趣味はゲームセンターでガトリングを打つことです
とんでもない日数ぶりに『ポケモンユナイト』のヨクバリスに強化が入ったので、青井さん(昔ユナイト一緒にやってた時よくヨクバリスを使っていた人、ゲームがうまい。大戦シリーズの神)に
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英傑大戦が"最高の環境"らしいことを知った。
知らない人ももはや多いと思うので説明するが、『英傑大戦』はゲームセンターに設置されているアーケードゲームである。カード化された武将を動かすと実際にゲーム内の武将も動くゲームで、ジャンルでいえばRTSだ。シリーズを通して言えばもう20年近く稼働している長寿タイトルで、昔僕もよく遊んでいた。
しかしここ数年はゲームセンターなんて当然行ってないわけだし、『英傑大戦』なんてリリース時に壊れていた陳宮を使ってはしゃいだ記憶しかない。なんならデータが保存されていたAimeカードも引っ越しの折に捨ててしまった。そんな僕に『英傑大戦』を遊べとはむちゃぶりもいいところなのだが、最高の環境ならやってみるかと思い立ち、その日のうちに青井さんのいるゲームセンターに向かった。
とんでもなく辺鄙な場所にあるゲームセンターへの行く途中で聞いたのは、「一発しか打てない代わりに連射できる鉄砲」と「鉄砲の弾数が増える号令」を組み合わせると、とんでもない速度で鉄砲の弾が連射できるため、相手が死ぬ、ということだった。それはなんでも、『るろうに剣心』とのコラボカードらしい。
このカードを見た第一の感想は「誰だよ」でしかないし、『るろうに剣心』は未読ながらもどちらかと言えば剣豪の話だった気がするのだが、このわけのわからん武田観柳なる奴が、ガトリング砲を用いて織田信長とか関羽とかリヴァイをボコボコにするらしいのだから、なるほど、それは最高の匂いがしてくる。
まずプレイを見せてもらった。相も変わらず青井さんは上手すぎる。上手すぎるという言葉で形容するにはもったいないほど上手い。大戦シリーズをプレイするためだけに存在するロボットのような操作で勝っていくので、正直僕のような一般的な人間基準だと何も伝わらないことも多いのだが、武田観柳のコンボをしているそのときだけは、本当に他のカードを一切操作せずに武田観柳を小刻みに上下運動させているから、思わず笑ってしまった。
これはひどい。何がひどいって、武田観柳が鉄砲を打つたびに「ガトガトガトガト~」と言うものだから、ゲームセンターの中で「ガトガト」の音頭がこだましている。なんというか、あらゆる観点からの見栄えが本当に最悪なのだ。それがすごくいいと思った。
自分もプレイしてみる。2年ぶり?の大戦シリーズに触れた時に気づいたのは、僕の体に思ったよりも"大戦筋"が残っているというか、想像の何倍もカードが動かせることだった。今よりももっと無職だったころ、狂ったようにゲームセンターに通った残滓が僕の中に残っていたのが嬉しかったが、ゲーム的には正直そんなことはどうでもよく、重要なのは武田観柳をいかに素早く上下運動させるかというところにかかっている。横に振ってみたり縦に振ってみたり、ストロークを大きくしたり小さくしたりと試しているうちに、なんとなくコツがわかってきた。当然のように対戦相手は皆落城していく。なるほど、これは面白いのかもしれない。
この歳になって気づいたことなのだが、ゲームセンターは娯楽としての費用対効果が高い。驚くほど値段が安い。例えば最近のパチンコ屋は一日遊びにいって平気で10万円が飛ぶ世の中だし、スマホを開いては課金力の高いゲームは無限に課金してしまいたくなるし、そうでなくたってコンビニやカフェで1000円が簡単に使えてしまう世の中で、英傑大戦は1000円あれば2時間近く遊べてしまう。1000円で2時間も堂々と居座っていい場所なんて、この世に今どれだけあるのだろう。なんというか、信じられないくらい良心的なビジネスだなと思ってしまったし、同時にだからこそゲームセンターは減っているのだろう、とも思った。
その日からはほぼ毎日欠かさずゲームセンターに行っている。近所のゲームセンターなんて検索すらしていなかったのだが、それを把握するだけでもなんだか楽しい。最寄りのゲームセンターはなんだか怪しげな佇まいで面白いし、ゲームセンター目的で新しい街に足を運ぶこともある。やっていることは足を運んでどんなゲームセンターかを見にいって、ただ英傑大戦を遊ぶだけなのだが、なんだかその行為自体がひどく懐かしいし、楽しさを感じる。
ガトリングが通用しなくなったらどうせまたすぐ行かなくなるんだろうとは思いつつも、今が楽しければそれで良い。僕は今日もまたガトリングを打ちに行くのだ。
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