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他人を頼らずにいられない

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[登場人物]

・私 (都会で夫と二人暮らし)
・夫
・お義母さん(夫の母・2023年秋から同居開始、要介護3)

・お義父さん(夫の父・地方でお義母さん、弟と3人暮らしだったが2023年夏前に他界)
・弟(夫の弟・お義父さんの死後、うつ病統合失調症を発症し保護入院)

・叔父さん(3人兄弟のお義父さんの弟・妻と同地方で2人暮らし・子供なし)
・叔父さんの妻(叔母さんが2人出てくるので叔父さんの妻とする)

・叔母さん(3人兄弟のお義父さんの妹・嫁いで同地方で夫と2人暮らし)

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お義母さんを11月に引き取ってからの私の暮らしは一変した。
前にも書いたが、仕事は集中してできない。
デイサービスを利用しても15時には帰宅されるため、
1日の3分の2はお義母さんと2人で家にいる時間が続く。

介護保険の限界までサービスを利用し、
週末はショートステイで家から出てもらうようになっても、
出かけた瞬間だけ少し心が解放されるだけで、
明日には帰ってくる、日曜の帰宅時間まであと何時間しかない、
と嫌なカウントダウンが自分の中で始まるだけだった。

夫が休みだったり早く帰宅できた時には、
少し家を出させてもらった。
ジョギングが趣味の夫は、自分がジョギングに出たい気持ちが強くて、
家を出て息抜きしに行きたがる私とも少し喧嘩になることもあった。
正直、夫も自分の母親ながら仲の良い親子であるとは言えず、
会話は多少してもずっと同じ空間にいることに居づらさを感じているのだ。

それでも私は夫が不在ばかりの日々の中でこんなにお義母さんのお世話をしているのは私なんだから!と夫に頼んで無理やり出かけては、
近所の公園をコーヒーを飲みながら1周したり、ファストフード店でおやつを食べて帰ったりして、自分の気持ちが破裂するのをなんとか防いでいた。

こんな生活はずっとは続かない。
お義母さんも特別養護老人ホームに入ってくれる了承もしてくれたし、
申し込みだってケアマネージャーさんに渡してる。
老人ホームに入れるまでの我慢だから、、、と言い聞かせる一方で、
老人ホームはなかなか空きがないだろうし、
早くても半年くらい先になるのかな、と終わりの見えない自分の介助生活に落胆していた。

年末の弟の入院騒動の頃、
自宅を訪問してくれたケアマネージャーさんから、
「ここのホームに空きがあるみたいで、相談の電話をしてみたんですが、見学に来られますか?と聞かれまして。どうしますか?見学しに行ってみますか?」
とお話しを頂いた。
その特別養護老人ホームは、自宅の近所ではないものの、電車で数駅の比較的近場にある施設だった。

「行きます!」

お義母さんと夫に相談しないまま、つい口を突いて出てしまった。

「では連絡しておくので、日程などは直接施設の〇〇さんという方に問い合わせてください」

施設に空きがあるのなら、お義母さんが入れるのかも!
やっと一筋の光が差し込んだ、そう思えて
嬉しいというよりも、その場でへたりこむような、力が抜けるような安堵の気持ちだった。

お義母さんを引き取って、介護というものに触れ、
あらためて日本の介護の行政サービスの手厚さに感動した。
引き取る直前に包括支援センターに相談に行ってからはとてもスムーズだった。
すぐに自宅訪問、ケアマネージャーを紹介してもらい、
ケアマネージャーからは介護設備やサービスの相談と手配から、
心の不安まで相談して、聞いてもらった。
ケアマネージャーの定期的な自宅訪問と報告や連絡。
今度は特別養護老人ホームの選定と仲介まで、
親身になって私と夫とお義母さんの生活を助けてくれた。
デイサービスとショートステイでは、
さすがの「介護のプロ」達が優しく、元気に、
お義母さんに接してくれて、お義母さんも職員さん達と話すことで良い刺激を受けていた。
これらのサービスがなかったらどうなっていただろう。
昔の家族なら、実父母や義理父母のお世話を死ぬまで家でみるのが当たり前だったのかもしれない。
現在も自宅介護をしている人ももちろん多い。
でも、冷たい言い方かもしれないけど、
夫を産んでくれた恩はあっても、
ほとんど会話をしたこともなかったお義母さんを受け入れて一緒に生活することは、
私にとっては長年慣れ親しんだ自分の大好きな家に他人が急に入ってきて、
自分の時間を奪っていくものにしか感じられなかったし、
そう思ってしまう自分にさらに嫌悪感を抱いてしまっていた。
もちろん、みてあげたい、お世話をさせて欲しいと思うのなら自宅介護はとても素晴らしいと思うけど…。

介護はプロ(他人)に任せる。

お義母さんとの関係性を築けていないまま介護することになった私には、
この言葉がしっくりきた。
正直、本当に毎日のお世話が大変だったから。
こんなの笑顔でできる人、本当にすごいと思う。
介護は他人を頼らずになんかいられないと思った。

年末のいろんなことで慌ただしい中、
私は紹介してもらった特別養護老人ホームに電話をかけた。

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