ショートショート『僕の無くしたもの』
気がつくと、僕は白い砂浜の前に立っていた。てっきり僕は、お約束の大きな川が流れていて、向こう岸から知り合いが手を振っているシーンが見られるかと思ったら、そうでもないようだ。目の前に広がっているのは多分海で、波の音が聞こえてくるのと、湿気を含む冷たい潮風が僕の頬を撫でていく。空は、僕の今の心境を映すように鈍色の雲が流れていく。
自分の姿を見ると、白装束ではなく、普段着ているジーンズと白いロゴT、ランニングシューズだった。これからどうしたものかと頭に手を置きながら周囲を見渡すと、