)…嘘だろ…。」
淳之助「俺のためにそんな…。ニーナたんの愛を感じるよ。」
ヘルパー「いや、内容違うから。」
淳之助「そこまでしてくれるのなら、止めるわけにはいかないな。」
淳之助、印鑑を朱肉につけ、腕を高々と上げ押そうとする。
ヘルパー「ちょちょちょ、ダメだってぇ~!」
ヘルパー、高々と上げた淳之助の腕を押さえる。
淳之助「痛い、痛い!やめろ!ヘルパーがか弱い老人を虐待するのか!?」
ヘルパー「淳之助さんのためですよ!こんなのやめて下さい!」
若妻「(ヘルパーの妨害をし)淳ちゃんに何するの!?」
ヘルパー「痛ってえ!何すんだよー!」
淳之助「ニーナたん、助けてくれえ~!」
若妻「今助けるからね!」
ヘルパー「これじゃ俺完全に悪者じゃねえか~!俺は守るためなのにぃ~!」
淳之助「お前は悪者だ!守ろうとする老人に暴力振るうなんてあり得ん!」
若妻「この悪者!」
ヘルパー「ぐっ、けっこう傷つく…!俺は助けるつもりなのにぃ~!」
淳之助「(力強く)やめろと言ってるだろ!!」
ヘルパー「!!」
ヘルパー、淳之助の声に驚き、押さえてた腕を放す。
淳之助「スキあり!(紙に押印する)」
ヘルパー「ああっ!」
淳之助「(紙を若妻に渡し)ニーナたん、ほれ。」
若妻「やったー!嬉しい!ありがと~!もう大好き!」
若妻、渡された遺言書に喜び跳ねる。
ヘルパー「(崩れ落ち)そんなぁ…。」
若妻「淳ちゃん、今日はいっぱいサービスしてあげちゃうねっ!」
淳之助「おっ、嬉しいねぇ。それじゃあ沢山甘えちゃおうかな~。」
ヘルパー「(2人が喜んでる様子を見ながら)…くうぅぅぅ~!!」
ヘルパーのモノローグが始まる。
ヘルパーM「畜生!負けただと!?これじゃあ淳之助さんの財産が…!俺は淳之助さんを守ると決めたんだ!もうこうなったら…我慢の限界だぁ…!」
ヘルパーのモノローグが終わる。
ヘルパー「淳之助さん!騙されないで下さい!この女に、あなたへの愛は一切ありません!淳之助さんの遺産目当てで結婚したんです!初めからお金が目的だったんですよ!」
若妻「!!…そ、その証拠はどこにあるのよ!?」
ヘルパー「15分前、誰かと電話してたんです!多分男の人でしょう。俺、この耳で聞きましたよ!」
若妻「じゃあその様子を録音でもしたの?」
ヘルパー「あっ、いや、それは…。」
若妻「ほら、何もないじゃない。何言ってるの?淳ちゃん、気にしないでね。ヘルパーさんが言ってることはただの勝手な妄想なのよ。私は、淳ちゃんのこと本当に愛してい…、」
淳之助「足掻(あが)くな、もういい。」
若妻「…えっ?誰のこと…?」
淳之助「ニーナたんだ。(ため息をついて)俺はな、知ってたんだ。ニーナたんが俺の遺産目当てだったことを。何故金目的なのかも。」
若妻「えっ…?」
ヘルパー「えぇ!?」
淳之助「フッ、年寄りを騙そうとしてたそうだが、残念ながら全部お見通しなのだよ。」
若妻「え…、じゃあ何で…。何でそれでもこんな私と一緒にいてくれたの?どうして愛してくれたの?どうして遺言書を受け入れてくれたの?」
淳之助「本気でニーナたんを愛しているからだ。俺は金が生涯の全てだった。金のために働き、家庭を蔑ろにしてでも年がら年中仕事仕事。とにかく金を稼ぐことが俺の全てだった。こんな人生が続いたから妻や子から逃げられ、家族はいなくなった。若いうちは金稼ぎが楽しかったかもしれんが、今になっては何もかも虚しいことだ。何せ死んだらあの世に持っていけないんだからな。だから決めたんだ。俺の財産を一番愛してる人に全部渡そうと。それがニーナたんだ。人生の過程で若者は皆お金で苦しむからこそ、今まで稼いだ金はこれからの若者に使って欲しいのだ。例え遺産目当てで愛が嘘だとしても、そんなのどうだっていい。本気で愛する女を最後まで愛し抜くのが男ってもんだろ。」
