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#220 【病原性集中講義】Part4: 抗原提示とシグナル伝達。

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現役の研究者である鈴木大輔が、腸内細菌にまつわるエピソードをお届けしております🦠

病原性集中講義の第4回は、抗原提示とシグナル伝達についてお話します。前回までに、免疫機能や分化の観点から免疫系の概観をしてきました。概観をする中で、自然免疫や獲得免疫、免疫細胞の分化にとって抗原提示が重要な役割を果たすことをお話しました。

抗原提示を始めとするシグナル伝達は、免疫系における免疫細胞間のコミュニケーションに必要不可欠なわけですが、具体的にはどのような原理でシグナル伝達は行われているのでしょうか?今回は、考えてみると意外と知らない、シグナル伝達のメカニズムについてお話します。

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抗原提示

抗原提示(Antigen Presentation)とは、抗原提示細胞(Antigen Presenting Cell: APC)によって細菌成分などの抗原を貪食、分解した上でその一部を細胞表面に露出することを指します。細胞外に抗原を露出=提示することで、他の細胞から抗原の存在を認識できるようになります。

では、抗原提示はどのように行われるのでしょうか?

抗原提示を担うのは、細胞表面に存在する主要組織適合抗原 (Major Histocompatibility Complex: MHC)という糖タンパク質です。ヒトにおけるMHCは特別に、ヒト白血球抗原 (Human Leukocyte Antigen: HLA)と呼ばれたりしています。抗原提示は、MHCと抗原ペプチドが複合体を形成することにより行われます。糖タンパク質であるMHCを基盤に、抗原ペプチドがくっつくイメージです。抗原提示の仕組みは、樹状細胞、マクロファージ、B細胞のいずれにおいても同じ仕組みです。

MHCにはクラスIおよびクラスIIが存在し、それぞれ異なる抗原提示の機能を示します。

MHCクラスIは脊椎動物の全ての細胞表面に存在しています。腫瘍抗原やウイルス感染に対応するMHCクラスIは、分解されたペプチドをCD8+ナイーブT細胞に対して抗原提示します。抗原提示を受けたCD8+ナイーブT細胞はエフェクターCD8+ T細胞=細胞傷害性T細胞へと分化し、ウイルス感染細胞などを攻撃します。

MHCクラスIIは、プロフェショナル抗原提示細胞である樹状細胞やマクロファージなどに発現しています。外来の病原性細菌やウイルスに由来するタンパク質に対応するMHCクラスIIは、分解されたペプチドをCD4+ナイーブT細胞に対して抗原提示します。抗原提示を受けたCD4+ナイーブT細胞は、エフェクターCD4+ T細胞として働きます。エフェクターCD4+ T細胞には、制御性T細胞やヘルパーT細胞が含まれます。

MHCを介した抗原提示によるシグナル伝達は、免疫細胞の分化に必要不可欠ですが、これだけでは免疫機能の活性化に不十分です。

免疫系におけるシグナル伝達

MHCによる抗原提示に付随して重要となるのが、共刺激によるシグナル伝達です。補助的な役割のある共刺激により、抗原提示細胞からナイーブT細胞への抗原提示は完全なものになります。

共刺激を担うのは、ナイーブT細胞側のCD28タンパク質と、抗原提示細胞側のB7-1(CD80)膜タンパク質、B7-2(CD86)膜タンパク質などです。これらが揃って、免疫細胞間のコミュニケーションが行われます。

抗原提示および共刺激を介したコミュニケーションが、分化を促すコミュニケーションであれば、次に紹介するサイトカインは細胞の誘導や活性化を担います。

サイトカインとは、免疫細胞から分泌されるタンパク質です。樹状細胞、T細胞などから分泌されます。サイトカインとしては、インターロイキン、インターフェロン、ケモカインなどが知られています。

インターロイキンは、リンパ球やマクロファージが分泌するサイトカインであり、30種類以上が知られています。T細胞の増殖やアレルギー反応、好中球の行動、NK細胞の刺激と分化誘導など機能は多岐に渡ります。

インターフェロンは、ウイルス感染時にリンパ球から産生されるタンパク質で、抗ウイルス作用、抗腫瘍作用などの生理活性を示します。

ケモカインは免疫細胞の走化性をコントロールするサイトカインです。

抗原提示や共刺激によるコミュニケーションが細胞間の直接的な結合によるものであるのに対して、サイトカインによるコミュニケーションは物質を介した間接的なコミュニケーションと言えるでしょう。

免疫系を分子の観点から眺めると、非常に精密なコミュニケーションが営まれていることが見えてきました。次回は、腸内細菌とヒトの共存を考える上でも重要な免疫寛容についてお話します。

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今日も、お疲れさまでした。また次回、お会いしましょう!

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