#137 大腸菌以外のコリバクチン産生菌。
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現役の研究者である鈴木大輔が、腸内細菌にまつわるエピソードをお届けしております🦠
今回のエピソードでは、遺伝子損傷性毒素であるコリバクチンを産生する腸内細菌についてお話します。コリバクチンは、2006年に大腸菌から同定されたことから、E. coliの名前を取ってコリバクチンと命名されました。コリバクチンはポリケチド合成酵素により合成される物質なので、ポリケチド合成酵素をもつ細菌であればコリバクチン産生菌であることになります。コリバクチンは大腸がんの発症に関連するとされることから、コリバクチンを作る腸内細菌を知ることは非常に重要です。
早速、大腸菌以外にポリケチド合成酵素がみられる腸内細菌について調べた研究をご紹介していきます!
このお話は、聴いて楽しむポッドキャストでも公開しております!ぜひ遊びに来てください!
腸内細菌1565株の網羅的な解析
まずは、2009年に行われたドイツとフランスでの研究を紹介します。この研究では、コリバクチンに関連する遺伝子を有するかどうか、腸内細菌として知られる細菌1565株を対象に、PCR法を用いた調査を行いました。
調査の結果、大腸菌のみならず、Klebsiella pneumoniae、Enterobacter aerogenes、Citrobacter koseriの細菌種でも検出されることがわかりました。Klebsiella pneumoniaeは肺炎桿菌として知られる、口腔や腸管の常在菌で、普通に存在しています。エンテロバクター属菌は、自然界やヒト腸管内に存在する桿菌で、日和見感染症を引き起こす細菌です。Citrobacter属菌も腸管に存在する細菌で、日和見感染を引き起こすことで知られています。
腸内細菌約30000株の網羅的な最新の解析
2020年に行われた研究では、更に約30000株の細菌株にコリバクチン産生能力があるのか解析が実施されました。結果としては、大腸菌、Klebsiella pneumoniae, Enterobacter aerogenes、Citrobacter koseriの他に、Enterobacter hormaechei、Enterobacter cloacae、 Serratia marcescens、Klebsiella michiganensis、Erwinia oleae、 Frischella perraraなど追加で数種類の細菌からコリバクチン産生能力が認められました。もちろん、30000株すべてからというわけではなく、その中の2000株にコリバクチン産生が認められています。
コリバクチンはありふれている
前回と今回のお話を通して、コリバクチンは非常にありふれていることがおわかりいただけたでしょうか。コリバクチンに関わらず、がんのリスクファクターはとても身近にありますし、その中でも制御できる因子は限られています。制御できる因子としては、やはり生活習慣です。
次回は、コリバクチン産生菌と食事の関係性について調査した研究をご紹介します!以上、 大腸菌以外のコリバクチン産生菌についてお話しました!
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本日も一日、お疲れさまでした。
参考文献
Putze J, Hennequin C, Nougayrède JP, Zhang W, Homburg S, Karch H, Bringer MA, Fayolle C, Carniel E, Rabsch W, Oelschlaeger TA, Oswald E, Forestier C, Hacker J, Dobrindt U. Genetic structure and distribution of the colibactin genomic island among members of the family Enterobacteriaceae. Infect Immun. 2009 Nov;77(11):4696-703. doi: 10.1128/IAI.00522-09. Epub 2009 Aug 31. PMID: 19720753; PMCID: PMC2772509.