『DNF Duel』は今世界で最も笑えるゲームだと思う
『DNF Duel』は今世界で最も笑えるゲームだと思う
これだけ人を笑顔できるパッチノートがこの世に今まであっただろうか?
格ゲーのなじみのない人に説明すると、このパッチノートには「強化された」項目しかない。それは弱くなった部分を書いていないからではなく、全てのことが強化しかされていないからだ。共通システム、全てのキャラクターが、少なくとも何かしらの強化を受けている。
『DNF Duel』はもともと激しいゲーム性を持っている。片方のHPが1割で片方のHPが10割の状況でも、何かがカスっただけで容易に逆転する。今までのインターネット対戦ゲームの歴史で言えば、そうした仕様はインターネットで「修正しろ」のオンパレードが鳴り響き、圧力に屈しておとなしいゲームになっていくのだが、そんな歴史を鼻で笑うかのように、この力強いアップデート。心の底から嬉しくなったし、心の底から笑ってしまった。
僕の使用キャラであるグラップラーに「大ダメージを狙えるようになり、逆転が狙いやすくなったぞ!」の一文が書いてあることの心強さはすごい。グラップラーは元からワンチャンスを掴んで一気に試合を決めに行くキャラクターであり、僕の遊んでいる時は試合内容のほとんどが逆転だったのだが、そのキャラクターに「逆転が狙いやすくなったぞ!」と書いてある。これはマクドナルドのパッチノートに「ビッグマックバーガーに肉を二枚追加したぞ!」と書いてあるようなものであって、その衝撃が伝わると思う。
この前仕事で一緒になった水上さんが丁度『DNF Duel』の大会を含む『ARC REVO』のMCをしていたらしく、何かをガードした瞬間に解説の人が「これ死にましたね」というから面白かったという話を思い出す。
ガードしているのに死ぬ。なぜならガードをしてしまったから。『DNF Duel』はどうやらそういうゲームらしい。格闘ゲームではガードしない人間のことを知性の低いプレイヤーだと見下す傾向が昔からあり、しっかりとガードすることが上級者への一歩である、というのが通説だった。しかしこのゲームではガードしていてもいいことがあまりない。そのまま死ぬからだ。
正直に言えばプレイ人口が少なすぎて、ランクマッチで対戦するのが困難だったことからしばらく遊んでいなかった。でも流石にこのパッチノートを見せられては、遊ばざるを得ない。僕の使用キャラがパッチノートで上方修正されたことなんて、一体何年ぶりだろうか。
『VRChat』にログインすると、案の定野生のライセンスプロプレイヤーである桔梗ちゃんがいたので、「プロと対戦するのってやっぱり対戦料とか取られるんですか?」と煽りたい気持ちを抑えつつ、「対戦……してもらってもいいですかね」という謙虚なフリをして対戦を挑んだ。どうやら彼の持ちキャラであるレンジャーは大した強化をもらえなかったらしく、「俺のレンジャーが急に金髪の女になった」という意味不明な言い訳で大幅に強化されたランチャーを使用された。
実際に対戦してみるとあまりにもこれがバカげていて、最高だった。グラップラーは格闘ゲームの定義で言えば「近づくのは難しいが近づいた時のリターンが大きい」タイプの投げキャラクターとして設定されているのだが、HPが減ったグラップラーの動きは忍者としか言えない高速移動をする。この正々堂々戦いそうな見た目の柔道家が、ものすごい勢いと圧力を持って、ランチャーに襲い掛かるのだ。
今までの『DNF Duel』で言えば「相手のこの動きを見てからこの動きで反撃確定」等といったポイントを桔梗ちゃんは極めて大真面目に、誠実にやってくる。しかし様々な行動がキャンセル可能になったグラップラーを使い、僕が適当にボタンを追加で押すだけで、大真面目にプレイしている桔梗ちゃんがぐちゃぐちゃになる。プレイヤーとしての強さをまざまざと見せつけられるシーンは何度もありそのたび敗北感を味わうが、一つ間違った瞬間にグラップラーが全てを破壊する。ギャラリーも含めて笑いに事欠かない対戦だった。
そのとき野生の「みちまよ」(道に迷った者の略)プレイヤーとも一緒に遊んでいたのだけれど、こちらもあまりにも暴力的だった。端から端まで届きかねない突進技が、こちらをめくりながら突進してくるうえ、ガードしても不利フレームを背負う。当たると死亡リーチになる。意味不明だ。本当に最悪の技だったので、怒りのあまり端からひたすら前転で転がりながら戦う漢のスタイルで対抗した。このゲームでお行儀よくガードしたって、何一ついいことはないのだ。
このゲームはやっぱり面白い。こんなに心の底から笑えるゲームに2022年に出会えるのは奇跡だと言ってもいいと思う。もっとプレイヤーが増えたらいいと思うし、もっとこのゲームが見られたらいいと思う。
そうして『DNF Duel』が広がっていけば、12月22日、僕がJeSUのプロライセンスプレイヤーに勝ち越しした事実が、もっと自慢できるようになるのだから。
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