見出し画像

【弁護士が解説】フリーランスが知っておきたい独占禁止法の概要

第1 はじめに

 フリーランスの皆さんは、「独占禁止法」という法律を聞いたことはありますか?
 正式名称は「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」といいます。「独占禁止」と聞くと、フリーランスの皆さんにとっては何か遠い話のように感じるかもしれませんが、「公正取引の確保」という点では、皆さんの身を守る武器になりうる大事な法律です。
 実際に、今年の3月26日には、内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省が連名で、独占禁止法等の法律を内容に含む「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(以下「ガイドライン」といいます。)を発表しています。
 今回から、4回にかけて、独占禁止法と、ガイドラインの内容について、概要をご紹介していきたいと思います。今回は独占禁止法についてご紹介し、第2回から第4回に、ガイドラインの内容を見ていきたいと思います。

第2 独占禁止法の簡単な概要

画像1

(引用:公正取引委員会HP
https://www.jftc.go.jp/dk/dkgaiyo/gaiyo_images/gaiyo_img_02.gif)

1 独占禁止法の目的

 独占禁止法の目的は、公正かつ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高めることで、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することにあります(1条)。市場がしっかりと役割を果たして、公正で自由な競争が実現していれば、事業者は、創意工夫を凝らした商品を提供して売上高を伸ばそうとしますし、消費者の側も、自分のニーズに合った商品を選ぶことができるという点で利益につながり、究極的には経済の健全な発達につながっていくという考え方です。
 なお、独占禁止法を補完する法律として,下請事業者に対する親事業者の不当な取扱いを規制する「下請法」があります。下請法については、こちらの記事をご参照ください。

2 独占禁止法の規制対象

 上記図の通り、独占禁止法は、①私的独占の禁止、②不当な取引制限(カルテル)の禁止、③事業者団体の規制、④企業結合の規制、⑤独占的状態の規制、⑥不公正な取引方法の禁止という、大きく6つの事項について規制しています。このうち、①~⑤については、フリーランスの皆さんにとってはあまり問題になることはなく、ほとんどは⑥の不公正な取引方法が問題となります。第2回以降で確認するガイドラインでも、不公正な取引方法に該当する具体例が多く挙げられています。そのため、今回から第4回までの記事では、基本的に「不公正な取引方法」、特に、ガイドラインで多くの言及がある「優越的地位の濫用」にフォーカスして解説したいと思います。  
 不公正な取引方法については、公正取引委員会のQ&Aにおいて、以下の通り紹介されています(https://www.jftc.go.jp/dk/dk_qa.html#cmsQ7)。

不公正な取引方法は,1.独占禁止法第2条第9項第1号から第5号に定められた行為のほか,2.同項第6号イからヘに定められた類型のいずれかに該当する行為であって,「公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち,公正取引委員会が指定するものをいう。」と規定されています。公正取引委員会が指定するものには,全ての業種に適用される「一般指定」と,特定の業種等に適用される「特殊指定」とがあります。現在,特殊指定として,新聞業に対する指定,特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の指定及び大規模小売業者による納入業者との取引に関する指定があります。
 不公正な取引方法は,行為の内容から大きく3つのグループに分けることができます。
 第1は,自由な競争が制限されるおそれがあるような行為で,取引拒絶,差別価格,不当廉売,再販売価格拘束などです。
 第2は,競争手段そのものが公正とはいえないもので,ぎまん的な方法や不当な利益による顧客誘引などです。
 第3は,自由な競争の基盤を侵害するおそれがあるような行為で,大企業がその優越した地位を利用して,取引の相手方に無理な要求を押し付ける行為がこれに当たります。
 これらの中には,再販売価格拘束のように不公正な取引方法であることが行為自体から明白なものもありますが,多くは,行為の形態から直ちに違法となるのではなく,それが不当な場合(公正な競争を阻害するおそれがあるとき)に違法となります。

 次回以降で確認するガイドラインで多く言及されているのは、上記のうち第3にあたる「優越的地位の濫用」です。優越的地位の濫用とは、独占禁止法第2条第9項第5号において、以下の通り定義されています。

(9) この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
五 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。
イ 継続して取引する相手方(新たに継続して取引しようとする相手方を含む。ロにおいて同じ。)に対して、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること。
ロ 継続して取引する相手方に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。
ハ 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ、若しくはその額を減じ、その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること

 条文を読むだけでは、フリーランスの皆さんにとってどのような意味があるのか、あまりイメージしにくいと思いますので、次回以降、ガイドラインの内容に沿って、具体例を確認していきたいと思います。

3 独占禁止法に違反した場合どうなるか

 独占禁止法は、法律に違反した場合に関し、以下のような制度や罰則を設けています。

①排除措置命令
 公正取引委員会が、違反行為をした者に対して、その違反行為を除くために必要な措置を命じるものです。

②課徴金
 私的独占、カルテル及び一定の不公正な取引方法については、違反事業者に対して、課徴金が課されることになっています。

③損害賠償請求
 カルテル、私的独占、不公正な取引方法を行った企業に対して、被害者は損害賠償を請求することができます。この場合の企業の責任は、「無過失責任」というもので、故意・過失があろうとなかろうと、責任を免れることができないものです。

④罰則
  カルテル、私的独占などを行った企業や業界団体の役員に対し、罰則が設けられています。

4 その他の制度の具体的内容

 独占禁止法の運用を管轄する公正取引委員会のウェブサイトでは、独占禁止法が定めている制度や手続について解説されています。詳しくは以下のURL先のページをご参照ください。
・課徴金制度 https://www.jftc.go.jp/dk/seido/katyokin.html  
・課徴金減免制度 https://www.jftc.go.jp/dk/seido/genmen/index.html
・犯則調査権限 https://www.jftc.go.jp/dk/seido/hansoku.html   
・審査手続・意見聴取手続 https://www.jftc.go.jp/dk/seido/sinsa.html

第3 おわりに

 今回は以上となります。独占禁止法の内容は法律に慣れていない方にとっては複雑に感じるかもしれませんので、今回はごく最小限の内容のご紹介にとどめました。次回以降、ガイドラインの内容をご紹介していきますので、フリーランスの皆さんにとって「なるほど、こういう活用の仕方があるのか」という具体的なイメージを持っていただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

無料相談もお気軽に

私たち、Lawyers for creatorでは、初回無料の相談を受け付けています。

記事を読んでもわからないことや、その他のお悩みでもご相談ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?