ヘルパー「マジか…。」
若妻「淳ちゃん…。」
淳之助「お?ニーナたん、俺に惚れ直したのかい?」
若妻「惚れ直すも何も最初から愛があるに決まってるじゃない。」
淳之助「(笑いながら)おいおい、まだそんな嘘つくのか。」
若妻「だって愛がなかったら、一緒に住むことないじゃない。」
淳之助「ああ、お金のな。」
若妻「…ってもう、遅いよね。今までごめんね。」
淳之助「いいんだ。初めから許してる。だから財産は全部ニーナたんにやる。だけど待ってほしい。俺もそんな長くはない。せめてもう少し俺の天寿を全うさせてくれないか。」
若妻「うん、もちろん。だって、こんな私を受け入れてくれるんだもの。これからも淳ちゃんの傍にいるね。」
淳之助「ありがとう。」
ヘルパー「何かいいんだか悪いんだか…。」
淳之助「いいに決まってる。それとニーナたん。お姉さんの難病の件だが、何も遺産まで待つことはなかったぞ。すぐに出せる。」
ヘルパー「お姉さんの難病?え?」
若妻「そこまで知ってたのね。でもあまりに高額過ぎて…。なかなかお願いしづらかったの。本当にいいの?」
淳之助「俺を誰だと思ってる?大資産家で大富豪の淳之助だぞ。大丈夫だ。」
若妻「うん…、そうだよね。ありがとう…。淳ちゃん…、大好き。本当に大好き。」
若妻、淳之助に抱きつく。
淳之助「お、おおっ?じゃあ今日は思いっきりニーナたんに甘えちゃうぞ~。」
若妻「うん、いっぱい甘えて。」
ヘルパー「なーんかいい感じにまとまっちゃったな。」
淳之助と若妻はしばらくアドリブで会話。それと並行してゆっくりと暗転。
その後、暗転中に会話。
淳之助「(暗転中に)あ、お前。出前の注文は済んだか?」
ヘルパー「ああっ!すっかり忘れてました!」
淳之助「早くせんか!」
ヘルパー「ごめんなさい!今やります!」
淳之助とヘルパーの会話の後、暫くした後に明転。若妻が電話で誰かと話している。
若妻「………うん、そういう訳なの。だから安心してね。今まで待たせてごめんね。……うん。……うん。あっ、すぐだって。だから早めに手術受けられるよ。………まあね。………うん、だから手術頑張ってね、お姉ちゃん…。」
淳之助とヘルパー、若妻が電話している様子を舞台の端からこっそり覗いて、微笑ましく見守っている。
終演。
いかがでしょうか。最後までご拝読ありがとうございます。
実はこの作品、完全自分ネタですが今まで私が役者として出演した作品の小ネタを挟むという遊び心も入れてました。大変どうでもいいことですよね、はい。
この作品を違う公演に使えばいいとも思いますが、どうしても使えない理由が2つあります。
1つは、コロナに因んだネタを使っているから。2020年は出始めの時期でしたので通用すると思いますが、来年以降はどのように状況が変化するか分かりませんし、もしかしたら当たり前のように浸透して作品としての面白みが半減するかもしれません。
もう1つは、営利目的の作品でないから。短編集でしたら使えるかもしれませんが、作品の尺がおよそ26分と中途半端ですので使いやすさとしては微妙です。
以上の理由から、延期等を諦めました。もしこの台本を使いたいという心優しい方がございましたら、是非ご自由にお使い下さい。
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