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2020年4月17日現在の学校とこれから

長く満開だったのに、桜に集まれない春。新型コロナウィルス感染のオーバーシュートを防ぐため4月7日〜5月6日までの1か月間、埼玉、千葉、東京、神奈川、大阪、兵庫、福岡の7都府県に「緊急事態宣言」が発令されました。4月16日には全国に拡大。脅威の沈静化をめざす私たちは、大きな痛みを伴う行動変容を求められています。週があけるごとにフェーズの変化が加速する日々。聞かせていただいた「今」を記録します。

※この記事の公開は4月24日。執筆から1週間後です。すでにフェーズは変わっていますが、記録のためにそのまま公開します。

子どもに会うと脳が開く感じがする

休校延長となり、今週から交代勤務となりました。教員が3つのグループにわかれて曜日を変えて出勤しています。午前中は登校する子どもたちの見守り。午後からは事務仕事。職員会議も広い部屋に変えて、ソーシャルディスタンスを保つようにしています。しかし、先行不透明。計画をどこまで立てるのか。立てたところで変更が多い。何より、子どもたちがいないと、正直、モチベーションを保つのが難しい。子どもたちが来ると先生が元気になる、と感じます。(4月7日緊急事態宣言該当地域 教員)

満員電車が怖かった

感染者数の拡大を報道で知りながら、通勤電車に乗るしかない。子どもたちには「三蜜」にならないように、何度も繰り返し説明するのに自分は避けられない。満員電車に揺られながら、せめて「つり革を持たないよう」に心がけるのが精一杯。日毎に増す感染の恐怖を感じながらの通勤は、苦しい。保護者や子どもに教科書配布時はソーシャルディスタンス。でも、職員室は三蜜。ダブルスタンダードに疑問がわきます。宣言が出て、本当にホッとしました。(4月7日緊急事態宣言該当地域 教員)

子どもたちとのつながりが持てない 

子どもの現状を掴めておらず、正直、不安。3〜4月という学校にとって一番、大きな節目の時期の休校で問題が複雑です。担任と子どもの関係も作れない。感染リスクのため家庭訪問もできない。連絡手段は学校のホームページから課題とメッセージを伝えるのみ。子どもたちの状況がわからない。でも、電話はかけないことになりました。(4月16日緊急事態宣言地域 教員)

何も変わらない日々

市内に感染者が出ていないので、児童・生徒は普通に登校。マスク着用と手洗い・うがい・消毒の徹底で新学期がスタートしました。授業も普通の通り進んでいます。対話的な活動は止めましょうとなっていますが、子どもたちは話したい。緊急事態宣言の発出後は、逆に緊張感が解けて「あれは都会の話だから」という空気が不安です。自治体、学校によって対応が違い、困惑しています。(4月16日緊急事態宣言 教員)

子どもや保護者とつながる機能と役割分担を!

世界同時発災とも言える現在、学校教育において、私たちは何を大切にすれば良いのか。東京で32年間に渡り、特別支援教育に携わってきた田中雅子さん(帝京平成大学現代ライフ学部児童学科小学校・特別支援コース・准教授)にお話を伺いました。

「今、一番、心配なのは虐待です。学校に通っている間は虐待にまで至らなかった家庭も、休校が続くと家族みんなにストレスが溜まります。学校はどうしたらいいのか。その判断を巡って、誰も答えが出せないまま、3月の一斉休校が始まりました。

感染のリスクをどう防ぐのか。都道府県をはじめ学校でも対応が異なり、今まで、わかりあえていた教員ですら、ズレが浮き彫りになりつつあります。『学校とは何か』という問いを突きつけられている。3月の一斉休校は、特別支援教育においては、教員ひとりひとりのインクルーシブの考え方や障害感をも迫る決定でした。

新年度が始まって2週間あまり。管理職は対外的なやりとりで忙しい日々が続きます。こういう時は、特別支援学校であれば特別支援教育コーディネーターや保健室の養護教諭が「よろず相談的」な総合窓口となって、保護者や児童・生徒の困り感をまずは一旦、受け止めるような機能があるといい。もちろん、学校事情によって担当は「ふさわしい人」にお願いしましょう。困った時は、特別支援学校の特別支援教育コーディネーターを頼ってください。

大切なのは保護者や児童・生徒の声をまずは、じっくり聞き取って、整理して担任につなげること。例えば、転勤してきたばかりの担任とは、まだ信頼関係ができていませんから、話すのは難しい。そういう場合は、前担任につなげるなどの役割があるといい。教え導きたいのは、教師の性でありアイデンティティのようなものだから、つい喋り過ぎてしまいがちですが、とにかく話を聞き、相手の答えを待つ。答えがでない時は、一緒に考える。コンサルテーションというスタンスの環境調整が求められます。

休校がどう児童・生徒に影響するのか、未知数です。日頃、サポートを受けている子へのサポートがなくなります。その負担が保護者にだけいくのは避けたい。また、子どもが大切にしていることと、保護者が大切にしていることは、実はズレがあったりします。今、できる工夫が大事です」。

子どもたちは、どうしている?

担任の先生からの電話を「面倒くさいと言いながらも、嬉しそうです」と話すのは、中学生の保護者。自身も教員で、来週から在宅勤務が始まります。休校中に必要なのは「つながりの保障、体力の保障、そして、学力の保障」。しかし、多くの小中学校では、十分な方針を持てないまま、休校に突入しています。

LINE通話やテレビ会議システムなど、日常的に便利に使えるツールがあるのに公的には難しい。家庭のネット環境や経験の差が、公平性という旗のもと足枷となります。もちろん、仕組み上、クリアしなければいけない課題もたくさんありますが、子どもたちはすでに、SNSやオンラインゲームでつながりやコミュニティを作っています。何より発災時の「公平」はまず、できるところから始めて「不公平」を是正するのが早道です。

できる工夫は何なのか。今こそスピーディで、トライ&エラーに寛容な「探究」が求められています。


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