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#102 腸内細菌のBacteroidesが炎症時の腸管修復に関与。

毎日夜19:30に更新中!腸内細菌相談室。
現役の研究者である鈴木大輔が、腸内細菌にまつわるエピソードをお届けしております🦠

今回のエピソードでは、Bacteroides属菌が炎症時の腸管を修復する上で重要なシグナル応答を引き起こすというお話をします。この知見は、炎症性腸疾患などの腸炎において、Bacteroidesが腸内環境の恒常性維持に重要な役割を果たすことを示しています。本報告は、熊本大学と神奈川県立産業技術総合研究所による、"Hematopoietic stem and progenitor cells integrate microbial signals to promote post-inflammation gut tissue repair"の論文に報告されています。

このお話は、聴いて楽しむポッドキャストでも公開しております!ぜひ遊びに来てください!

潰瘍性大腸炎のモデルマウスにおける造血応答

今回は、潰瘍性大腸炎のモデルマウスとしてDDS(デキストラン硫酸ナトリウム塩)大腸炎モデルマウスを使用します。このマウスについての腸炎と、腸炎に伴う血管系、リンパ系への影響を調査していくという研究です。

調査の結果、腸炎に伴ってBacteroides属菌がマウスの体内に流入することで、造血細胞が活性化して増殖することが明らかとなりました。また、造血細胞の一部は、骨髄から腸管周辺のリンパ節に移動し、特殊な分化を経ていることが示唆されました。

この特殊な分化とは、造血細胞からLy-6C/G+組織修復細胞という、炎症により破壊された組織修復に関連する細胞分化を指します。Ly-6とは受容体タンパク質の一種であり、Ly-6C/Gとは骨髄分化に関連する骨髄細胞分化抗原でです。分化抗原とは、免疫細胞間のコミュニケーションや外部環境の認知などに重要な役割を果たします。この、Ly-6C/G+という分化抗原をもつ細胞は、組織修復の機能を果たします。

これは、炎症に伴うBacteroides属菌の血中流入が、腸炎により損なわれた組織を修復するシグナルとして働くことを示しています。

Bacteorides属菌は、ヒト腸内細菌における優占種の1つであり、免疫応答の関連性が注目されています。Bacteroides属菌の存在によって、抗体産生を誘導したり、それに伴ってT細胞応答の活性化や炎症反応の制御など様々な効果を示します(細野朗(2013), バクテロイデスと免疫, 腸内細菌学雑誌, 27(4), 203-209)。

今後、Bacteroides属菌の免疫応答との関係が明らかになることによって、炎症性腸疾患を始めとする腸炎について腸内細菌の観点から介入が行える時代が来るかもしれません。

以上、腸内細菌のBacteroidesが炎症時の腸管修復に関与するというお話をお届けしました。

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本日も一日、お疲れさまでした。

参考文献

M.Sezaki et al. (2022), Hematopoietic stem and progenitor cells integrate microbial signals to promote post-inflammation gut tissue repair, The EMBO Journal, 41:e110712.

https://www.embopress.org/doi/full/10.15252/embj.2022110712


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