「アウトプットしなくては…」と思っている人へ
「ブログを書こう」「アウトプットせよ」
「エンジニアなら情報を発信するべし」
「発信は人生を変える」
そんな感じの「アウトプットしてなんぼ(特にエンジニアなら)」というインターネット上の空気感が、ずっと嫌いだった。
エンジニアであれば、自分のブログを持ったり技術記事を書いたりすることは基本だよね、というような風潮。
そんな空気を10年ほど前からずっと感じていた。
「アウトプットしなくては…」という強迫観念にかられながらも、なかなか最初の一歩を踏み出せない、という人はそれなりにいるのではないだろうか。
ぼくも10年以上前から、そんな風潮の中でずっと「ブログを書かなくては」という思いにとらわれていながら、仕事の忙しさにかまけて後回しにしていた。
新年には毎年のように「今年の抱負はアウトプットを始めること」と心の中で思っていた気がする。
いまでは、この note の投稿しかり、ツイッターや技術記事など、ちょいちょい発信するようにはなったが「アウトプットは本当にすべきか」ということに関してはいろいろと思うところがある。
「アウトプットしたいけどなかなか始められない」という人の役に立てれば、と思ってそれを書いてみる。
別にアウトプットしなくてもいい
ぼくは、すべての人がアウトプットした方がいいとはまったく思わない。
「『アウトプットした方がいい』というのをよく聞くし…」
「できる人はアウトプットしているように見えるし…」
そんな強迫観念のようなものを感じながらも気が乗らないのであれば、いまはアウトプットすべき時期ではないのかもしれないと思う。
「アウトプットすべきかどうか」の意見の非対称性
「アウトプットした方がいい」と言っているのは誰か。
それは紛れもなく「アウトプットし続けている人」であり、その発信によって恩恵を受けている人達がほとんどだ。
つまり「アウトプットすべきか否か」というインターネット上の議論には、大きな情報の非対称性がある。
「アウトプットしている人」の声はひたすら大きく、「アウトプットしていない人」の声はほとんど聞こえないくらいにかすかなものだ。
「アウトプットしてないし、別にアウトプットしなくて全然問題ない」という意見は、残念ながらインターネット上でほぼ見かけることはできない。
そのためネット上では「アウトプットはした方がよい」という意見が大多数であるように見えてしまう。実際にそうは思っていない人がごまんといるなずなのに、だ。
発信力と能力には相関関係はない
「アウトプットすべし」と声を大にして言っているような人は、インターネット上の存在感が強いため「スゴい人」のように見えるかもしれない。
しかし、ツイッターのフォロワー数が多ければ多いほど技術力があるわけでは決してないし、プレゼンスの高さと実務能力にはまったく相関がない。
フォロワー数が多いという事実は、フォロワー数を増やす能力が長けていることしか示さない。
実際、インターネット上のプレゼンスが高いエンジニアが、業務では大した成果をあげていない例も何度か見たことがある。
フォロワー数が 1 万人を超える人の中には、もちろん技術力も優れている人もいるとは思うが、そうではない人もごまんといる。(もちろん、ネット上でのプレゼンスを高められる力も非常に尊い能力であることには間違いない。)
アウトプットしていない人でも、インターネット上にまったく登場することがない人でも、仕事ができる人、優秀な人はいくらでもいる。
ぼくはそんな人たちも数限りなく見てきた。
そういう人たちに対して「せっかくなら発信した方がいいのに」と思ったこともない。彼ら彼女らは、リアルの世界で充分に輝いていたから。
アウトプットをムリして頑張るくらいなら、その分仕事を頑張った方がよいとぼくは思っている。
「アウトプットしなくては…」と思いながらもぼくが仕事に邁進していた日々に関しては、いま思ってもよかったと思っているし「あの時からアウトプットすべきだった」とはまったく思わない。
なぜなら、その時に仕事に全力で向き合ったことが今の自分の土台になっているから。技術者としても職業人としても人間としても、その頃大きく成長したのは間違いないと思う。
なんならアウトプットせずに、趣味に時間を割いたり、ゴロゴロしたり友達と会ったりするのもいいと思う。
家族と大切な時間を過ごしたり、自分の好きなことに時間を使うことはかけがえのないことだ。
ムリしてアウトプットしても、あまりいいことはない。
アウトプットには継続が必要だし、そのためには楽しくできることがとても大事だからだ。
また、アウトプットしていなくても、転職活動などで困ることはないと思う。
ぼくは経験上、アウトプットしていないことによって不利になったと感じたことはない。
「今どきアウトプットしてないなんて…」などと面接官に言われたり思われたりするのであれば、そんな考え方しかできない人がいる会社は正直避けた方がいいとすら思う。
上記に書いた通り、ネット上のアウトプットは、その会社で成果を上げられるかどうかとは全く別問題だからだ。
その会社で成果を上げられるかどうかを説得するには、今まで仕事で取り組んだことでアピールするほうがよっぽど得策だと思う。
もちろん、アウトプットする分野が、応募している会社の技術とマッチしていたりする場合は別かもしれない。
また、アウトプットの質によってエンジニアとしての能力などが参考とされることは多いにはあると思う。
これはつまり、低品質なものをムリして投稿しているなら、それはアピールせずに主に職歴で自分をアピールするべきだと思う。
そのうち書きたいこと・表現したいことが出てくるかもしれない
アウトプットしたいと思わなければ、ムリしたり頑張って取り組まなくてもいいと思う。
そうやって過ごしているうちに、「やってみよう」という気になる日がくるかもしれない。
ぼくは「文章を書きたい」という想いをずっと持ちながらいままで大したアウトプットをしてこなかったが、最近毎日 note に投稿しているのがとても楽しい。
「いつかアウトプットしたい日がくるかもしれない」と心の中で思いながら、いまを大切に生きることはとてもいいことなんじゃないかと思う。