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#63 日本での糞便微生物移植の臨床応用が一歩前進!

現役の腸内細菌研究者がお届けする腸内細菌相談室。
室長の鈴木大輔がお届けします。

腸内細菌相談室ニュースのお時間がやってまいりました。本日ご紹介するのは、2022年10月6日11時00分にプレスリリースが発表された、マイクロバイオーム創薬ベンチャーへの資金調達について。

日本における糞便微生物移植の一歩前進を知らせるニュースとなったので、ご紹介していきます!

この内容はポッドキャストでもお楽しみ頂けます。

糞便微生物移植と医療

今回、資金調達を行ったのはメタジェンセラピューティックス。同社は、糞便微生物移植を手段として、腸内細菌叢のバランス不全(Dysbiosis)を改善し、様々な医療課題を解決することを目指すベンチャー企業です。

糞便微生物移植とは、健常者の糞便を採取後、採取した糞便を内視鏡により患者の腸内へ移植する治療法です。腸内細菌相談室では、腸内環境のメインプレイヤーである腸内細菌叢と体質の密接な関係をお話しています。近年も、炎症性腸疾患や偽膜性大腸炎などの腸内における炎症は、腸内細菌叢を原因とするか、関連するということが明らかとなっています。

このような、腸内細菌叢と体質の関係性についての最新の研究成果を利用すれば、腸内細菌叢を意図的に改変して体質を改善するようなことが可能になると考えられます。

このような思想に根ざした治療法こそが、糞便微生物移植(FMT: Fecal Microbiota Transplantation)なのです。

糞便微生物移植の利点としては、患者への身体的なダメージが少ない治療法である点です。というのも、他者の糞便を腸内に移動するだけなので、体に傷を付けたりする必要がないためです。この点、糞便微生物移植は継続した治療に向いていると言えます。

1.4億円の資金調達

今回、メタジェンセラピューティックスは、株式会社ファストトラックイニシアティブ、ジャフコグループ株式会社、株式会社慶応イノベーション・イニシアティブから計1.4億円の資金調達を完了しました。

同社の事業は、平成27年発足の医療研究の推進と社会実装の促進を手掛ける日本医療研究開発機構(AMED)による採択も受けており、官民セクターからの注目を受けていることが伺えます。

おわりに

今後、事業内容が一層洗練され、社会実装に向かって突き進んでいくことを期待しております。

もしかすると、皆さん最寄りの消化器外科にて、糞便微生物移植を受けられる日がもうすぐくるかもしれませんね。

腸内細菌の分からないに答えるために、腸内細菌相談室は存在します!わからないこと、難しいこと、紹介してほしいことがあれば、TwitterやInstagram、Noteコメント欄にてメッセージお待ちしております。読んでほしい論文リクエストも待っています!

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それでは、本日も一日、お疲れさまでした。

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